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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

アートと技術、オーディオビジュアル、メディアをめぐる話題をピックアップ

「スター・ウォーズの空想科学」ワイアード編

2008年7月15日

「スター・ウォーズの空想科学」は、映画『スター・ウォーズ』を特集したドキュメンタリー3編のうちの1つで、昨晩WOWOWで放送されました。番組の一部はWOWOWのサイトで視聴できます。動画にある「ホログラム」「未来の航法」「人工知能」「超空間 ハイパースペース」のほか、イオン推進エンジン、ライトセーバーなどを科学的に検証していました。

サイエンスフィクションに登場した架空の技術が将来実現する可能性はあるのか、あるいは、作品発表後に現実の技術がどの程度近づいてきているか、といったテーマはいわば定番物で、テレビ番組や書籍、ニュースメディアなどで繰り返し扱われています。ワイアードでも過去に“スター・ウォーズ技術”を多数取り上げてきたので、今回はそうした記事を集めてみました。

まずホログラムでは、つい先月に『USCが開発した「レイア姫の3D映像技術」、動画で紹介』という記事がありました。高速回転する鏡に映像を投影するというアイディアですが、構造を考えると大型化して家庭用テレビにするのは難しそう(鏡が大きくなれば重量・遠心力・空気抵抗が増えてモーターの消費電力も増える、薄型化は不可能)。また、2003年の記事『空中に画像を投影するシステムの製品化を目指す2つの企業』では、霧(水蒸気の層)に映像を投射するというアプローチを紹介しています。

未来の航法については、いずれも理論段階にとどまっているものの、ワープ航法に関する記事が『『ワープドライブ:新たなアプローチ』を米物理学者が発表』と『光速での宇宙旅行が可能に?』、ブラックホールをワームホールの入り口として使えるのではないかという説が『ブラックホールを利用した宇宙旅行、空想から科学へ?』。

同シリーズの大人気キャラ、R2-D2とC-3POは人工知能を備えたロボット。人工知能の記事はけっこう多いのですが、主だったものでは『読解と推論ができる人工知能』や『ポーカーでハッタリをかける人工知能』など。ドキュメンタリーで紹介されたMITのロボット、『キスメット』を取り上げた記事もありました。その一方で、人工知能の大御所、マービン・ミンスキー氏による「1970年代以降、人工知能は脳死状態だ」との批判を紹介した記事も。スピルバーグ監督の映画『A.I.』の主人公、デイビッド君には当分会えないみたい。

これらに対し、映画に現実が追いついてきたのが、プロテーゼ[義肢・義手・義足などを取りつける術]の分野。『意思どおりに動くバイオニック・アーム:動画で紹介』や『精巧な義手『i-Limb』、動画で紹介』などを見ると、日常生活に不自由しないレベルまで義手が進化していることに驚嘆します。(おまけ:i-Limbを紹介した別の動画。たとえ義手のプロモーションであってもユーモアを盛り込むところが素晴らしい)

そのほか、兵士が昼夜を問わず数キロも離れた敵を確認でき、脳波も活用して危険を察知する、DARPAが開発中の通称「ルークの双眼鏡」や、ルーク・スカイウォーカーのライトセーバーの技を試すときに使われた浮かぶ球体に似て、宇宙船内を飛び回ってセンサーなどを使った情報収集を行うNASAが開発中のロボットイオン推進エンジンを使って飛行するNASAの宇宙探査機『ディープ・スペース1』ブラスター銃を思わせる「指向性エネルギー兵器」、地面から浮かんで移動する乗り物スピーダーに通じる反重力装置「リフター」などがありました。

こうしてみると、完全な空想の産物だけでなく、現実の科学とリンクした要素も多い点が、『スター・ウォーズ』シリーズの根強く幅広い人気の一因なのかもしれません。番組中で語られた言葉、「アーティストが表現し、科学者が実現させる」はけだし名言。

最後にファン向けの情報を添えておくと、7月19日(土)~21日(月・祝)には千葉・幕張メッセで、アジア・オセアニア地域で初となるルーカスフィルム社の公式イベント『スター・ウォーズ・セレブレーション』が開催されます。また、8月23日には、アニメ映画『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』が劇場公開される予定。

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プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

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