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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

アートと技術、オーディオビジュアル、メディアをめぐる話題をピックアップ

『ハリー・ポッターと謎のプリンス』と、「ハリポタ技術」3選

2009年7月 6日

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【STORY】闇の帝王ヴォルデモートがマグル(人間)、魔法使い両方の世界における支配力を強めようとし、ホグワーツはもはやかつてのような安全な場所ではなくなってしまう。ハリー(ダニエル・ラドクリフ)は学校の中にも危険が潜んでいるのではないかと疑うが、最終決戦が迫っていることを知っているダンブルドア校長(マイケル・ガンボン)は、ハリーに戦いの準備をさせることに力を入れる。二人はヴォルデモートの防御を解く手がかりを見つけようと、旧友であり元同僚でもあるホラス・スラグホーン(ジム・ブロードベント)を魔法薬学教授として学校に迎える。一方、ホグワーツにはロマンスが訪れ、学校全体に恋愛ムードに浮き立っているが、悲劇の運命は近づいていた・・・。衝撃的な別れと挫折。16歳のハリーに待ち受ける過酷な運命とは・・・。(プレス資料より)

J. K. ローリングのファンタジー小説が原作の映画「ハリー・ポッター」シリーズ第6作。オープニングのシークエンスでは、闇の帝王の復活に勢いづく「死喰い人」たち(人間には見えない)がロンドン市街を飛び回り、街並みを破壊し、テムズ川にかかるミレニアム橋を揺らし、ついには崩落させてしまう。ここの視覚効果のクオリティーがとても高く、もともと華奢なデザインのミレニアム橋がぐらぐらと大きく揺れてゆがむ様子は、まるで現実の大惨事を目撃しているかのようなリアルさだ。

このスペクタクルを含む冒頭の約12分間は、IMAXデジタルシアターでは3D方式で上映される(試写では2Dで鑑賞)。IMAX-3D版は一般で2200円と少々割高だが、先月オープンした109シネマズの3館に行ける方なら、最新の視覚効果を駆使した3D映像を体験するのもいいだろう(109シネマズの情報)。

今作の特徴のひとつは、上のあらすじにもあるようにホグワーツ魔法魔術学校の生徒たちが繰り広げる恋のドタバタ、ラブコメの要素が多くを占めることだ。ハリーに片思いする女の子が惚れ薬入りのチョコレートを贈り、それをロン(ルパート・グリント)が知らずに食べてしまい……なんてエピソードもある。

新顔の俳優で注目株は、若き日のヴォルデモート、トム・リドルの11歳の時を演じるヒーロー・ファインズ・ティフィン(9歳)。この年齢で陰影ある表情と暗い雰囲気を巧みに演じていて、子役が大勢出演している中でも特に印象に残った。

上映時間は2時間34分で、上記のような生徒たちの恋のさや当てに入り込めないと少々長く感じられるが、原作小説のファンならエピソードが多く盛り込まれているほど嬉しいもの。目の覚めるような魔法シーンの視覚効果も多用されていることだし、ファンタジー・アドベンチャー映画好きなら外せない作品だろう。ハリポタはよく知らないけど子供にせがまれて、というお父さんお母さんは、時間があれば過去のシリーズ作をDVDなどで観て大筋を把握しておくのがベターだ。

■「ハリー・ポッター」の魔法、現実の技術で可能に?

J. K. ローリングが作品の中で描く魔法のいくつかは、近い将来の技術で似たようなものが実現するのではないかと考えられている。ワイアードの記事でも過去に何度か取り上げているので、3つの「ハリポタ技術」を紹介する。

1. 透明マント

これがおそらく最も有名なハリポタ技術だろう。現実には、光を特殊なかたちで屈折させる特徴を持つ素材「メタマテリアル」を使って、こうした透明化が可能になると考えられ、開発が進められている。

「光学迷彩」実現も近い? 赤外線を屈折させるメタマテリアル(2007年6月)

「不可視化技術」の追求:数理シミュレーションを動画で紹介(2007年12月)

「光を制御する」メタマテリアル:実用化への道を探る(2007年12月)

2. 「日刊予言者新聞」の動く写真

映画の中で、新聞や写真立ての写真に写っている人物が動いたり話したりする。写真立てについては、動画再生に対応するデジタルフォトフレームがソニーやコダックなどから発売されているので、もはや未来技術ではない。また、新聞や雑誌などの紙面に貼りつけられるような薄く柔軟なディスプレーの開発も進んでいる。

電子インク採用で、動画表示も:『Esquire』誌特別号を動画で紹介(2008年9月)

篠田プラズマ「曲面表示可能で裏からも見えるディスプレー」(動画)(2008年12月)

以下は、"The REAL Daily Prophet?"(現実の「日刊予言者新聞」?)と題された動画。

3. 姿をくらますキャビネット

ホグワーツと闇の魔術専門店「ボージン・アンド・バークス」を結ぶ、一種の転送装置。テレポーテーションは『スター・トレック』や『ザ・フライ』にも登場したSF技術の定番だが、現実の科学では「量子テレポーテーション」の研究が行われている。

テレポーテーションの実用化に向けた実験に成功(2001年10月)

量子テレポーテーション実験、原子を使い成功(2004年6月)


[公開情報]
『ハリー・ポッターと謎のプリンス』
原題:Harry Potter and the Half-Blood Prince
監督:デヴィッド・イェーツ
出演:ダニエル・ラドクリフ、ルパート・グリント、エマ・ワトソンほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
7月15日(水)丸の内ピカデリーほか日米同時公開
公式サイト:http://www.half-bloodprince.jp

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プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

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