端末販売と回線契約は分離できないのか?
2008年3月11日
(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論」はこちら)
先月、自宅から徒歩2分圏内にドコモショップが開業した。筆者の住む周辺にはこれまでキャリアショップが無く、契約関連の手続きをする際には、1駅電車に乗る必要があった。こんな近くにドコモショップができて、便利になったことは本当にありがたい。
ところで、筆者はこういったケータイ販売店ができると、どういう系列の代理店が運営しているのかを真っ先に調べることにしている。
ドコモショップ、auショップ、ソフトバンクショップなど、通信キャリアの看板を掲げている専売店も、じつは通信キャリア直営の店舗というのは都道府県に数店舗程度しかなく、その大半は代理店が経営している。たとえば三井物産系のテレパーク、伊藤忠商事系のITCネットワーク、ITX系のアイ・ティー・テレコムなどの商社系代理店、NECモバイリングなどのメーカー系代理店、地域の企業等が参入した独立系代理店など、沿革もさまざまである。
そして、通信キャリアの看板を掲げる専売店は、通信キャリアと直接取引をしている1次店という位置づけになる。ケータイ端末を通信キャリアから直接仕入れ、販売する関係である。さらに街中には、すべてのキャリアを取り揃える小さなショップを見かけることがあると思うが、こういうショップを併売店といい、1次店から端末を仕入れて販売しているので2次店とも呼ばれている。
話を戻そう。私の自宅近辺(東京都目黒区内)にオープンしたドコモショップの運営先を調べたところ、なんとドコモショップの看板を掲げながら、運営しているのは2次店なのだそうだ。これまでauショップやソフトバンクショップでは一部に2次店が経営するケースも存在していたが、関東エリアのドコモショップでは、初の2次店運営となるらしい。先月は、このドコモショップを皮切りに、八王子市や荒川区などでも2次店が運営するドコモショップが開業したそうだ。
筆者は、携帯番号ポータビリティ(MNP)以降、併売店が力を付けていくべきであると考えてきた。すなわちMNPの需要があるのならば、ユーザーはすべての通信キャリアの端末が並ぶ併売店に足を運ぶのではないかと予想したからである。ところがMNPの利用は思いのほか伸びなかった。
昨年はモバイルビジネス活性化プランが策定され、2011年以降のオープンなケータイサービス環境のイメージが描かれた。本当に実現できるのかわからないが、オープンな環境ならば、ユーザーは好みの端末と、好みの通信事業者を自由にセレクトし、組み合わせて利用できる時代になるはず。となれば、ここでもすべての通信キャリアの端末を扱う併売店こそが注目されていく世の中になると信じていた。
ところがまた予想は崩れ去り、モバイルビジネス活性化プランを逆手に取られた結果となってしまった。すなわち昨年11月以降、販売奨励金見直しによって端末価格は一気に引き上げられた。このためNTTドコモは割賦販売の仕組みを導入し、12回、または24回の分割で端末を購入できるようにした。割賦販売では、販売店店頭で価格差をつけられるのは頭金だけ。実際には販売店ごとに価格差を出すのは至難の技となった。ようするにどこで買っても値段はほぼ一緒という状況になってしまった。値段が一緒なら、併売店など利用せず、大半のユーザーはドコモショップや量販店に流れてしまうだろう。案の定、NTTドコモを取り扱っていた併売店は大打撃を受けることになったのだ。
その救済案として考えられたのが、優秀な2次店にはドコモショップの看板を与えようというこの施策なのだろう。しかし、これで本当に大丈夫なのだろうか。NTTドコモに関するところでは、先週の三菱電機撤退、さらにソニー・エリクソンもドコモ向けの商品化計画の見直しを図るなど、端末メーカーが手を引き始めているところだ。端末メーカーの動きの本音はわからないが、通信キャリアによる締め付けが極限に達した結果のように勘ぐるのは筆者だけだろうか。
そもそも、ケータイ業界はオープン化に向かおうとしている中で、端末販売に関しては時代に逆行し、通信キャリアの統制が一段と強められているように感じる。ケータイサービスを利用する上で、通信キャリアの窓口は必須であるし、それが身近なところにあるのは大変ありがたいことだ。しかし通信キャリアのサポートと端末販売は、できれば切り離して欲しいと考える。SIMカードが普及した現在、端末を購入する際に契約手続きを省くことは不可能ではない。どうしてわが国は、いつまでたっても端末単体で気軽に購入できるようにならないのだろうか。
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木暮祐一の「ケータイ開国論」
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