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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

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インドの音楽ビデオで空耳字幕--“笑いの鉱脈”を掘り当てた米国青年

2009年4月19日

ワイアードのブログ『Underwire』で初めて知った、Mike Sutton氏(オハイオ州在住の20代男性、YouTubeでのユーザー名は「Buffalax」)による一連の投稿動画。簡単に言えば『タモリ倶楽部』の「空耳アワー」の英語版で、英語以外の言語で歌われている音楽のビデオに、「英語ならこう聞こえる」という歌詞を創作し、それを字幕で追加している。ただし、空耳アワーではせいぜい詞の一行か二行、時間にしてほんの数秒を日本語で「空耳化」しているのに対し、Buffalaxの作品では丸ごと一曲にオリジナル詞を当てている。

上の動画は、インド人による『スリラー』(マイケル・ジャクソン)へのオマージュだそうで、ヒンディー語で歌われている。元々ダンスの振り付けも歌い回しもコミカルでユーモラスな歌に、"Girly man!"(女っぽい男!)、"Nippley man i met, he ate my motorboat!"(俺が会ったチクビな男が、モーターボートを食った!)、"I'll eat wasabe on my dude!"(俺のダチに付いたワサビ食うぜ!)といったシュールでナンセンスな詞が乗ることで、笑いの相乗効果が生まれているように思う。この作品はこれまでに540万回以上再生されている。

Buffalaxは2006年10月にYouTubeのチャンネルを開設してから、現在までに計22本の動画を投稿していて、ドイツ語や中国語、さらには日本語のもの(『聖闘士星矢』のアニソン『ペガサス幻想』になぜか『トランスフォーマー』のアニメが付いたこれ)もある。ただし、いずれも元の映像や歌におかしさがあるわけではないので、空耳字幕を当てても笑いの点でいまいち弱い。

実際、Buffalaxのチャンネル内で最も再生回数が多いのは、やはりインドの音楽ビデオを元ネタにした以下の『Crazy Indian Video... Buffalaxed!』で、2007年8月に投稿されてからなんと1200万回以上! 歌詞を適当に抜き出して訳で紹介するとこんな感じだ。「君は今日ハイだった? 僕は尼たちが同性愛だとわかった! 弟が僕に叫んだ…エドの中で君を愛してる!」「私のサディスト! みな生きたまま焼いて調理した!」「僕は君をなめる…ベリンダ…忍者が動きをみせた」「ドナに伝えて…襟無し…私は体が好きなことをするわ!」

なお、「Buffalaxed」という単語は、Buffalaxが空耳字幕を当てた自作を指す造語として使い始めたが、これらを見て感銘を受けたYouTubeユーザーたちが、自分なりの「Buffalaxed動画」を投稿。現在YouTube内でBuffalaxで検索すると472本の動画がヒットし、Buffalax以外のユーザーによる"Buffalaxed!"あるいは"inspired by Buffalax"と題された作品も相当な再生回数を稼いでいることがわかる(この流れは、映画『僕らのミライへ逆回転』から生まれた「sweded」映画リメイクのブームにちょっと似ている)。

ただこれらの中でも、「笑える度」はやっぱりインドの音楽ビデオを元ネタにした作品が突出しているように思う。下の動画では、サビの"sucking the head"という空耳詞を当てた部分が振り付けと妙にマッチして、微妙にエッチな雰囲気を醸し出しているあたりが見どころ(ParavozNumberTwoというユーザーの投稿で、再生回数4万回弱)。

ボリウッド映画の特色でもある大人数のバックダンサーを伴う踊りの振り付けと、ヒンディー語の響きや歌い回し、それぞれに備わっているユーモラスな味わいに、意味が無さそうで有りそうなシュールな空耳詞を添えたことで、Buffalaxは新たな笑いを創造した――と評したらほめすぎだろうか。

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プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

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