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木暮祐一の「ケータイ開国論」

ケータイの最新情報を押さえながら、今後日本のモバイルサービスが目指すべき方向を考える。

「社内LAN」ならぬ「車内LAN」を目指して

2008年4月15日

(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論」はこちら

 筆者は、愛車で移動することが多く、しかも車中で仕事を処理することが頻繁だ。もともと自動車電話好きからケータイの世界に入った経緯もあるせいか、車載の通信機器には徹底的にこだわりたいところだ。自動車電話や各通信キャリアの車載ハンズフリー装置、さらに車載FAXなども完備し、さながら「移動オフィス」なみの装備を自慢してきた。

 ところが、最近は車載向けのケータイ関連オプションがあまりに少なく、寂しい限りだ。自動車電話から派生した携帯電話は、いつしか「ケータイ」となり、クルマとは無縁の存在として社会に根付いている。車載キットを用意している端末など皆無だし、最近では車載充電器を接続してもイルミネーションの常時点灯可能なモデルさえ無くなって来た。悲しい限りだ。

 それでも、何とか工夫して、移動オフィスの通信環境を向上したいという意欲は高まるばかりである。なにしろHSDPAの普及でモバイル環境におけるデータ通信速度は早くなるばかり。これを移動オフィスに取り入れない手は無い。

 筆者が理想とする移動オフィス環境の究極は、「社内無線LAN」ならぬ「車内無線LAN」である(笑)。

 ようするにHSDPA通信機器で外部のネットワークと接続した上、自動車内では無線LAN環境を構築し、まさに「移動しながら複数のPCを無線環境で使う」ことである。

 こういうアホらしいことを考えるのは決して私だけではないだろう。かつてはIPモバイルも同様のコンセプトイメージを提示していた(だから消えていったのか?)。

 ともあれ、そういう「車内無線LAN」環境を構築するための「HSDPA端末」は無いものだろうか? 所詮「折りたたみ型端末」しか興味を持たないわが国の通信キャリアからは、こういう端末が発売されることはまずありえないだろう…(かつてNTTドコモがF2611というルータ型FOMAを出したが、これだけだろう。筆者は入手を試みたが結局入手できなかった。どなたかご不要のF2611をお持ちの方が居れば、ぜひ譲って欲しい)。

F2611.jpg
NTTドコモ F2611。どなかた譲ってください。


 ちなみに海外に目を向けると、やはりそういう発想でモノを作るメーカーがあるようだ。素晴らしい。
 ワイヤレスソリューションを提供するAnyDATA社のラインアップに、なんと「HSDPA無線モジュール内蔵IPルータ ARW-600WK」という商品を発見。北米、韓国などで販売されているようだ。

080414router.JPG
これも一種の「ケータイ端末」というわけ。世界は面白い。


 カタログを見る限り、わが国ではNTTドコモやソフトバンクモバイルが採用しているHSDPA方式でも利用が可能なようだ。すなわち、これにNTTドコモかソフトバンクモバイルのSIMカードを装着し、愛車に設置するだけで、夢の「車内無線LAN」が完成するというわけだ。

 海外では、こういう目的別に機能を絞ったモバイル端末が多数存在する。ユーザーニーズに応じて、様々な端末がラインアップされているのだ。

 ところが、通信キャリアの意向で端末が企画されているわが国の環境では、いつまで待っても、こういう端末は出てこないのだろう。W-CDMA方式も世界で広がりを見せ始めたところで、海外で市販されるこのようなユニークなコンセプトの端末が簡単に輸入できて、わが国で使えるようになったらどれだけ便利だろう(認定・検定の問題など、簡単なことではなさそうだが)。

 ちなみに、イー・モバイルのEM・ONEあるいはS11HTと、WindowsMobile用のルーターソフト(シェアウェア)を利用することで、なんとか「車内無線LAN」は構築できた。必ずしも使い勝手は良くはないが…。もっと簡単なルータ型HSDPA端末が欲しい。

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プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学客員教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『Mobile2.0』(共著)、『電話代、払いすぎていませんか?』など。HPはこちら

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