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大谷和利の「General Gadgets」

古今東西、デジ/アナを問わず、優れたコンセプトを持つ製品を独自の視点で紹介する。

カード立てをiPod nanoスタンドに流用+iPhoneのデモ用に撮影スタンドを自作(2)

2009年11月11日

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デモの必需品、iPhone撮影スタンド

さて、iPhone関連では、プレゼンなどで実際のアプリの動作を見せる機会も多い。スティーブ・ジョブズが行うデモでは、画面のすべての動きをビデオ出力できるように設定された特別なiPhoneが使われるが、市販モデルでは写真のスライドショーやムービーの再生など、一部の映像しか対応していない。

そこで、iPhoneの画面を直接撮影して見せるわけだが、きちんとセッティングして録画するのならばまだしも、ライブでスルーの映像を見せるときにはすぐにフォーカスがずれたり、斜めからの操作による視差でタッチがうまく働かないなど、意外と厄介なのである。

先日も、筆者が副会長を務めるソフトウェア開発者のためのNPO法人のMOSA(http://www.mosa.gr.jp)の合宿ミーティングでも何人かのスピーカーがそのようなセッティングを行ったが、たまたまセカイカメラのデモを行った頓智ドットの方が自前の撮影スタンドを持ち込んでおり、それを見た小池会長から大谷に対して直々に開発の命が下った。

確かに、セカイカメラのようなARアプリになると、iPhone自体を動かしたときにも画面をきちんと撮影できる仕組みがないとデモ自体が成り立たない。予め撮影しておいたデータをプレゼンテーションデータに組み込む場合でも、それは同じだ。

いずれにしても、自分用にも必要なのだが、まずはMOSA向けのものをなるべく安価に作ってみることにした。ざっと考えて、構造的にはミニ三脚、iPhoneホルダー、両者をつなぐアームなどが必要になる。特に、前2者にコストがかかりそうだったが、量販店に行くとミニ三脚は500円台、iPhoneホルダーは汎用の携帯電話ホルダーを利用することにして、たまたまセール中だった「テレフィット2」が700円台で手に入った。

デジオのミニ三脚は、確か頓智ドットの方も使っていた記憶がある。これよりも安価な製品も存在するものの、強度や平らに折りたためる携帯性などを考えると、このあたりに落ち着くようだ。

ホルダーは確かにiPhone専用品のほうがデザインが良いのだが、コストが数倍違ってくるので、ここは特売品を採用した。

デジオのミニ三脚

iPhone撮影スタンドの工作材料としては、まずミニ三脚を用意した。これは平らに折りたためるデジオの製品。

携帯電話ホルダー「テレフィット2」

iPhoneを保持する部分には、ちょうど安売りしていた自動車用の携帯電話ホルダー「テレフィット2」を応用。

ホルダー単体の外観

ホルダー単体の外観。デザイン的には今ひとつだが、今回は予算的な制約(本文参照)もあり、よしとする。

分解してヘッド部だけを利用

車体への取り付け用のパッド部分は不要なので分解してヘッド部だけを利用する。バネは使わないがネジは流用するので取っておく。

他の金具類は、ある程度目星を付けて購入するのだが、この種の工作では組んでみて調整していくケースが大半なので、使わずに済むものもある(たとえば、当初はL字の金具を2個組み合わせる予定だったが、組んでみると、調整範囲を限定すれば1個で済むことがわかった)。たぶん、2台目以降も作るので、そちらに流用すれば無駄にはならない。

金具やネジ類を東急ハンズで揃えた

その他、金具(ビオラのカー金物No.7、11、55)やネジ類を東急ハンズで揃えてきたが、作りながら構造を詰めていったので、使わないパーツも出た。

可動パーツの干渉を防ぐために当初はスペーサーを用いるつもりだったが、可動部を少なくしたことやナットのほうが微調整がきくため、方針を転換して組み上げた。

アームの立ち上がりの先端部分に「テレフィット2」のヘッド部を取り付ければ、iPhone側の仕掛けは完成だ。

アーム部分を組み立てたところ

アーム部分を組み立てたところ。

iPhone取り付け側の構造の詳細

iPhone取り付け側の構造の詳細。L字の金具を一段下げて装着しているのは、現場合わせによる調整の結果である。

「テレフィット2」のヘッド部をネジ留め

その先端部に、「テレフィット2」のヘッド部をネジ留めする。

一方でカメラ側は、ミニ三脚のネジをカメラの三脚穴に留める際に、アームの金具も共締めするつもりだったが、金具の板厚のためにわずかにネジが届かなくなり、手もとにあった三脚ネジパーツで延長して対処した。

ちなみに、一般的なビデオカメラではAV端子が筐体後方や側面にあるが、MOSA事務局の備品のXacti(写真のXactiは私物で、AV端子は後方のバッテリーカバー内)では三脚穴と並びの底面から出すようになっているため、コネクタと干渉しないように浮かせて固定する意味合いもある。

アームの金具を三脚穴に共締めして固定

カメラ側は、アームの金具を三脚穴に共締めして固定した。このように斜めの状態で利用することで、iPhoneの操作も安定して行える。

手もとにあったネジが長めの三脚ネジパーツを使って延長

ミニ三脚のネジが短く、金具を挟むとそのままでは留まらなかったため、手もとにあったネジが長めの三脚ネジパーツを使って延長している。

「テレフィット2」の回転機構のおかげで、iPhoneは、縦位置でも横位置でも撮影可能だ。

このホルダーの弱点としては、デバイスを固定するための幅の調整機構が片方のアームにだけ装備されているため、回転の中心がiPhoneの中心と微妙にずれてしまうことが挙げられる。しかし、画面内での位置はカメラの向きを微調整して対応可能なので、コストに免じて目をつぶることにした。

iPhoneの縦使いと横使いに対応できる

「テレフィット2」のヘッド部の回転機能を利用することで、iPhoneの縦使いと横使いに対応できる。

給電しながらのデモも可能

本来はイヤフォンフックとして設けられている部分をケーブルフックに利用し、給電しながらのデモも可能だ。

撮影スタンドの実際のテストでは、テーブルの上で固定しての使用はもちろん、屋外で手持ちでの利用においても、その安定性において大きな威力を発揮した。唯一、外光がiPhoneの画面に反射すると撮影画面が見にくくなるので、今後機会があれば、そのあたりの改良を進めていきたい。

撮影スタンドのメリットが的確にわかるものとして、セカイカメラ操作中の画面を手持ちで撮影してみた。外光の反射を防止する工夫が必要だが、所期の目的は果たしている。

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プロフィール

テクノロジーライター、原宿 AssistOnアドバイザー、自称路上写真家。デザイン、電子機器、自転車、写真分野などの執筆活動のほか、商品企画のコンサルティングを行う。近著に「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、「43のキーワードで読み解く ジョブズ流仕事術:意外とマネできる!ビジネス極意」、「iPadがつくる未来」(以上、アスキー新書)。「Macintosh名機図鑑」(えい出版社)、「iPhoneカメラライフ」(BNN新社)、「iPhoneカメラ200%活用術」(えい出版社ムック)、「iPhone×Movieスタイル」(寄稿:技術評論社)。

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