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大谷和利の「General Gadgets」

古今東西、デジ/アナを問わず、優れたコンセプトを持つ製品を独自の視点で紹介する。

買えば500〜2000円の導電ペンを60円で自作する

2010年9月 6日

(これまでの 大谷和利の「General Gadgets」はこちら

帯写真

 

とりあえず使うには十分なレベル

スティーブ・ジョブズはスタイラスを嫌い、iPhoneやiPadを指だけで操作できるようにした。したがって、それらのデバイスは、指でのポインティングや操作が問題なく行えるようにチューニングされているし、自分でもそれで不足を感じたことはない。一応、Bluetooth接続の折りたたみ式キーボードも揃えたのだが、結局、iPad上でテキストを打つ場合でも、タッチキーボードで済んでしまっている。

だが、巷では、静電容量式のタッチパネル用のペン(タッチペン)が販売されており、数社が参入しているところをみると、そこそこ需要があるようだ。ただし、それらのタッチペンは通販の安いものでも500円程度、高ければ2000円以上もする。

そうした製品の説明を見ると、ペン先には「導電スポンジ」が使われているとのこと。これは、CPUやメモリの梱包や運搬などに使われる、導電性のある黒っぽいスポンジである。それなら、導電スポンジさえあればタッチペンを自作できると考えて試してみた。

自作派のコンピュータユーザーや電子工作マニアならば、たぶん、家の中に転がっている導電スポンジの余りを利用できるだろう。しかし、自分にはそうした趣味がないので、まずそれを手に入れることにする。

最初は新宿の東急ハンズに行ってみたが、導電スポンジはないという。そこで足を伸ばしてヨドバシマルチメディア新宿店のパソコン自作コーナーを覗いてみた。すると、意外なことに、そのフロアにはなかったのだが、Macintosh売り場で無事に購入することができた。

導電スポンジTK-P2

サンワサプライの「導電スポンジTK-P2」は、A4サイズで600円台で購入できる。

実際に必要なのはほんの数平方センチほどなのだが、A4サイズでしか売っていないため、それを購入してカットすることにした。したがって、利用する部分の実質的な費用は10円程度ということになる。

まずは、本当に導電スポンジでタッチスクリーンが操作できるのかを試してみる。そのため、大きいままのスポンジの端のほうをつまみ、角でスクリーン面をこすってみると、しっかり密着させれば、確かに操作可能なことがわかった。

そこで、導電スポンジのみを細めの短冊状に切り、先端部を斜めにカットした上で、持ちやすいようにアルミテープを巻いて軸代わりにしてみた。指からペン先までが絶縁されずに、電気的につながっていることが重要なので(絶縁されていると静電容量が変化しない)、セロテープやガムテープではなく、アルミテープを使うのがポイントだ。

すると、意識してペン先を画面に押しつければ、タッチペン的に利用することができた。たとえば、サンワサプライ自身が販売しているタッチペンでも、円形のペン先が垂直に密着するように使うことが明記されているので、それが普通なのだろう。

ペン状にカットし、軸の代わりにアルミテープを巻いた

とりあえず導電スポンジのみをペン状にカットし、軸の代わりにアルミテープを巻いて試すことにした。

このように線が描ける

ペン先がやや心許ないが、たとえばiPadのお絵描きツールで使ってみると、このように線が描ける。

そこで、もっとしっかりした軸を与えるべく、安価なアルミ軸のペンを探してダイソーに出かけたところ、アルミボディのボール&シャープペンセットが100円で売られていた。これを買って帰り、ボールペンのほうを分解して軸部分を利用することにした。

アルミボディのボール&シャープペンセット

次に、ダイソーでアルミボディのボール&シャープペンセットを買ってきた。2本で100円なので、1本あたり50円の計算だ。

軸部分のみを利用

必要なのはアルミの軸だけなので、ボールペンのほうを分解して軸部分のみを利用する。

導電性を高めるために、スポンジとアルミ軸は、できるだけ広い面積で密着することが重要と考えられる。そこで、軸とほぼ同じ長さと幅にカットした導電スポンジを、軸の中に詰め込むように挿入していく。

さらに、スポンジとタッチ面の接触面積が増えるように、スポンジの先端部を2つ折にして、もう片方の端も軸の中に押し込んだ。

導電スポンジをカット

軸とほぼ同じ長さと幅で、導電スポンジをカットする。

スポンジをアルミ軸に挿入

スポンジをアルミ軸に挿入し、先端部は2つ折にして、ペン先を形作れるようにした。

最後に、ペン先の形が崩れないように、そして、導電スポンジが抜け落ちないように、スポンジと軸との境目にアルミテープを巻いて完成だ。この方法ならば、実質60円程度でタッチペンを作ることができ、そこそこ実用的に使えるだろう。

きちんと線を描くことができた

ペン先の形状を安定させ、アルミ軸との電気的な接続がしっかり行われるように、両者間をアルミテープで巻いて固定して再びiPad上で使ってみたところ、きちんと線を描くことができた。

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プロフィール

テクノロジーライター、原宿 AssistOnアドバイザー、自称路上写真家。デザイン、電子機器、自転車、写真分野などの執筆活動のほか、商品企画のコンサルティングを行う。近著に「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、「43のキーワードで読み解く ジョブズ流仕事術:意外とマネできる!ビジネス極意」、「iPadがつくる未来」(以上、アスキー新書)。「Macintosh名機図鑑」(えい出版社)、「iPhoneカメラライフ」(BNN新社)、「iPhoneカメラ200%活用術」(えい出版社ムック)、「iPhone×Movieスタイル」(寄稿:技術評論社)。

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