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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

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日本語で歌うカナダ人バンドLes Doux Cactus:インタビュー

2008年7月25日

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Photo: Les Doux Cactus

2006年に3人のミュージシャンによって結成されたLes Doux Cactusは、“日本語で歌う”という大望の賭けに出た。

――公式サイトより

過去にも日本で人気の高い欧米のバンドが日本語バージョンを1曲だけ録音した例はありますが(クイーンとかポリスとかベン・フォールズ・ファイヴとか)、ケベック州モントリオール出身のバンドが最初から全曲日本語で、というのは確かに“賭け”かも。とはいえ、彼らのギャンブルは間違っていなかったようで、2007年からカナダ国内の新聞やラジオで、今年1月にはカナダ国営放送(CBC)のニュース番組でも取り上げられます。

そして遂にこの夏、Les Doux Cactus(レ・ドゥ・カクタス、「甘いサボテン」の意)はワールドワイドなバンドへの第一歩を踏み出したと言っていいでしょう。彼らの楽曲『UFO』が、世界に先駆けて日本で7月19日に封切られたハリウッド映画『スターシップ・トゥルーパーズ3 マローダー』(ポール・バーホーベン製作総指揮、エドワード・ニューマイヤー監督)のサウンドトラックに使われているのです。

ではこの辺で、YouTubeにアップされた『UFO』の動画を見てみましょうか。

カントリーミュージックの曲調と、ほのぼのとした日本語の響きの組み合わせがいい感じ。もっとも、ボーカルのVincent Hamelは日本語を話せるわけではなく、英語で書いた詞を知り合いの日本人ミュージシャンに和訳してもらい、それを歌っているのだとか。

実はLes Doux Cactusは今月、『スターシップ・トゥルーパーズ3』のプロモーションで来日していたのですが、残念ながら僕がそれを知ったのはつい最近のこと。それでも、物は試しでVincentにインタビューをメールで申し込んだら、快く応じてくれました。


――今月東京に来ていたそうですが、滞在中の印象はいかがでしたか? どこかで演奏もしたのでしょうか?

映画のプロモーションと、僕たちの歌を日本人の観客の前で試すことを兼ねて、東京で2週間過ごしたんだ。滞在は最高だったよ。大勢の日本人アーティストと会って、日本とカナダのアーティストの暮らしぶりについて情報交換したり。

1つの都市でこれほど多くの人を見るのは驚きだった。知ってるかな、カナダの人口はだいたい3000万人なんだ。東京と近県を合わせた人口と同じくらいだよね……。

東京はアクティビティーがたくさんある街だね。ライブ、バー、あれやこれや何でも……。でも静けさが欲しいときは、公園を探してリラックスして、どこかほかの街にいる気分になる必要があるな。

公共の交通機関を利用したとき、僕たちは何度か迷ったんだ。でも日本の人たちはすごく親切で、正しい行き方を教えてくれた。僕たちが「スミマセン、ニッポリ、ドコデスカ?」って聞くだけで、本当にいろいろ助けてくれたんだ!! 世界の反対側まで来たっていうのに、故郷にいるような気分だったよ!

演奏は数ヵ所でやったけど、観客の反応はとても良かった。カナダでは観客は詞を理解できないから、曲にだけ反応している。日本だと観客は詞を理解して、詞にも曲にも反応するから、僕たちは演奏を2倍楽しめたよ。

――『UFO』がどんないきさつで映画のサントラになったのか教えてください。

数ヵ月前、僕の所にハリウッドの音楽プロデューサーから電話がかかってきたんだ。米国のソニー・ピクチャーズの『スターシップ・トゥルーパーズ3』に、君たちの『UFO』を使ってもいいかな、ってね。もちろん、僕たちはイエスって答えたよ。

その後で、どうして僕たちの曲を選んだのかってプロデューサーに聞いてみた。君たちのバンドがすごくクールなプロジェクトだから、というのが彼の答えだった。この映画の関係者たちは、YouTubeやiTunesで曲を探しているうち、YouTubeで僕たちの動画を見つけたらしい。そしたら、ニューマイヤー監督が曲をすごく気に入って、『UFO』を映画に使うことに決めたんだって。

考えてもみてよ。カナダ人バンドが日本語で歌う曲が、ハリウッド映画で流れるんだ。これってクレイジーな話だよね!! インターネットが普及した今、思いも寄らぬ誰かの目にとまるということがあるんだな……。

――自分では話すことのできない日本語で歌うのは、難しくありませんか?

僕は過去にクラシックを学んでいて、ドイツ語、ラテン語、イタリア語、フランス語で歌った経験もあるよ。僕たちは日本の文化に興味があったので、Les Doux Cactusのプロジェクトを始めたときに、日本語で歌おうと決めたんだ。

日本と西洋には言語の違いがあるせいで、双方のアーティストの交流はそれほど活発じゃない。Les Doux Cactusのコンセプトは、僕たちの日本語の歌で日本のコミュニティーと交流する、というものなんだ。日本語で歌うのはすごくハッピーだよ。そのおかげで、日本でいい友達にたくさん出会えたからね。

英語やフランス語で歌うこともできるけど、そのプロジェクトはむしろ、英語圏かフランス語圏の国(僕たちがすでに知っている文化と国々)に向けたものになるだろうな。Les Doux Cactusのプロジェクトでは、フロンティア(境界)を突破したい。僕たちは、異文化に対してオープンな新世代のアーティストになりたいんだ……。

――日本語で好きな単語やフレーズはありますか?

スミマセン、ゴ(5)ビール、クダサイ!!
スゴイ、ヨカッタネ……。

――カナダでのライブ活動はどんな感じですか? 日本語以外でも歌うのでしょうか?

カナダでも日本語だけで歌っているよ。それが僕たちのトレードマークだから。僕にとっては(日本語が話せないので)、曲についてより深く考える手段、日本語詞での歌唱をむしろ別の楽器のように使う手段になっている。単純に言葉を歌うという自由をもたらしてくれたんだ。

バンドは現在8人で、トランペット、トロンボーン、サックス2本のブラスセクションと、エレキギター2本、ウッドベース、ドラムという構成。僕たちのライブはすごくエネルギッシュでクレイジーなんだ。

カナダの観客は、詞を理解できなくても、音楽の雰囲気に反応しているよ。ステージパフォーマンスでうまく観客をのせるのが僕の仕事ってわけ。

――今後の予定を教えてください。日本を再訪する計画はありますか?

来春(2009年春)にまた日本に戻るよ。ライブを何本かやって、おいしいビールとSake(日本酒)を飲むつもり。

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プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

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