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大谷和利の「General Gadgets」

古今東西、デジ/アナを問わず、優れたコンセプトを持つ製品を独自の視点で紹介する。

iPhoneにコンバージョンレンズ装着を可能にするメタル切削ジャケットと新マクロレンズ

2009年9月 3日

(これまでの 大谷和利の「General Gadgets」はこちら

メタル切削ジャケットの新たな可能性

その日、筆者は、渋谷にある屋根裏部屋のような喫茶店の暗がりで、iPod/iPhone用メタル削り出しジャケットの開発者であるファクタスデザインの鉢呂さんが取り出した開発中の新型ケースに見入っていた。

ちょうどこの記事の公開日と相前後して受注開始されることになったファクトロンブランドのその製品の名は、SIMPLEX NANO BIGWAVE(15,800円)。

名称の由来は、ケースを裏返せば明らかだ。金属切削技術を活かして、ジュラルミンの表面に葛飾北斎の富嶽三十六景「神奈川沖浪裏」を思わせる大波の図案がレリーフ上に刻まれているのである。

SIMPLEX NANO BIGWAVE

9月3日に受注が開始されるファクトロンブランドのiPod nano用メタル削り出しジャケットの新製品、SIMPLEX NANO BIGWAVEでは、背面に切削による北斎風のレリーフが施されている(波の一部がオレンジに見えるのは照明の加減で、実際には金属色)。

これまで、イラストをプリントしたり、モールドによってグラフィカルな凹凸を設けたiPodケースは存在したが、これは明らかに新機軸。ジャケット自体のデザインもシンプルながら左右非対称のスリットを配した美しいもので、それだけに表と裏の対比が面白い。

裏のレリーフのないプレーンなモデルも用意される

四隅を特徴的なネジで留める既存のQuattroシリーズに対し、SIMPLEX NANOシリーズは、フックに対応する左右非対称のスリットがデザイン的なアクセントになるシンプルな機能美を打ち出した。裏のレリーフのない、プレーンなモデルも用意される。

あえて和柄的なデザインから発売することにしたのは、最近、メタル削り出しジャケットに関して海外からの問い合わせが増えているためとのことで、既存シリーズでも特にiPhone向けの製品は生産が追いつかない状況という。

9日には、新型iPod nanoも登場するようだが、第4世代nanoはベストセラーとなっただけにユーザーも多く、大事に使いたいという人にとってメタル削り出しジャケットは1つの魅力的な選択肢となるだろう(かく言う筆者も、旧型のnanoを初期のメタル削り出しジャケットで保護して今も愛用しているクチだ)。

より多彩な撮影のために

ファクトロンブランドのメタル削り出しジャケットが海外で注目される1つのきっかけとなったのが、コンバージョンレンズをネジ込みによって装着可能なQuattro for iPhone SP(レンズ別、本革張りタイプで19,600円)だった。

このジャケットは、携帯やiPhone用向けに金属製の高品質コンバージョンレンズを販売しているイザワオプトの製品群に専用のレンズマウントを介して装着できるもの。同社の主だったレンズについては、以前にWired Visionの記事でも紹介したことがあった。

Quattro for iPhone SPは、特にマクロ機能のないiPhone 3Gユーザーにとって便利であり、iPhone 3GSユーザーでも多彩なコンバージョンレンズを使った撮影が楽しめる。

Quattro for iPhone SP

iPhone 3G/3GSにコンバージョンレンズのネジ込みによる取り付けを可能にするQuattro for iPhone SP。イザワオプト扱いの高品質レンズに、同ジャケットに適合するレンズマウントを装着したものがファクトロンのオンラインストアで別売されており、目的に応じて購入・装着できる。

Quattro for iPhone SPのレンズ取り付け部分のアップ

Quattro for iPhone SPのレンズ取り付け部分のアップ。一般的な利用には十分な強度が確保されており、比較的大きなフィッシュアイコンバーターでも確実に装着することが可能だ。

フィッシュアイコンバーターを装着したところ

フィッシュアイコンバーターを装着したところ。ジュラルミン削り出し+革張りの本体もかなりの迫力だが、レンズを装着するとさらに押し出しの強いイメージとなる。

メタル素材だけに、そのままでは電波を遮断してしまうが、革張り部分の切削加工を工夫して極力電波障害が起こりにくいように設計されており、そこが開発時に一番苦労した部分という。

四隅を留める専用ネジに至るまで切削によって作られた頑強なジャケットは、さしずめデリケートなiPhoneを守る鎧といった趣があり、コンバージョンレンズを装着するとある種の金属生物のようにも思えてくる。

3Gユーザー必見のマクロ2種

かつてイザワオプトのコンバージョンレンズ群を紹介したときには、マクロレンズが含まれていなかったので、ここで改めて2種の製品を採り上げておこう。

1つは、以前からあるKC-1という撮影距離25mmのもの。もう1つは、やや広めの領域の撮影に対応するKC-2という撮影距離40mmのものだ。

イザワオプトのマクロレンズ2種

こちらは、イザワオプトのマクロレンズ2種。以前からKC-1と呼ばれる超近接撮影用の製品(上)は存在したが、もう少し広い範囲をマクロ撮影したいという要望に応えてKC-2(下)が開発された。

Quattro for iPhone SP用にも、ファクトロンのオンラインショップにおいて専用レンズマウント付きで販売されているが、単体で装着したいという場合には、付属の携帯電話用クリップを利用することになる。

付属の携帯電話用クリップを利用してiPhoneに装着

レンズを単体で購入した場合には、付属の携帯電話用クリップを利用して、このようにiPhoneに装着する。iPhone用パッド(ゴム製のスペーサー。420円)が、曲面構成の筐体との隙間を埋め、光軸を真っ直ぐに保つ役割を果たす。

実際に撮影してみると、糸巻き型の歪みは発生するものの、超接写写真が面白いように撮れ、iPhone 3GSでも標準レンズよりも撮影最小距離を短くできる効果が認められた(iPhone 3GSでフォーカスがシャープに合っていると感じられる最小距離は実測で75mm程度)。

KC-2のほうが被写体との距離を空けられるので、レンズの影で撮影を邪魔されることも少なく、汎用性は高いと言える。マクロ撮影で困っている3Gユーザーに推奨したいコンバージョンレンズである。

KC-1とKC-2の撮影範囲の比較

ほぼ名刺サイズのiTunes Cardを利用して、KC-1とKC-2の撮影範囲の比較を行ってみた。下になっているほうのカードの右上隅の文字ブロックを中心に撮影してみると…。

KC-1では細かい文字などを拡大撮影できる

KC-1(撮影距離25mm)では、細かい文字などをここまで拡大して撮影することができる。ごく小さなQRコードを読み取るような場合には、このほうが適している。

撮影可能範囲が面積比で約3倍に拡大

KC-2(撮影距離40mm)では、撮影可能範囲が面積比で約3倍に拡大する。それでも名刺全体をカバーできるわけではないが、住所などはより小さなエリアにまとまっていることも多いので、そういう部分の撮影に向く。

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プロフィール

テクノロジーライター、原宿 AssistOnアドバイザー、自称路上写真家。デザイン、電子機器、自転車、写真分野などの執筆活動のほか、商品企画のコンサルティングを行う。近著に「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、「43のキーワードで読み解く ジョブズ流仕事術:意外とマネできる!ビジネス極意」、「iPadがつくる未来」(以上、アスキー新書)。「Macintosh名機図鑑」(えい出版社)、「iPhoneカメラライフ」(BNN新社)、「iPhoneカメラ200%活用術」(えい出版社ムック)、「iPhone×Movieスタイル」(寄稿:技術評論社)。

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