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木暮祐一の「ケータイ開国論」

ケータイの最新情報を押さえながら、今後日本のモバイルサービスが目指すべき方向を考える。

「スマートフォンの定義」をあらためて考える

2007年11月27日

(これまでの 木暮祐一の「ケータイ開国論」はこちら

 私はこれまでたびたびスマートフォン関連の記事を執筆するにあたって、その定義を探ってきたのだが決定打に値するものを見つけることができずにいた。たとえばネット上の用語解説には「コンピュータを内蔵し、音声通話以外に様々なデータ処理機能を持った携帯電話。電子メール機能やWebブラウザを内蔵し、インターネットに接続することができる携帯電話などがこれにあたる」というようなことが書かれているが、これを定義にするなら日本で利用されている大半のケータイが「スマートフォン」になってしまう。

 調べれば調べるほど「スマートフォン」の定義はあいまいなことが分かってきた。しかも地域によってもそのイメージや捕らえ方が違うようだ。たとえば、北米ではもっぱらBlackBerryのような「アルファベットのフルキーボードを備えたケータイ」という認識が強い。一方で西欧ではNOKIAが中心となって推進しているSymbian OSを搭載した高機能ケータイ端末を総称するものとして使われてきた。NOKIAの場合、一般的なケータイの形状を持つNシリーズ(ソフトバンクからも705NKとして発売されている)からCommunicatorのようなハイエンド通信機器に至るまで、すべて「スマートフォン」という位置づけでラインアップしている。実際にソフトバンク705NKなどのNOKIA製端末には、PCと接続するためのケーブルやPCとデータリンクさせるためのソフトウェアも同梱されているのだ。

 日本では、北米と西欧の考え方をミックスさせたような定義が浸透しており、スマートフォンといえばケータイ機能も備えたPDAというような認識が強い。ウィルコムからW-ZERO3が登場して以降は、フルキーボードを搭載した端末こそ「スマートフォン」のイメージに合致しているようだ。

 「スマートフォン」という言葉が知られるきっかけとなったのは、米Microsoft社が開発した携帯電話用プラットフォーム「Microsoft Windows powered Smartphone 2002」(Stinger)の登場からだと言われている。Webの閲覧やメールの送受信、PIMやマルチメディア対応機能を備え、これをMicrosoftが携帯電話向けに提供を始めた。今、日本でもスマートフォンらしいスマートフォンに搭載されているWindows Mobile OSの源流である。ただし、一概にWindows Mobile OSを備えた端末だけが「スマートフォン」というわけではない。

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 さて、去る11月23日、東京・秋葉原のUDXビルにて、アスキー社主催「秋葉原週アスまつり」というイベントが開催された。このイベントの企画のひとつとして、私が座長を務める形で「頑張れスマートフォン! スーパーユーザー車座座談会」というパネルディスカッションを実施した。1時間半に渡るステージには、伊藤浩一さん、石川温さん、kzouさん、memn0ckさん、山田道夫さんというパワースマートフォンユーザーをお招きし、各位のスマートフォンの利用体験や使いこなしなどを熱く語っていただいた。来場者もスマートフォンに関心が高いユーザーが終結してくださったようで、大変な盛り上がりをみせた。

 せっかく、これだけ多方面で活躍するパワースマートフォンユーザーが一同に会するので、それならばと…、ここで「スマートフォンの定義」についても議論してみることにした。登壇した各位から色々な意見も出たし、また会場からもアイデアが寄せられた。


11月23日に秋葉原UDXで開催されたパネルディスカッション風景。一番左が筆者。

 ずばり結論を披露すると、スマートフォンとは「単体で通信・通話ができて、ユーザーレベルで自由にアプリケーションの追加やカスタマイズできる携帯情報端末。また、操作性が一般のユーザーに親しみやすいインターフェイスを持つことも条件」ということになった。たとえばフルキーボードやタッチパネルが備えられているとか、そういう外形上の話はどうでも良い。重要なのは「ユーザーレベルで自由にアプリケーションの追加やカスタマイズ」が可能であることなのだ。この一文を入れることで、一般的にわが国で普及しているケータイとは線引きをすることができるのである。

 すなわち、わが国の一般的なケータイ端末は、確かに便利で使いやすくて、誰にでも操作できる素晴らしい一面があるのだが、その一方で何かオリジナルのアプリケーションを提供しようと思っても、さまざまな制約により困難を極めてしまう。しかもセキュリティが高く、カスタマイズできる範囲はきわめて限られる。こういった制約に不満を持っているユーザーがスマートフォンに期待を寄せているというわけなのだ。登壇した各位や、来場された方々とは、このスマートフォン新定義を積極的に活用していこうと誓ったのであった。

 ちなみに、空メールとケータイサイト構築ASPを活用して、簡易投票システムを用意、パネルディスカッションの中で来場者の方々に「欲しくなったスマートフォンは?」の投票を募った。結果は以下のとおり。このイベント、Powerd by Microsoftだったんですけど大丈夫でしょうか…(笑)

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プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学客員教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『Mobile2.0』(共著)、『電話代、払いすぎていませんか?』など。HPはこちら

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