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大谷和利の「General Gadgets」

古今東西、デジ/アナを問わず、優れたコンセプトを持つ製品を独自の視点で紹介する。

ポケットプロジェクターOptoma PK101を自分仕様で持ち歩く

2009年1月 9日

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どこでも“Show & Tell”

アメリカの小学校などのアクティビティの1つに“Show & Tell”がある。家から自分の興味のあるものや大事にしているものを教室に持ってきてクラスメイトの前で公開し(show)、それにまつわる話をする(tell)といった内容だ。

日本でも似たようなことが授業の中で行われているのかもしれないが、いずれにしても、この種のことに子供のうちから慣れていると、プレゼンテーションのコツなどが自然に身につくように思う。

筆者の子供時代には、あまり学校でこうしたことをした記憶がない。それでも、大人になってからは仕事柄もあり、何かとモノを持ち歩いて誰かに見せる機会が多くなった。勝手に“Show & Tell”と言ったところか。

実物が手許にある場合にはそれを見せるだけで済むのだが、困るのは、製品を入手できていなかったり、大きすぎて持ち運べなかったり、そもそも開発中でまだコンセプトの段階だったりするケースだ。それに加えて、トマソン系の写真やバイラル系の映像など、そもそも実体はないが紹介しておきたいアイテムもある。

もちろん、正式なプレゼンテーションならば、こちらもそれなりの準備をするし、相手側もデスクトップタイプのプロジェクターを用意するなど、理想的な環境で話ができる。しかし、カジュアルなミーティングなどで急に見せたいものが出てくるような、出会い頭の“Show & Tell”のほうが、見せるほうも見せられるほうも、実は面白かったりする。

過去には、iPod photoの時代に始まり、iPod video、iPod touchと来て、iPhone 3Gの画面で見せていたのだが、1対1ならばともかく、数人を対象に見せる場合には、やはり画面が小さいという難点があった。

そんな折、1年ほど前から試作品が展示会などに出品されて個人的に注目していたポケットプロジェクターが、2008年の暮れにようやく出荷開始され、さっそく購入した。Optoma社のPK101というモデルで、ビデオ入力に対応し、480×320ピクセルの解像度を持っている。

厚みを除けば、iPhoneとほぼ同じサイズのOptoma PK101。プレゼンテーションを行うのに、ケーブル類が一番嵩張るような時代が来るとは思わなかった。

少し薄暗い部屋ならば、標準輝度モードでも、このくらいの鮮明さで投影できる。480×320ドットの解像度でビデオ入力のみの対応だが、字幕なども十分に判読可能な画質だ。

市場には、より安価で、コンピュータからのVGA入力にも対応し、640×480ピクセルの解像度を持つ製品もいくつか出ている。しかし、あえてPK101を選択したのは、以下のような理由からだ。

  • PK101が採用しているテキサスインスツルメンツ製の光学エンジンPico DLPの性能が良く、他の同種製品のベースになっている反射型液晶パネルを用いたLCOS方式よりも、色の再現性やコントラストが良好なこと。
  • 標準輝度モードでのバッテリーの持ちが公称2時間と長いこと。
  • ビデオ入力専用に割り切って内部回路を設計した結果、最小の容積が実現されていること。
  • iPhoneやiPod touchとの接続をメインに考えているため480×320ドットの解像度で十分であり、ビデオ入力しか使わないこと。
  • VGA対応でコンピュータにも接続できてしまうと、逆に640×480ピクセルの解像度では満足できなくなる可能性が高いこと。

さて、こうした電子ガジェットを購入すると、自分の気に入るようにカスタマイズを施すことが恒例だが、PK101の場合には固定方法と携帯用のケースが気になった。

まず、最適の投影状態を作り出すための固定方法だが、PK101は同梱のアダプタを介して標準的なネジ規格の三脚に取り付けられるようになっている。

iPhoneとPK101の組み合わせだと、短時間の投影であれば、両方を手に持った状態で十分行える。しかし、それなりの長さの動画を再生するような場合には小型の三脚などを使って仰角を最適化の上で固定したい。かと言って、本体のサイズを考えると、いわゆるポケット三脚でも携帯時には邪魔に感じらるのだ。

底面の3/5を覆うカバー下の充電池により、標準輝度モードで公称2時間の投影が可能。小型化のため、一般的な三脚穴の代わりに付属の専用アダプタを取り付けるネジ穴が設けられている。

そこで選択したのは、プロ用三脚のメーカーとしても知られるイタリアはマンフロット社のModopocket No.797である。

元々コンパクトデジカメ用に開発されたこの製品は、折りたたむと数mm厚になり、取り付けた状態で持ち運んでも邪魔にならない。また、製品自体にも三脚穴があるため、そのまま他の三脚にも取り付け可能だ。

ただし、ModopocketをPK101に取り付ける際にアダプタを介しては全体の厚みが増してしまう。そこで、両面テープを使って直接底面に貼り付けてみた。これで、本体との一体感も強まり、“Show & Tell”がどこでも簡単に行えるようになった。

本来はアダプタを介して小型三脚などを付ければよいのだが、それではせっかくの携帯性が損なわれる。そこで、イタリアはマンフロット社のModopocketを両面テープで直接貼り付けることにした。

折りたたみ式の小型三脚(実際には4点で接地)であるModopocketは、上下方向の傾きを調整でき、折りたためば装着したままでも邪魔にならず、そのまま通常の三脚に取り付けることもできる優れモノだ。

PK101にModopocketとの組み合わせで利用すると、このような感じになる。どことなく探索用ロボットのような精悍なイメージで、十分に実用的な上下角の調整範囲と携帯性を両立することができた。

もう1つの課題である携帯用ケースに関しては、PK101にも結構仕上げの良いスリムなものが付属している。しかし、それは本体のみの収納には適していても、予備のバッテリーを格納するスペースがない。

そこで、こちらも元々はコンパクトデジカメの収納ケースであるビルト社の“Hoodie”を流用することにした。

“Hoodie”は、弾力性と剛性を兼ね備えたEVA素材のトレーを、ウェットスーツなどに用いられるネオプレンの生地で覆い、内側に起毛素材を配した製品で、メモリカードなどが入るポケットも付いている。この構造が、ちょうどPK101本体と予備バッテリーを分けて収納するのに適しているのである。

PK101には、なかなか仕上げの良いソフトケースが付属しているのだが、予備のバッテリーと共に持ち歩くには少々窮屈で、中で擦れて傷が付く恐れがある。

そこで、伸縮性と耐摩耗性に優れたネオプレン素材で各種ケースを作っているビルト社のコンパクトカメラケース"Hoodie"を流用することにした。背面のポケットが予備バッテリーの収納に適しているためだ。

本来はフード付きパーカなどを意味する“Hoodie”という製品名の通り、カバーを被せれば、プロジェクター本体、予備バッテリー共にしっかり覆われて落ちることはない。クッション性のある素材には、軽い衝撃から内部を守る働きもある。

このPK101は、モバイル環境での“Show & Tell”やプレゼンテーションのほか、iPhoneに保存した動画を旅先で壁や天井に映すなど、様々な楽しみ方を提供してくれる(天井に映す場合には、Modopocketの脚がコの字型になるようにセットして、テーブルの天板に挟み込むようにして留めると良い)。

近い将来、スマートフォンやデジタルカメラにもプロジェクター機能が組み込まれる時代が来そうだが、好みの映像ソースと組み合わせることや、投影スタイルの自由度の高さを考えると、現在のようなセパレートタイプのポケットプロジェクターにもメリットがある。

iPhoneからの映像出力は、今のところ写真のスライドショーと動画再生に限られるが、iPhone SDKには非公式ながらビデオ出力のAPIも用意されており、今後はサードパーティのアプリからの投影も可能になるかもしれない。それまでは、Keynoteで作成したプレゼンテーションをQuickTimeムービーに変換して再生するなど、色々と工夫しながら使いこなしを考えていくつもりだ。

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プロフィール

テクノロジーライター、原宿 AssistOnアドバイザー、自称路上写真家。デザイン、電子機器、自転車、写真分野などの執筆活動のほか、商品企画のコンサルティングを行う。近著に「iPodをつくった男 スティーブ・ジョブズの現場介入型ビジネス」、「iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化」、「43のキーワードで読み解く ジョブズ流仕事術:意外とマネできる!ビジネス極意」、「iPadがつくる未来」(以上、アスキー新書)。「Macintosh名機図鑑」(えい出版社)、「iPhoneカメラライフ」(BNN新社)、「iPhoneカメラ200%活用術」(えい出版社ムック)、「iPhone×Movieスタイル」(寄稿:技術評論社)。

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