『アイス・エイジ3/ティラノのおとしもの』:3Dで楽しむ珍獣たちの大冒険
2009年7月 9日
(c)TWENTIETH CENTURY FOX
今から2万年前の氷河期を舞台に、地上生ナマケモノのシド、サーベルタイガーのディエゴ、マンモスのマニーという絶滅種の珍獣トリオが冒険を繰り広げるCGアニメシリーズの第3弾。前作『アイス・エイジ2』でめでたくメスのマンモスのエリーと結ばれたマニーは、もうすぐ生まれてくる赤ちゃんのことで頭が一杯。かまってもらえず寂しいシドは、氷の割れ目から落ちた穴で3つの卵を見つけ、生まれてきたティラノザウルスの赤ちゃんを育てようと奮闘する(オスのくせになぜか母親になろうとするボケっぷり)。ところがティラノ・ママが3匹の子を取り返しに来て、シドも一緒に連れ去ってしまう。仲間を助け出すために後を追ってディエゴ、マニーとエリーが地下の世界に降りていくと、そこには温暖で緑が生い茂る「恐竜ワールド」が広がっていた!
すでに絶滅して博物館の復元標本や図鑑などでしか見ることのできない珍しい古代の動物たちがたくさん登場する本シリーズ、動物好きの家族連れはもちろん、未確認動物ファンや変な容姿の生き物のマニアにも楽しめる要素がもともとあったが、今作ではさらに大小さまざまな恐竜たちも大挙して出現するので、見どころ倍増となった。若干デフォルメされているものの実物にかなり忠実なキャラのデザインも見事で、動物の動きもリアルな再現とコミカルな誇張を巧みに使い分けている。特に冒頭のディエゴがカモシカ似の草食動物を追いかけて疾走するシーンでは、カーブした際に遠心力で2匹の体躯が外側にドリフトする描写がまるで実写の動物ドキュメンタリーを見ているかのような迫力だ。アニメ製作は、同シリーズの前2作や『ロボッツ』などを手がけた米Blue Sky Studios社。
隔絶された環境で恐竜たちが生き残っているという設定は、ジュール・ヴェルヌの『地底旅行』やコナン・ドイルの『失われた世界』からの拝借で、地下に降りてからの展開では、実のところ昨年公開された3D映画『センター・オブ・ジ・アース』と似たような場面も散見される。ただし、あちらは主人公たちの目的が探検だったこともあり、遊園地のアトラクション的に観客を驚かせる3Dの映像表現が多用されていた。それに対し、本作は仲間の救出というドラマがメインになっていることから、過剰な飛び出し効果は控えて、自然な奥行き感を3Dで表現することで観客を物語の世界に没入させるような演出になっている。
3D映像ではほかに、動物たちの体毛の質感、恐竜たちのスケール感(すぐそばをノシノシと歩み去るティラノ・ママを地上の視点から見上げたショットが超迫力!)、花びらや雪が空を舞うシーンなどが特に印象的だった。
主役トリオのほかに忘れてはならないのが、狂言回しの人気キャラ、スクラットだ。これは本シリーズでは例外的に架空の動物で、英語では"saber-toothed squirrel"という種だとされている(和名だと「サーベルリス」?)。無声映画のスラップスティック・コメディのような愉快なアクションで第1作からずっとドングリを追い求め、場面転換のシークエンスでドタバタを披露しつつ、主役トリオによる本筋ともさりげなくからむ役どころだが、今作ではセクシーなメスのスクラッティが現れ急展開。2匹は当初ドングリを奪い合うライバルだったが、やがて恋仲になる。ここで放置されたドングリがひとときの主役になり、BGMにギルバート・オサリバンの『アローン・アゲイン』が流れるのが笑えた。動物たちを擬人化している本シリーズだが、まさか忘れられたドングリの孤独感まで描くとは(笑)。
キュートな動物たち、友情と家族愛、スリリングな冒険と愉快なドタバタという、ファミリー向け映画に求められる要素がぎゅっと詰まった本作、可能であれば3Dで鑑賞することをおすすめしたい。過去2作を観て予習しておくと、なぜ肉食動物のサーベルタイガーがマンモスとナマケモノと仲間になったのかとか、メスのマンモスとフクロネズミ2匹がなぜきょうだいみたいに仲がいいのかなど、主要キャラたちの来歴が分かって一層楽しめるだろう。
『アイス・エイジ3/ティラノのおとしもの』
原題:Ice Age: Dawn of the Dinosaurs
監督:カルロス・サルダーニャ
共同監督:マイケル・サーマイヤー
製作総指揮:クリス・ウェッジ
吹き替えキャスト:太田光(爆笑問題)、竹中直人、山寺宏一
配給:20世紀フォックス映画
7月25日(土)より全国ロードショー
公式サイト:www.iceage3.jp
(c)TWENTIETH CENTURY FOX
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