手作り感を楽しむ映画リメイク「sweding」がブーム
2008年9月 5日
事の発端は、今年2月に米国で公開されたミシェル・ゴンドリー監督の映画『Be Kind Rewind』(邦題『僕らのミライへ逆回転』、日本公開は10月11日)。今どきVHSビデオしか置いていないレンタルビデオ店の店番を任された幼なじみの2人(ジャック・ブラックとモス・デフ)が、あるトラブルですべてのビデオの中身が消去されるというピンチを乗り切るため、自分たちが出演・撮影して衣装や小道具も段ボールやアルミホイルなど身近なもので間に合わせた“超低予算リメイク”を製作。これが意外にも客に受けて、2人は次々に旧作映画のリメイクを撮影、店も行列ができるほど繁盛して……というお話。
トラブルメーカーでお調子者という役どころのジャック・ブラックは、「このタイトルを借りたい」と注文を受けてから実際に貸し出せるまでに時間がかかる(なにしろオンデマンドで製作するので)ことの言い訳として、「スウェーデンから仕入れているから」とうそぶきます。そして、自分たちが作ったビデオのことを「スウェーデン製の特別版」といった意味合いで「sweded」と呼びます。本来「スウェーデン人」を意味する名詞「Swede」が、この映画では造語の動詞「swede」(直訳するなら「スウェーデンする」?)として使われていて、その派生形として過去分詞がsweded(スウェーデンされた)、動名詞が「sweding」(スウェーデンすること)になるわけです。
『Be Kind Rewind』の公式サイトに「swedingの手引き書」を掲載したり(ここでは「swedingとは、手近に利用できるものを使ってすべて手作りでリメイクすること」と定義)、ゴンドリー監督が自ら熱演した『Be Kind Rewind』予告編のsweded版で手本を示したことも奏功してか、この半年ほどで映画好きのYouTubeユーザーたちが次々に「sweded作品」をアップする状況に。現在YouTubeでswededを検索した結果が3860件で(もちろん重複や無関係なものも含まれているため、実際の作品の数はこれより少ないけれど)、出来のいいものは数十万回も再生されるほどの人気ジャンルに成長しています。
以下におすすめの3作品を貼りつけておきます。
1. Star Wars (Sweded): A Cardboard Hope
予想通りというか、やはり一番人気は『スター・ウォーズ』ネタで、再生回数79万回以上はダントツの首位。もともと『スター・ウォーズ』ファンによるパロディー映画(日本語版記事)の文化もあったことだし、段ボールで作ったXウイング戦闘機などのチープな味わいもグッドで、人気ぶりも納得といったところ。
2. The Shining - Sweded
スティーヴン・キング原作、スタンリー・キューブリック監督の『シャイニング』のリメイク。主人公の小説家が見下ろす庭園の迷路のミニチュアが実際の迷路に切り替わる有名なシーンなどもしっかり押さえているあたりはさすが。元の映画の舞台「Overlook Hotel」がリメイクで「Overlook B+B」に変更されている点も芸が細かい。あと、双子の姉妹の幽霊が写真だけの登場になっているのも笑える。
3. Terminator 2 Sweded: Low Budgment Day (6-minute)
ジェームズ・キャメロン監督『ターミネーター2』のリメイク。サラ・コナー役が毛深いおっさん(笑)。新型ターミネーターのT-1000型が被弾したときの傷をアルミホイルで再現しているあたりがイイ味。
高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」
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