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木暮祐一の「ケータイ開国論」

ケータイの最新情報を押さえながら、今後日本のモバイルサービスが目指すべき方向を考える。

auの新施策、本当に得なのか?

2007年12月 4日

(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論」はこちら

 ついに「INFOBAR 2」発売。我慢できず…、私も初日に購入してしまいました(笑)。この「INFOBAR 2」、デザインは秀逸だが素材感はいまいち。どうしてauの端末は、こういったプラスチッキーな仕上がりになってしまうのだろうか。それだけが残念。INFOBAR 2はぜひともロングセラーモデルにしてもらいたいし、さらに追加バリエーションでホンモノの金属素材モデル(シルバー、ゴールド、プラチナ…、なんてあったら良いな)なんて登場してくれたらかなり嬉しいかも(アンテナ内蔵なので技術的に不可か?!)。

 さて、そんなことよりも、この買替え(買増し)を機に、auの「買い方セレクト」を使うことになってしまったのだが、これが正直なところ、「フルサポートコース」で購入したとしても、端末価格も電話料金も従来並みで、万が一の解約&機種変更時に手数料をユーザーに負担させるという納得のいかないものなのである。

 11月11日以前は、機種変更の場合7カ月以降、13カ月以降、24カ月以降という区分で販売価格が定められていたが、11月12日以降は7カ月以上使っていさえすれば「フルサポートコース」と「シンプルコース」を選べる。これ自体は分かりやすくなって良い。ところがよくよく試算してみると、au推奨の「フルサポートコース」でさえ、「従来の7カ月以降」買い替え価格並みの設定となっている(当時と現在の最新機種の価格比較で)。

 従来なら、機種変更後、また気が向いて買い換えようが、解約しようが構わなかったわけだが、今後「フルサポートコース」で端末を購入した場合は2年未満の機種変更および解約では「解除料(最大18,900円)」なる手数料が取られることになる。電話料金自体は従来と変わらないのに、どうにも納得がいかない。総務省が打ち出した分離プランは、端末価格が高くなる代わりに基本使用料が引き下げられ、長期的に見ると(おそらく2年が目安)ユーザーが得をするものであるべきなのだが、auの場合は今回の総務省の指導を逆手に取って、実質的にユーザーに課すペナルティーを増やした格好である。2年の縛りをつけるなら、もっと購入時端末価格を引き下げるべきと考える。「フルサポートコース」選択時に従来の「24カ月以降」機種変更価格相当で買えるならまだ納得がいくわけだが、結局従来の「7カ月以降」価格並みとは…。

 ちなみに端末価格がさらに21,000円高くなる代わりに基本使用料が安くなるという「シンプルコース」にも首をかしげる。家族割のような割引オプションは付けられない上、専用プランは極端にケータイを使わないか(待受けぐらいにしか使わない人)、逆にやたら通話料を払っていたヘビーユーザーぐらいにしかメリットが無い。つまりほとんどのユーザーは「フルサポートコース」を選ばざるを得ない。しかも「フルサポートコース」を選んでしまうと、番号ポータビリティーで他のキャリアに逃げられないような「解除料」を盾に2年間しっかり縛りつけられるという有様。

 以前のau(というかそれ以前のセルラー、IDO時代は特に)は独自の技術を上手にサービスに昇華させ、ユニークな端末や機能を次々に打ち出し、ユーザーをワクワクさせてくれた。料金サービスについても、ユーザー側へのメリットを最大限に考えてくれたお得な割引パック等を次々に生み出してくれていた(たとえば、私の場合5000円で15000円分通話できたIDOの「話王」を愛用してました…)。ところが最近はどうも「一見お得そうに見えてもARPU(加入者1人あたりの月間売上高)を下げないような工夫」ばかりに力を注いでいるようで納得がいかない。

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プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学客員教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『Mobile2.0』(共著)、『電話代、払いすぎていませんか?』など。HPはこちら

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