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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

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カナダのバンドLes Doux Cactusの詞を支える日本人女性

2008年8月24日

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Photo: Les Doux Cactus and Kanae Nobori

1ヵ月ほど前にインタビュー記事で紹介したLes Doux Cactus(レ・ドゥ・カクタス)。7月には来日していた彼らですが、カナダに戻ってからも野外コンサートに出たりテレビの取材を受けたりと好調に活動しています。

8月8日には日加修好80周年の文化関連行事の一環として、 モントリオール市内の街頭に設営されたステージで演奏。和太鼓とのセッションなどもあって大いに盛り上がったとか(参考)。

また、フランス語国際放送局のTV5MONDEによる取材は、8月11日にカナダで放送され、ネットにもアップされています。

動画ではバンドの演奏やプロモーションビデオの日本ロケの模様に加え、1人の日本人女性がインタビューに応えています。彼女は登佳苗(のぼり かなえ)さんといって、Les Doux Cactusの日本語詞に協力している音楽家。前回の記事で触れたように、ボーカルのVincent Hamelは日本語を話せないので、彼が書いた詞を登さんがメロディに合うよう和訳しています。その作業に興味を持ち、登さんにメールでコンタクトを取りました(上に掲載した写真は登さんが提供)。

登さんは奈良県出身のクラシックピアニストで、大阪音楽大学卒業後2004年にカナダに渡りました。2005年カナダ・モントリオール大学院よりピアノ演奏における修士号を受けて、現在は同大学院DESS(専門研究ディプロマ)課程に在籍中。室内楽や伴奏などのアンサンブルを得意とし、関西、米国、カナダにおいてさまざまな演奏会に出演、ジョイントコンサートのプロデュースも行なっているそうです。

Les Doux Cactusの楽曲の訳詞作業は初め、彼女の音楽仲間である富永晶子さんが担当していたものの、仕事による転居により、登さんが引き継ぐことになったのだとか。一時は2人で詞を吟味していたそうで、そんな曲の1つ『愛は人生だ』(訳詞のクレジットは富永さん)が「音楽と詞が一番しっくりきている」と感じているとのこと。

具体的な作業の流れについて、登さんは以下のように説明してくれました。

訳の作業に入る段階で、歌詞とメロディとハーモニーはほぼ出来上がっていると思います。おそらくVincentはまずフランス語で詞を考え、私のために英語に一時的に直していますので、彼の英詞を単純に訳すというよりは、曲調、メロディをよく聞いて、意図を確認した後、言葉を捜します。字数については、実際に彼に歌ってもらい音楽の流れに乗るように。

難しいのは、日本の人が聞いてもおかしくないような日本語にすることです。彼の原詞は非常にシンプルで、彼の第一言語であるフランス語特有の言い回しや表現があり、直訳すると一般的な日本人の使う表現ではないことが少なくない。また3ヵ国語をまたぐ故に、同じ言葉でも各言語がもつ意味やニュアンスが違ってくるので、日本人が聞いてもおかしくなく、彼ららしさも出る言葉をあてることを大事にしています。

Les Doux Cactusの曲を聴いて感じるのは、フランス語訛りで柔らかくふくよかな日本語がVincentのボーカルの味になっているということで、そうした持ち味を活かすような音韻の言葉でつづられた詞は、やはり「よい耳」を持った登さんと前任者の富永さんによる尽力の賜物でしょう。

登さん自身の今後の活動としては、10月に奈良でいくつかコンサートに出演する予定で、10月13日には自身のプロデュースによる『秋の休日、音楽会にでかけよう。動物の謝肉祭!音で描く生き物たち』という無料コンサートを桜井市立図書館で行うとか。

Les Doux Cactusの楽曲の訳詞と、登さん自身の音楽活動、それぞれに今後一層の活躍を期待します。

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プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

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