電子豆本計画 feat. iPod nano
2010年11月11日
(これまでの 大谷和利の「General Gadgets」はこちら)
めくるめく(?)NanoBookの世界
紙の本と比較した場合、電子書籍にはメリットもあればデメリットもある。
メリットとしては、ネットにアクセスできればいつでもどこでも入手できる即時性や、多数のコンテンツを持ち歩いても嵩張らないこと、あるいは、インタラクティビティを付加できる点などが挙げられよう。
逆にデメリットとしては、装幀の手触りが失われたり、古本として売ることができない点、そしてデバイスのバッテリーが切れたら読むことができないことなどがある。
しかし、先日、もう1つの大きな弱点に気がついた。それは、紙の本では、様々な判型や形(円形の本まである)が可能であり、実際にも存在するのに対し、電子書籍はコンテンツが雑誌であれ、ハードカバーであれ、文庫本であれ、KindleやiPhone、iPad上では、すべて同じページサイズに落とし込まれてしまうということだ。
特に危惧されるのが、豆本のような趣味性の高い書籍である。確かに、そういう本はそれこそ装幀を含めて紙で楽しめば良いという意見もあるだろうが、せっかくなので電子豆本とでも呼ぶべきものは作れないかと考えてみた。
そこで思いついたのが、小さいながらもタッチパネルを搭載した最新のiPod nanoだ。豆本のことを英語でmini bookと呼んだりするので、この電子豆本はNanoBookと名付けてみた。
要は、画面の小ささを逆手にとり、書籍の各ページが豆本的なサイズで表示されるように調整したイメージデータを、iPod nanoの写真アルバム機能を使って登録するというアイデアである。
ついでに、その小さな画面上で、裸眼で読める最小のフォントサイズを見極める豆本データも作ってみた。
たとえば、アメリカでは手のひらサイズの豆本を小学校の授業の副教材的に利用するところもあるようだ。そのため、インターネット上に、教育用の印刷素材として様々な無償の豆本データがアップされている。
その中から、まずアルファベットの書き順を記したものをNanoBook化してみた。図は、iPod nanoのスクリーンをそのまま撮影しているので、細い線画で描かれたイラストが見づらいが、実際の画面上ではしっかりした線描でくっきりと見える。
カラーのイラストだと写真でもはっきりわかると思うが、アルファベットの各文字から始まる事物を示したピクチャーブックなども、豆本のコンテンツとしてはポピュラーであり、NanoBookに向いている。
さらに、大人向けのコンテンツとして短編小説をNanoBook化してみた。オリジナルも、紙の豆本にすることを前提に無償公開されているfeatherproof Booksからダウンロードしたものだが、表紙や作者紹介などのページもある本格的なもので、本文も細かい字でびっしりと書かれている。
当初は、さすがにここまで細かいと画面上で読むのは難しいのではと思ったが、拡大無しでも目を近づければちゃんと読むことができる。もちろん、ダブルタップで拡大すれば、一層読みやすい。
iPod nanoの写真アルバムは、左方向へのスワイプでページを順送りするようになっている。横書きのNanoBookであれば、それで良いのだが、縦書きの場合には右方向へのスワイプで読み進めたい。その場合には、元データの並びを最後のページ→最初のページとなるように順序を入れ替えてシンクロすれば良い。
そうしておいて、iPod nano上では最後のページを先に呼び出し、右方向にスワイプすれば、実際にはアルバムの先頭に向かって逆にページめくりをしていることになるが、見かけ上は縦書きの本を読んでる感覚になる。
そして、新型iPod nanoからは動画機能が割愛されて少し残念に思っていたのだが、紙の本でもアニメーションの主要シーンを使って絵本的なものが作られるように、NanoBookでも動画から抜き出したコマを並べるだけでも結構面白いのではと考え、実行してみた。
元データとして使ったのは、ノキアがバイラル広告に利用している、身長9mmの女の子がミクロの世界で繰り広げる冒険を描いたDot.というコマ撮りアニメーションだ。
撮影時のマクロレンズの特性から顕微鏡で覗いたように見える絵柄と、iPod nanoの極小画面のマッチングがなかなか良い感じで、これはこれで電子豆本として楽しめる。
さらに、iPod nanoのスライドショーは、最小2秒間隔なのだが、トランジションをディゾルブにセットして再生したところ、スローなアニメーションのような面白い効果も得られた。
紙の豆本には、わざわざ虫眼鏡付きのセットで販売されている製品もあるほどで、それで本を読むというよりも、そういうものを愛でるという意味合いが大きい。NanoBookも半ばそのように考えてもらえると、面白さがわかるのではないかと思う。
大谷和利の「General Gadgets」
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