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大谷和利の「General Gadgets」

古今東西、デジ/アナを問わず、優れたコンセプトを持つ製品を独自の視点で紹介する。

自分なりに理想のiPadケースを試作してみる(前編)

2010年6月 4日

(これまでの 大谷和利の「General Gadgets」はこちら

帯写真

 

iPadを隠さずに保護したい

その後もiPadのある生活は順調に続いているが、実際に使い込んでいくうちに、解消したいと思える問題点が出てきた。それは、屋外で使用する際のスクリーンの反射だ。ガラス面にアンチグレアタイプのプロテクターフィルムを貼れば多少は緩和されるかもしれないが、現実的には上からの光を何らかの方法で遮るしかない。そのためのケースを作ってみることにした。

簡単に言えば、フルオープン式のケースを開いたときに、片側のフラップが庇(ひさし)のように適当な角度で固定できれば良い。ところが、前回紹介したような100円ショップのケースは、みな袋状になっており、改造ベースとしては利用できない。

また、そのまま持ち歩けるように持ち手も欲しいし、Camera Connection KitやVGAアダプタなどを収納できるポケットも必要だ。そうなると、一般的なノートPC用のキャリングケースに手を加えるのが一番早道のように思えた。

そのような観点から選んだのが、バッファローコクヨサプライのTSUTSUMU PRODUCTシリーズの10.4インチ〜7.0インチワイドスクリーンまで対応する製品(型番BSINH04BK)である。メーカ希望小売価格は2120円だが、量販店では1600円前後で販売されている。

コクヨバッファロー製の汎用ノートPCケース

1600円前後で買えるコクヨバッファロー製の汎用ノートPCケース(10.4インチ〜7.0インチワイドスクリーンまでの対応モデル)。横長タイプであることと、マチ付きの大型ポケットが付いていることが、今回のプロジェクトのベースとなる製品を選ぶポイントだった。

さて、アップル純正品を含めて薄手のキャリングケースは、iPadの外縁部を覆うようなフレーム状の構造を持ち、そこに本体を差し込んで固定する仕組みになっている。変なこだわりだが、自分では、そうやって利用時にiPadが隠れてしまうのが残念であり、ケースの内側にそのまま載っているようなイメージで固定できないか考えてみた。

その結果、ドックコネクタを利用して、コネクタ自体をケースにネジ留めし、そこにiPadを合体させる方法に思い当たった。上記のケースには、ギリギリだが、ドックコネクタを収める余裕がある。

ドックコネクタ自体は、ダイソーで税抜き100円で販売されているiPod用充電ケーブルを利用することにした。

コクヨバッファロー製の汎用ノートPCケース

iPadを載せてみるとほぼピッタリの大きさだが、固定するための仕掛けを組み込むためには、左右方向に適度な余裕があることも重要なのである。

ダイソーで見つけた税抜き100円のiPod用充電ケーブル

ダイソーで見つけた税抜き100円のiPod用充電ケーブル。Made for iPodの認定は取れていないが、充電だけでなくデータのシンクロにも対応している。100円だからこそ、ダメもとでも心置きなく改造できる。

ダイソーで見つけた税抜き100円のiPod用充電ケーブル

純正のドックコネクタのほうがコンパクトでデザイン的にも優れているが、今回のプロジェクトでは、簡単に分解できたり、内部の空間に余裕があることが必要だった。このダイソー扱いのケーブルのコネクタ部分は、4つのツメを外すだけでこのように内部にアクセスでき、もう一度はめ込めば元に戻せる。

ケースの内壁は発泡ポリウレタン製で、衝撃を吸収するようになっているのだが、そこに直接コネクタをネジ留めしても剛性が不足し、ネジ自体が抜けてしまう恐れもある。そこで、ケースのポケットの中に樹脂板を入れて強度を上げ、さらにネジが抜けないための土台とすることにした。

実際の作業的には、樹脂板をポケットの内のりよりもわずかに小さくなるようにカットし、ケースの内側に取り付けるドックコネクタの位置に合わせてネジ穴を開ける。分解したドックコネクタも、それらに呼応する位置にネジ穴を開け、内壁をサンドイッチするようにネジで固定した。なお、iPadを平面に置いたときに、ドックコネクタの位置は数mm浮いた状態になるため、ゴム製の防振パッドを挟んで高さを調整している。

また、iPadの重量がそれなりにあるため、ドックコネクタのみの接続では、重心位置を支えることになる縦置きの場合には良いが、横置きしたときにはコネクタと逆の辺が支点から遠くなり、上下方向にズレを生じることがある。そこで、同じく防振パッドを利用して、ズレを防ぐストッパーを設けることにした。

ハンズで購入したポリプロピレン製の樹脂板

ハンズで購入したポリプロピレン製の樹脂板を、ポケットの内のりに合わせてカットし、iPadを固定する面の補強に用いると共に、ドックコネクタをしっかりネジ留めするための土台とした。

ケースを開いた面にiPadを固定したところ

少しわかりにくいが、ケースを開いた面にiPadを固定したところ。ホームボタンのある側を、ケースにネジ留めされたドックコネクタと合体することによって固定し、そこを支点とする上下方向のズレを防ぐために、左下にストッパーを設けている。なお、持ち手が手前側に来ているが、これは間違いではなく、実際の使い勝手を考えてのレイアウトだ。

天然ゴム製の粘着付防振パッドを利用

ドックコネクタの高さ合わせや、ズレを防ぐストッパーには、天然ゴム製の粘着付防振パッドを利用している。

ストッパー部 ストッパー部

ストッパー部は、まず半分に切った防振パッドをネジで固定。その上から同じサイズの防振パッドを貼り重ねて、ネジを隠している。後は、iPadの縁に当たる高さまでパッドを貼っていけばよい。

さらに、写真ではiPad固定用のドックコネクタからケーブルが出ていないので切断したかのように見えるが、実際には内壁に穴を空けてポケット側に逃がしており、ケース内にiPadを装着したまま、USBケーブル経由で充電やiTunesとのシンクロができるようになっている。

iPadを固定するドックコネクタ

iPadを固定するドックコネクタは、実はケーブルをポケット側に逃がすことで、本来の機能を温存している。つまり、iPadをケースに入れた状態で、充電やiTunesとのシンクロ作業が行えるのだ。

マチ付きポケットの容量が思った以上に大きいため、Camera Connection KitやVGAアダプタの他にも、たとえば小型のスピーカーなども収納することができる。iPadに内蔵されているスピーカーは思いのほか優秀で、音質も音量も十分確保されているが、スピーカー穴の位置から音の出る方向が決まってしまう。本体の向きに関係なく、音の方向を一定に保つには、そうした小型の外部スピーカーも有効だ。

バード電子のピロースピーカー バード電子のピロースピーカー

そのフォルムと、携帯時のストラップ取り付け方法がユニークな、バード電子のピロースピーカー。アンプは内蔵していないので、大音量は望めないが、ナチュラルなステレオサウンドが得られる。

バード電子のピロースピーカー

iPadの内蔵スピーカーは、音質・音量共に十分確保されているので、少人数のプレゼンなどではまったく問題なく利用できるが、あえて相手に向かって音を出したいような時に、これを接続するような使い方も考えられる。

ということで、今回は個人的に理想のiPadケースの基本部分ができ上がった。次回、後編では直射日光を遮る機構の組み込みを行っていきたい。

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プロフィール

テクノロジーライター、原宿 AssistOnアドバイザー、自称路上写真家。デザイン、電子機器、自転車、写真分野などの執筆活動のほか、商品企画のコンサルティングを行う。近著に「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、「43のキーワードで読み解く ジョブズ流仕事術:意外とマネできる!ビジネス極意」、「iPadがつくる未来」(以上、アスキー新書)。「Macintosh名機図鑑」(えい出版社)、「iPhoneカメラライフ」(BNN新社)、「iPhoneカメラ200%活用術」(えい出版社ムック)、「iPhone×Movieスタイル」(寄稿:技術評論社)。

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