このサイトは、2011年6月まで http://wiredvision.jp/ で公開されていたWIRED VISIONのコンテンツをアーカイブとして公開しているサイトです。

大谷和利の「General Gadgets」

古今東西、デジ/アナを問わず、優れたコンセプトを持つ製品を独自の視点で紹介する。

EZISON 100/Fingeristにインスパイアされたスピーカーを作る(前編)

2010年3月23日

(これまでの 大谷和利の「General Gadgets」はこちら

帯写真

 

専用機と化すiPhone向けの特製スピーカー

拙著で最新刊の「iPhoneカメラライフ」(BNN新社刊)で採り上げたカメラアプリもそうだが、常に1つのウィンドウだけがスクリーンを占有するiPhoneは、異なるアプリを立ち上げるごとに仮想的な専用機に変身したかのような感覚をユーザーに味あわせてくれる。

楽器アプリの場合も、タッチパネルの応答性と相まって、iPhoneがあたかもギターやピアノに乗っ取られたかのように思えるから、演奏に熱中できるわけだ。

しかし、だからといって、さすがにiPhone自体の形状が変化することはないので、たとえば、そのままiPhoneを手にしてバンドに参加しても演奏スタイルなどの点で、他のプレーヤーとの間に違和感が生じてしまう。

そこで、熱心な楽器アプリユーザーの間では、手近な材料でiPhoneをギター風に演奏できるようなケースというか、アタッチメントのようなものを自作する動きもあった。

それをより本格的にプロダクションベースにのせたものが、トリニティの(ギタリストならぬ)Fingerist(14,800円で3月下旬出荷予定)であり、そのプロトタイプ的な位置づけで限定数量が手作りされているバード電子のEZISON 100(25,800円でロットごとに随時出荷)である。

前編となる今回は、原型的な味わいを持つEZISON 100を紹介し、次回後編で、自分なりのなんちゃって楽器風ケースを自作してみることにする(今月は、新刊関連のイベントや確定申告などが重なり、時間がとれなかったのだ)。

EZISON 100もFingeristも、その本質は、音源となるiPhoneをはめこんで使えるアンプ付きスピーカーだ。ただし、前者はプライウッド製ボディでイヤフォン端子接続、後者は樹脂製ボディでドックコネクタ接続(+ライン出力端子付きで外部アンプにも対応)という点が異なっている。

EZISON 100

エレキギターのディテールをうまく活かしながら、コンパクトで携行しやすいサイズにまとめられたEZISON 100。FIngeristも基本形状は同じだが、木製部分がウッド風の樹脂となり、ネック部分がより細くくびれたフォルムとなる。

iPhoneを固定させるところ

iPhoneは、ボディの窪みにはめ込み、ピック型のストッパーで留めて固定する。iPod touchでも利用可能だが、イヤフォン端子の位置が異なるため、画面が反転できる楽器アプリのみ使用可能だ。

演奏中に落ちることはない

iPhone/iPod touchの端にスピーカー側の樹脂カバーの縁がわずかにかかるようになっており、演奏中に落ちることはない(量産版のFingeristでは、ドックコネクタ接続+スライド式のストッパーとなる)。

Ezison 100は、手作りの少量生産品であるため、外装パーツがマニアックなチョイスになっている。たとえば、メインスイッチは金属製のフリップタイプ、ボリュームノブはフェンダーの純正パーツ、ストラップピンもエレキギター用のものだ。

フリップスイッチとフェンダーの純正ボリュームノブ

フリップスイッチとフェンダーの純正ボリュームノブに、EZISON 100のこだわりが現れている。

ストラップピン

ストラップピンも、実際のエレキギターで使われているものが流用された。

ボディ素材はプライウッド

ボディ素材は、プライウッド(積層合板)を使用。イヤフォン端子への接続ケーブルを這わせるための溝が切られている。

造りもエレキギターに準じて、くり抜かれたボディの空洞部分に回路基板を収め、前後から樹脂カバーで覆う構造が採られている。

バード電子設計のデジタルアンプによる最大2Wの出力は、個人で楽しむには十分。それ以上の大音量を望む場合には、内蔵3Wでライン出力端子付きのFingeristを選択すれば良い。

電源は単三電池×3本

電源は、単三電池×3本。Eneloopのような単三形充電池も利用できる。

バード電子のデジタルアンプとフルレンジスピーカー

本体内の空洞部分に、バード電子のロゴ入り基板(デジタルアンプ)やフルレンジスピーカーが収められている。

さて、次回はいよいよ市販の「ある製品」を改造して楽器ケースを自作していくが、EZISON 100やFingeristの方向性や完成度に比べると、ネタ系で脱力感あふれるものになりそうだ。乞うご期待。

フィードを登録する

前の記事

次の記事

大谷和利の「General Gadgets」

プロフィール

テクノロジーライター、原宿 AssistOnアドバイザー、自称路上写真家。デザイン、電子機器、自転車、写真分野などの執筆活動のほか、商品企画のコンサルティングを行う。近著に「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、「43のキーワードで読み解く ジョブズ流仕事術:意外とマネできる!ビジネス極意」、「iPadがつくる未来」(以上、アスキー新書)。「Macintosh名機図鑑」(えい出版社)、「iPhoneカメラライフ」(BNN新社)、「iPhoneカメラ200%活用術」(えい出版社ムック)、「iPhone×Movieスタイル」(寄稿:技術評論社)。

過去の記事

月間アーカイブ