NTTドコモの分離プラン、絶好調
2007年12月18日
(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論」はこちら)
11月26日より905iシリーズの発売を開始したNTTドコモは、同時に端末と回線契約を分けるべきというモバイルビジネス活性化プランの指針に沿った「新販売方法」を導入、これが絶好調のようだ。12月17日には、新販売方法のうち端末価格が高く、代わりに基本使用料が安くなる(いわゆる「分離プラン」)、「バリュープラン」で購入したユーザーが100万契約を突破したことを公表した。
総務省のモバイルビジネス研究会で分離プランが議論されていた頃は「端末価格が高くなったら売れないので市場は衰退するし、おまけにその影響は周辺ビジネスにまで広がる」などといった憶測やTV報道も飛び交っていた。ところが蓋を開けてみると、NTTドコモの場合、端末の表示価格こそ6万円台となったものの、ソフトバンクモバイルと同様に割賦販売を導入、結局最新機種が0円に近い価格で「持ち帰れる」ことになり、端末価格が高くなることを懸念していた関係者は拍子抜けしているところではなかろうか。
NTTドコモによれば、新販売方法がウケたのか、それとも905iシリーズに人気があるのか分からないとしながらも、前モデルの904iシリーズの登場時と比較して1.6倍程度の売れ行き(現時点)だそうで、ともかく好調なのだという。そして、新たに購入するユーザーのうち、この分離プランというべき「バリュープラン」を、なんと90%以上が選択しているのだという。NTTドコモの場合、従来と同じ購入方法である「ベーシックプラン」を用意しているが、これを選択するのはごくわずかということらしいのだ。
そして「バリュープラン」を選択したユーザーのうち、半数以上が24回払いを選択しているという。具体的な数字は聞き出せなかったが、残りのバリュープラン選択者約半数のうち、かなりの数が「一括払い」を選択しているそうだ。これは都心部や、大手量販店で購入する場合に多く見受けられるそうで、これらの情報から想像できるのは、クレジットカードや量販店のポイントを貯めるために一括で購入しているのだろうと考えられよう。
分離プラン導入において、筆者が一番懸念しているのは、街中の併売店等への打撃だ。割賦販売が浸透すると、端末の販売価格に差を付けることが難しくなる。NTTドコモの場合は、割賦金額があらかじめ定められ、差額分として頭金が必要で、販売店によってはこの頭金部分で価格差を付けられる余地は残されているが、とはいえそれほど価格差が無ければキャリアショップや量販店等に足が向いてしまうだろうと心配をしていた。
実際に、905i販売開始以降(分離プラン導入以降)、併売店での販売の伸びは鈍化してしまっているようだ。販売店にとっては顧客の奪い合いが一層激しくなるわけで、今後も予断は許されないだろう。
この割賦販売に期待したいのは、今後NTTドコモの端末以外にも適用範囲を広げてもらいたいこと。たとえば、NOKIAなど海外の端末メーカーブランドのケータイを販売店が独自に仕入れ、それを電話料金合算の割賦で購入できたら、私たちユーザーの選択の幅がもっと広がるだろう。そういう売り方にも期待したい。
また、端末価格が限りなく定価に近づくことになるわけで、それであるなら現状のSIMロックも解除していただいて、国外では現地のSIMカードを挿して利用できるような懐の深さも見せてほしい。ただ、この問題は簡単に解決できるものではない。現在のケータイサービスは回線契約と端末が結びつくことで利用できるものが大半だ。iモード等のコンテンツサービスや、メールサービス、おサイフケータイなど、SIMカードを挿し変えると使えなくなるサービスだらけだ。そういう点でSIMフリーとなり、他のキャリア(国内外)の回線契約で利用する場合に、端末機能やサービスをどこがサポートするのか、などの懸念があるようだ。
しかし総務省のモバイルビジネス活性化プランでは、課金・認証のプラットフォームまでもオープン化させ(セキュアに)、その上で端末やネットワークをユーザーが自由にセレクトして利用できる環境を目指している。ようやく販売方法にメスが入れられ、業界が新しい方向性に向けて動き出したところだ。端末も、プラットフォームも、これから徐々にオープン化の波が押し寄せてくることだろう。そういうケータイの利用環境が育まれてくることに大いに期待したい。
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