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大谷和利の「General Gadgets」

古今東西、デジ/アナを問わず、優れたコンセプトを持つ製品を独自の視点で紹介する。

自分なりに理想のiPadケースを試作してみる(後編)

2010年8月 8日

(これまでの 大谷和利の「General Gadgets」はこちら

帯写真

 

ひさし機能を実現して、ひとまず完成

間に一度、別テーマの工作が入ったが、今回は自分なりのiPadケース試作の後編をお届けする。屋外での直射日光を遮ったり、余計な画面反射を押さえて、タイピングなどの作業が行いやすくするための機構の実現だ。

といっても、複雑なやり方を考えていたわけではなく、使えるスペースと材料が限られているため、逆に単純化するにはどうすれば良いのかを思案していた。途中、クリックストップ付きの分度器定規のようなものをカバーの合わせ目に組み込むことも考えて試してみたが、最終的には、シンプルにカラーワイヤーを支柱とし、使わないときには、ケースのフレームとジッパーの間の部分にきれいに畳み込まれるようなものとなった。

できあがってみると、まるで問題などなかったかのように簡単に思える…というのは、アップルデザインに通じるところがある(あくまでも「通じる」だけで、その到達レベルはもちろん圧倒的に異なる)が、実は先日、その原点とでもいうべき宮大工の小川三夫棟梁の手仕事の実演を見る機会に恵まれた。

棟梁やその弟子の方がかんなで仕上げた木材の表面は、何もしていないのに、まるでウレタン塗装を施したかのように滑らかで、奥の景色が反射して見える。たとえば、アップル製品も塗装せずに樹脂成型や切削加工したそのままを仕上げとする方針を採っているが、日本古来の宮大工の精神がスティーブ・ジョブズやジョナサン・アイブに引き継がれているとすれば興味深い。

当代随一の名・宮大工、小川三夫棟梁

さる場所で、当代随一の名・宮大工、小川三夫棟梁のかんながけの実演を見る機会に恵まれた。そのかんなくずは、くずではなくて華。向こう側が透けて見えるほど薄く、まるでティッシュのようにしなやかで、モノ作りの原点に触れた思いだった

それはさておき、支柱に利用したのは、加工が容易で、なおかつそれなりの粘りや硬さも併せ持つカラーワイヤーの「頑固自在」だ。その「受け」となるストッパー部分には、表面にちょうど良い幅の凸凹がある防振ゴムパッドを使うことにした。

支柱部分を作るためのカラーワイヤー

今回用意したのは、まず、支柱部分を作るためのカラーワイヤー「頑固自在」(525円)。姉妹品の「自遊自在」よりも芯材が硬め、かつ曲げ加工の容易さは維持されていることから選択した。

防振ゴムパッド

そして、防振ゴムパッド(71円)は、表面の凸凹にワイヤーを噛ませることで、角度調整時のストッパーとして働くように利用する。

使わないとき、支柱はキャリングケースのフレーム部分とジッパーの間に隠れていて欲しいので、カラーワイヤーはケースの周囲の形状に合わせた直線と曲線になるように加工する。その両端を内側に直角に曲げ、この部分のビニール被覆を剝がしてケースの側方から差し込んで固定した。

加工した「頑固自在」のワイヤーを、適当な位置でケースと一体化

キャリングケースの周囲の形状に合わせて加工した「頑固自在」のワイヤーを、適当な位置でケースと一体化。そこを支点にして、寝かせたり、立ち上げたりできるようにした。

固定方法は極めて単純

その固定方法は極めて単純で、千枚通しで装着位置にガイドとなる穴を空けておき、先端部のみビニール被覆を剝がして芯材を斜めにカットした「頑固自在」のワイヤーを差し込んだだけ。反対側の辺では逆方向に差し込まれるので、両側から挟み込む形となり、不用意に外れることはない。

一方で、防振ゴムパッドは、本来の目的のために、それなりの面積と厚みがあるので、そのままではストッパーとして使えない。そこで、細めにカットした上で厚さが約半分になるところまでカッターを入れた。

また、さほど力もかからないところなので、固定は接着剤で行っている。

防振ゴムパッド

防振ゴムパッドは細めにカットし、さらに厚みも半分程度になるように薄く切ってから、接着剤で上側のカバーの内側に貼り付けて固定した。ケース内でのiPadの配置の関係から片側にしか取り付けていないが、支柱がずれない程度に位置決めするだけなので、これで十分に役目を果たす。

このような仕掛けで、ひさしとなるカバーは約30〜45度の範囲で角度調整が可能となった。実際に屋外では、自分の腿の上に載せて使ったり、組んだ足の上で利用することが多いので、あとは状況に応じて足の角度などを変えて調整することになる。

カバーの開口角度

支柱を最も立てた状態でのカバーの開口角度を示す。

開口角度

逆に、支柱を最も寝かせた状態でのカバーの開口角度を示す。

カバーをひさしとして用いないと

カバーをひさしとして用いず、後ろに回して使った場合、屋外では画面に空が反射して非常に見づらくなってしまう。

カバーをひさし的に用いた場合は

これに対して、カバーをひさし的に用いた場合には、ここまで画面の視認性が向上する。これならば、屋外でも十分タイピングが可能となる。

ちなみに、この改造版iPadケース、カバーを後ろに回してジッパーを少し閉めると、ランドスケープモードで自立させることもできる。たぶん、もう少し手を加えながら使っていくことになると思うが、何か進展があれば、またこのコラムで紹介したいと思う。

動画などの閲覧に適した形態で固定

カバーを後ろに回した状態で、左右のジッパーを少しだけ閉めてからキャリングケースごと立てると、動画などの閲覧に適した形態で固定できる。

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プロフィール

テクノロジーライター、原宿 AssistOnアドバイザー、自称路上写真家。デザイン、電子機器、自転車、写真分野などの執筆活動のほか、商品企画のコンサルティングを行う。近著に「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、「43のキーワードで読み解く ジョブズ流仕事術:意外とマネできる!ビジネス極意」、「iPadがつくる未来」(以上、アスキー新書)。「Macintosh名機図鑑」(えい出版社)、「iPhoneカメラライフ」(BNN新社)、「iPhoneカメラ200%活用術」(えい出版社ムック)、「iPhone×Movieスタイル」(寄稿:技術評論社)。

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