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大谷和利の「General Gadgets」

古今東西、デジ/アナを問わず、優れたコンセプトを持つ製品を独自の視点で紹介する。

iPhoneに対応した携帯用コンバージョンレンズを試す

2009年3月 2日

(これまでの 大谷和利の「General Gadgets」はこちら

iPhoneカメラの機能を物理的に拡張

200万画素のCMOSセンサーを採用したiPhoneのカメラ機能は、仕様単体で考えると大したことはない。しかし、様々なアプリのおかげで表現力が拡張され、ちょうどシンセサイザーがプログラマブルな楽器でように、ある種、プログラマブルな写真機となっている。

そんな中、マクロ機能とレンズの画角だけは物理的なアタッチメントが必要で、メモ的な撮影の場合でも、もう少し広角だったらと思うことが結構ある(パノラマ系アプリを利用すれば間接的には解決可能だが、撮影と合成に時間がかかってしまう)。

マクロに関しては、以前にレンチキュラー方式のフラットレンズを利用する方法を紹介したので、今回は、画角を変更するためのコンバージョンレンズを試すことにした。

採り上げたのは、携帯電話用のコンバージョンレンズ群を多種揃えているKAKUYOU(販売は、イザワオプト)の製品だ。魚眼系のみ、3480円(KSW-3)、5300円(KSW-4)とやや高価だが、ワイド系と望遠系は一律1980円と、その金属ボディの仕上げの良さを考えると十分リーズナブルな価格で提供されている。

KAKUYO(カクヨウ)製、イザワオプト扱いの携帯電話用コンバージョンレンズ群。左上から、185°魚眼(KSW-4)、170°魚眼(KSW-3)、×0.5 超広角(KSW-1)、×0.7 ワイド[広角]コンバージョン(KW-1)、×1.5 テレ[望遠]コンバージョン(KT-1)

これらは元々、一般的な携帯電話用で、巧妙な樹脂製クリップオンパーツにより、ほとんどの機種にワンタッチで装着可能となっている。しかし、iPhoneの場合にはレンズ周辺の外装形状が湾曲しているため、そのまま取り付けても光軸がずれてしまう。

これを防ぐために、イザワオプトでは「iPhone用パッド」と呼ぶゴム製の専用台座(420円)を用意し、コンバージョンレンズのカメラ側になる面に貼り付けることによって、装着時の光軸が正しく揃うようにしている。

Phoneのカメラレンズ部は、周囲が湾曲しているため、携帯電話用コンバージョンレンズをそのまま取り付けても光軸がずれる。そこでイザワオプトは、ゴム製の専用台座を用意した。本来は、コンバージョンレンズ側に両面テープで固定しておく。

これらのコンバージョンレンズのもう1つの特徴は、クリップオン用のパーツが付属している点だ。このパーツのおかげで多様な携帯電話に対応し、ちょっとした撮影の間は安定して固定できる。

クリップオンされたレンズを別の角度から見たところ。ゴム製台座のおかげで光軸が揃っていることがわかる。

実際の撮影結果を以下に示そう。

本来、ノーマル状態のiPhoneカメラは、アドレスブックに登録する人物のポートレート撮影などを主眼としていると思われ、固定されたフォーカスや画角も、それを念頭に決められたようだ。逆に言えば、無理をしていないので、風景などを撮っても歪みの少ない比較的素直な描写が得られるとも言える。

ノーマル状態のiPhoneカメラで撮影したイメージ。撮像素子は200万画素のCMOSで、マクロもズームもないが、単体での性能追求よりも携帯電話におけるカメラ機能のバランスを考えた設計と言える。

これに対し、×0.7のワイドコンバージョンレンズを装着すると、やや歪みは増えるものの、予想以上に広い範囲をカバーすることができ、後ろに下がって撮る余裕がないような場所でも被写体を捉えやすくなる。

ただし、逆光の影響を受けやすくなるためか、画面内に太陽が直接写っていなくても、斜め前方からの光で画像にフレア的な影響が出ることがある。

×0.7 ワイドコンバージョンレンズによる撮影結果。中央部やや上の部分が、わずかに霞んで見えるのは、フレーム外のビル陰からの太陽光の影響によるもの。

×0.5の超広角レンズでは、さらに撮影範囲が広がり、20階超のタワーマンションも余裕で画面内に収まってくる。歪みや周辺部の画像の流れも目立つが、使い方次第でアート的な効果を生み出せそうだ。

×0.5 超広角レンズによる撮影結果。タル型歪みと周辺部の画像の流れが見られるが、視野はかなり広がる。

×1.5のテレコンバージョンレンズも数値から想像される以上の望遠効果があるが、それなりに大きな糸巻き型の歪みも発生する。一般には、ワイド系レンズのほうが応用が利き、利用シーンも多いと思われる。

×1.5 テレコンバージョンレンズによる撮影結果。糸巻き型の歪みが見られ、周辺部もわずかにケラレるが、ノーマルレンズと比較して、それなりに寄りの迫力が感じられる。

そして魚眼に関しては、別世界という印象のイメージになる。少し前に流行ったデカ鼻の犬の写真なども、この魚眼効果を利用して撮影されたもので、用途は限られるが、ブログやWebサイトのアクセント的に使うにはかなりインパクトがあると言えるだろう。

170°魚眼レンズによる撮影結果。左右がカットされ周辺部にケラレが見られるものの、レンズ面から被写体側にある、ほぼすべてのイメージを写し込むことができる。

185°魚眼レンズによる撮影結果。わずかに左右がカットされるが、ほぼ円周魚眼のイメージとなっている。レンズ面よりも手前にあるイメージまで写すことのできる185°魚眼の特徴が良く表れている。

コンバージョンレンズは、日常的に使うことはないかもしれないが、いざというときに手元にあれば便利というアクセサリだ。その意味では、×0.7のワイドコンバージョンレンズあたりは使いやすく、170°魚眼レンズも異次元感覚とディテールの見え方のバランスがとれていて面白さでは一番かもしれない。

本体とは別に持ち歩く必要はあるが、iPhoneカメラをもう少し使い込んでみたいというユーザーは試してみても良いだろう。

なお、今回のレンズ一式は、パノラマ写真の総合情報サイト「QTVR Diary」を主宰する二宮 章さんのご厚意によりお借りしたもの。iPhoneから一般のデジタルカメラにいたるまで、パノラマイメージングに興味のある方は、ぜひ覗いてみることをお薦めする。


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プロフィール

テクノロジーライター、原宿 AssistOnアドバイザー、自称路上写真家。デザイン、電子機器、自転車、写真分野などの執筆活動のほか、商品企画のコンサルティングを行う。近著に「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、「43のキーワードで読み解く ジョブズ流仕事術:意外とマネできる!ビジネス極意」、「iPadがつくる未来」(以上、アスキー新書)。「Macintosh名機図鑑」(えい出版社)、「iPhoneカメラライフ」(BNN新社)、「iPhoneカメラ200%活用術」(えい出版社ムック)、「iPhone×Movieスタイル」(寄稿:技術評論社)。

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