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木暮祐一の「ケータイ開国論」

ケータイの最新情報を押さえながら、今後日本のモバイルサービスが目指すべき方向を考える。

「バリ3」表示のホントのとこ

2007年12月12日

(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論」はこちら

 今回は「開国論」からちょっと脱線した話。
 ケータイディスプレイ内に必ず描かれているアンテナマークが気になる今日この頃…。電波状態を示すこのアンテナマークのなのだが、はたしてどういう基準でバーが表示されているのだろうか。このアンテナバーが3本立つことを、電波状態が良いという意味で「バリ3」などというのだが、果たして本当に電波状態が良いといえるのだろうか?
 私はそんな素朴な疑問を以前から抱いていたのだが、調べれば調べるほど、このアンテナマークの表示基準は曖昧なようである。


これは個人所有の韓国キャリア端末の表示例。韓国端末はバリ5とかバリ6表示が多いよね

 10年以上前の話…、もういい加減時効だろうから、当時の関係者談を公表してしまおう(許してください)。その当時、私は銀座1丁目にある某出版社に勤めていた。私のデスクはやや奥まったところにあったために、ケータイの電波の入りが今ひとつだった。当時メインに使っていたのがTキャリアのケータイだった(来春にはサービス終了になるところ)。このキャリアだと、私のデスクにおけるアンテナマークの表示は1本から2本を行ったり来たり。もちろんそれでも80%程度の確率で発着信はできていたので実用上は問題は無かった。私はたびたび端末を買い換えていたが、買い換えて端末メーカーが変わっても、アンテナ表示自体に大きな変化は見られなかった。
 ところが、である。あるタイミングでケータイを買い換えた時から、同じデスク上でのアンテナ表示が「バリ3」になった。おやまあ、電波状態が良くなったの? 半信半疑で当時Tキャリアに勤めていた友人に聞いてみた。

私 「もしかして銀座1丁目付近に基地局打った?」
友人「いや、その周辺は特に基地局は増えてないよ」
私 「でも買い換えたら、バリ3になったよん?」
友人「じつは…、各端末メーカーにアンテナ表示を甘くするようにお願いしたらしい」

 なぬ? そんなことだったの?
 ようするに、一律にアンテナ表示を甘くしてしまえば、そりゃどこに行ってもバリ3だよね。そう言われてみると、確かにそれ以前の端末ならアンテナマーク1~2本でもほぼ発着信できていたのに、それ以後の端末は1~2本といえばほとんど通話が成立しなくなった。また、移動中などアンテナマークが増えたり減ったりしたところでも、ずっと「バリ3」のまま表示されるようになった。あくまで端末上の表示が変わっただけであって、実際の電波状態が改善されたわけではないのだ。
 その後、ケータイ関連のネットコミュニティなどで「Tキャリアの電波状態がずいぶん良くなった」とか「エリアが広がったのでは?」みたいなユーザーの声が増えていたが、それってみんな騙されているわけだよね。アンテナ表示を甘くしただけでこれほどイメージが変わるものなのだ。

 で、なぜ今さらひと昔前の関係者談を持ち出してこんなことを書いているのかというと、どうも最近のケータイ端末のアンテナマークも「怪しい」と感じるようになってきたのだ。どのキャリアとはいわないが…。
 読者の皆様も、一度ぜひご自身のケータイ端末で試していただきたい。その昔のケータイは、アンテナ表示1~2本でも発着信はできたが、最近のケータイは3本立っていても発着信が怪しいことがある。2本になってしまったら、ほとんどの確率で発着信ができない。そんな端末のアンテナ表示を見て、「このキャリアは電波がいい」だなんて短絡的に考えてはいけない。皆さん、「バリ3」にはくれぐれも騙されないように。

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プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学客員教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『Mobile2.0』(共著)、『電話代、払いすぎていませんか?』など。HPはこちら

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