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大谷和利の「General Gadgets」

古今東西、デジ/アナを問わず、優れたコンセプトを持つ製品を独自の視点で紹介する。

iPad 2の撮影方向を変える

2011年5月17日

(これまでの 大谷和利の「General Gadgets」はこちら

5月16日より、お茶の水のA&AカフェSweetJamにて写真の個展「Wonder-Full World」を開催中。作品はエプソンのR-D1で撮影したモノクロフォトを中心に16点を展示。開場時間は平日の11:30〜17:30。残念ながら土・日・祝日は定休日だが、美味しいコーヒーも飲めるお店なので、お近くに来られた際には、ぜひお立ち寄りを。

帯写真

 

新たなiPadアプリのためのアクセサリ試作

実は現在、青山学院大学の苅宿俊文教授の研究室と、ソフトハウスのドリームガーデンソフトウェアの中野洋一さんと共に、iOSデバイス向けの教育アプリを開発している。

苅宿教授は、子供たちが身の回りの事象を自ら写真や映像として記録し、それを編集・再構成することで、自分を取り巻く環境を多元的に捉えたり、起こった出来事を咀嚼して他者に伝えることができるようになると考えておられ、それをサポートするアプリ群を独自に揃えようとされている。

今までに作ったのは、動画の逆転再生を行うものや、コマ撮り撮影の結果をアニメーション表示するもの、左右対称のミラーイメージが撮影できるもの、多重露光の写真が撮影可能なものなど。機能面では既存アプリでも実現されているが、苅宿教授の考えに基づき、すべてのアプリが単機能で、写真も動画も縦横の区別のない正方形のフォーマットで統一されている。そして、iPhoneやiPod touchで撮影されたそれらのデータをiPadに無線で転送し、3×3マスのグリッド内に配置することで、作者である子供がストーリーを語れるような環境ができあがった。

次の段階として計画中なのが、ビデオ撮影をしながらメモが取れるようなiPad 2用アプリである。この原型としては、ボイスレコーディングを行いつつメモが取れるAudioNoteのような製品がある。

iOSデバイス用のAudioNote

筆者が取材などでよく利用するiOSデバイス用のAudioNote。ボイスレコーディングしながらメモを取ることができ、テキストをインデックスとして利用し、録音された音声の目的箇所へジャンプが可能だ。

これのビデオ版のようなアプリを開発したいのだが、音の場合にはマイクが音源の方向を向いていなくとも収録が可能であるのに対し、映像となるとレンズの方向が問題になる。つまり、iPad 2を立てた状態で手に持って利用するならば、アウトカメラを被写体に向ければ済むが、メモをとるために水平もしくはややティルトした状態で机の上などで利用する場合には、レンズがあらぬ方向を向いてしまうというわけだ。

そこでアプリ開発に先立ち、iPad 2を水平に置いたまま正面の被写体が撮影できるようなアクセサリを作ってみることにした。材料は100円ショップで購入したミラーと、それをiPad 2に安定的に固定し、しかも簡単に取り外せるようにするための粘着シートだ。

メモを取る際にキーボードを使うことを考えると、実際にはiPad 2を横向きで使うほうがキーのエリアが広がって打ちやすい。しかし、それではインカメラの位置がiPad 2の左右どちらかの辺の中央になり、光軸を変える仕掛けも複雑にならざるを得ない。そこで今回は縦方向での利用を念頭に置き、できるだけ単純な仕組みで実現することを優先している。

メイクアップミラーと「レアタック」

工作のために用意した材料は、100円ショップで購入した折りたたみ式のメイクアップミラーと、洗って何度でも使える粘着シート「レアタック」。

メイクアップミラーは、カバー部がスタンドになるが、本来の使い方をすると鏡面は斜め上を向いてしまう。そこでヒンジのところに接着剤を塗って乾かすことで抵抗を増し、斜め下を向いた状態で留めたり、角度の微調整が効くようにした。

メイクアップミラー

メイクアップミラーは、通常このようにカバーをスタンド代わりにして利用するが...

このような鏡の角度で使えるように細工

...今回は、iPad 2のカメラの撮影方向を90度変更するために、このような鏡の角度で使えるように細工した。

工作自体は、カバー部に穴を空け、レンズがそこから覗くようにしてミラー全体を固定できるようにするというもの。そのため、位置決めや加工がしやすいように半透明の樹脂製のカバーが付いた製品を選択している。

レンズ位置に印をつける

まず、iPad 2のカメラの上にメイクアップミラーのカバー部を載せ、レンズ位置に印をつける。ここにドリルで穴を空け、拡張するわけだ。

拡張のために利用したヤスリと加工後の穴

拡張のために利用したヤスリと、加工後の穴。このくらい大きければあまり気にすることもないが、念のため、こちらの面に向かって広がるすり鉢状の断面に仕上げて、視野のケラレが発生しにくいようにした。

この穴を通してカメラで捉える

この穴を通して鏡面に反射したイメージをカメラで捉えることで、レンズの光軸と直角方向の被写体を撮影することができる。

実際に水平状態のipad 2にミラーを付けてテストしてみると、うまい具合に上下左右が反転し、被写体そのままのイメージを撮影することができた。インカメラの解像度はアウトカメラに比べると低く、また、ミラーのカバー部分が撮影範囲の下のほうに写り込んでいるが、映像メモ的な用途にはこれでも十分と思える。加えて、携帯時の鏡面の保護にさほど神経質にならなくても良ければ、レアタックの貼り付け部分だけを残してカバーをカットすることで、写り込みのない撮影も可能だ。

今後は、このプロトタイプを元に改良を加え、アプリと連携しての利用が快適に行えるようにしていく予定である。

屋外でのテスト撮影風景

屋外でのテスト撮影風景。iPad 2を平らに置いたままインカメラを使って撮影しようとすれば、空しか写らない。

カメラ部分に装着

先ほど加工したメイクアップミラーを、レアタックを使ってカメラ部分に装着することで、水平方向のイメージがレンズに導かれるようになる。

前方の被写体を撮影

その結果、このように前方の被写体を撮影することが可能となった。

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プロフィール

テクノロジーライター、原宿 AssistOnアドバイザー、自称路上写真家。デザイン、電子機器、自転車、写真分野などの執筆活動のほか、商品企画のコンサルティングを行う。近著に「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、「43のキーワードで読み解く ジョブズ流仕事術:意外とマネできる!ビジネス極意」、「iPadがつくる未来」(以上、アスキー新書)。「Macintosh名機図鑑」(えい出版社)、「iPhoneカメラライフ」(BNN新社)、「iPhoneカメラ200%活用術」(えい出版社ムック)、「iPhone×Movieスタイル」(寄稿:技術評論社)。

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