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木暮祐一の「ケータイ開国論」

ケータイの最新情報を押さえながら、今後日本のモバイルサービスが目指すべき方向を考える。

各キャリアの新料金プラン雑感

2007年10月30日

私の月末恒例行事といえば、所有電話回線の整理である。月半ばから続々と届く電話料金請求書をヒヤヒヤと開封しながら、不要回線の整理や、料金プランの見直しなどに励む。仕事柄、全キャリアと回線契約を結んで使用しており、それも端末の評価などのためには1キャリアで複数の回線を所持する必要も生じる。

あまり使用していない回線は、なるべく安い料金プランを設定し、パケット割引関連のオプションなども付けずに回線を維持するようにしている。ところがこのような普段使わない機種も、場合によってはコンテンツやアプリなどの検証のため泣く泣く使わざるを得ない時がある。パケット通信料を想定しながら操作しているものの、時には恐ろしい請求が来て呆然とすることしばしば。たとえば何もパケット割引のオプションを設定していない場合、着うたフルの楽曲をたった1曲ダウンロードするだけで数千円のパケット通信料となってしまうのだ。

逆に、頻繁に持ち歩く回線には「パケ・ホーダイ」などの定額オプションを付けている。auやソフトバンクモバイルのパケット定額オプションは月額1,000円程度から上限が4,000円程度という体系になっているので大変ありがたいが、NTTドコモの場合は毎月3,900円の支払いが必須となってしまう。月によって、パケット割引オプションを設定していない回線で1万円超えの請求が来てしまって、逆にパケ・ホーダイを付けている回線の通信料が数百円だった、なんて請求書が来ることもあって、こうなると本当に泣くに泣けない感じだ。

だいたいパケット通信料の基準単価自体を見直すべき時期に来たのではなかろう。現在の1パケット0.2円(FOMA)~0.3円(mova)という料金設定は、10年ほど前の28.8kbpsの速度でデータ通信できたDoPaスタート時から大きく変わっていない。通信速度は今や下り最大3.6Mbps、DoPa初期から比べると100倍以上の速度となり、流れるデータも当時とは比べものにならない大容量コンテンツが増えている。割引で割安感を打ち出すのではなく、課金基準自体を見直すべきだと思う。


本文とあまり関係ないが、自動車電話/ショルダーホンは「ドニーチョ」契約のまま健在だった(笑) こういった、もう名称も忘れられたような旧プランを使い続けるユーザーは、キャリアからは嫌われるようだ。

さて、auに続きNTTドコモも11月下旬以降から導入する新料金プランを発表した。共に総務省のモバイルビジネス活性化プランを受けて、販売奨励金に該当する上乗せ部分を軽減した割安プランを新たに設定し、ユーザーが「高い端末を購入する代わりに基本使用料を安く抑えるか、あるいは安く端末を購入する代わりに従来のプランに使い高めの基本使用料を払うか」を選択できるようになる。

とはいえ、色々と細かい条件やお約束事が設定されているようで、分かりにくさは相変わらずという感じだ。いったいどのプランを選べば得なのかと、自分自身のケータイ利用状況などに照らし合わせてプランを見直そうと思っても、結局はよく分からないという人がほとんどだろう。ソフトバンクモバイルは昨年から「ホワイトプラン(月額980円)」と、「端末の割賦販売」を導入しているが、結局これが一番分かりやすい。

それよりも今回の2キャリアの新料金プランで頭に来たのは、長年使っている旧ユーザーは、端末を買い換えない限り新プランに移行できないことだ(auは7ヶ月以上同じ端末を使い続けていればフルサポートコースへは移行できるようだが)。

本来私は、端末購入と回線契約は別々に考えるべきと思っているのだが、新料金プランでは買い替え(買い増しや機種変更など)か新規契約で新端末を購入した場合に適用となるそうだ(NTTドコモの場合は905i以降の機種でなければダメ)。もちろん私は新端末も買うが(買わざるを得ないが)、大切に使いたい旧機もたくさん愛用している。上記ドニーチョ契約の端末は9年8ヶ月もの間、機種変更することなく使い続けているわけだ(ちなみにドニーチョの場合は家族割も組めないし、継続利用割引も5年超えの15%引きという旧施策のままである。今さら何にもメリットないのは分かっているが)。

2005年11月の現行料金プラン施行の際には、ドニーチョから現行プランに変更することも考えたが、家族割だの、その他モロモロの施策でようやくドニーチョ基本使用料より安くなる、という押し付けがましさ、あるいは正価自体が疑問だらけな電話料金に納得いかず、プラン変更も見送っていた。今回さらに「買い換えなければ安いプランは使わせない」という施策に驚き、この自動車電話はドニーチョのまま最後まで使うことを決心した次第である(笑)。


またまた本文とあまり関係ないですが…、最近話題にすらならなくなってきたツーカーも長年愛用中。ご覧のとおり142ヶ月も継続使用している。最も基本使用料が安いプランのつもりだったが、今となってはかなり高く感じるかも…。

今回、各キャリアの新料金プランにより、最低基本使用料が概ね1,000円程度にまで引き下げられた。これはこれで評価しよう。とくにNTTドコモの場合、タイプSSバリューなら1,000円分の無料通話が付いて月額基本使用料が1,050円になる(ファミ割MAX50、またはひとりでも割50を組み合わせた場合)。実質的に「基本使用料無料」というところまで来たわけだ。とはいえ、今回の新料金プランは端末価格上乗せ分を除外(軽減)しただけであり、別途端末は購入した上ででの条件となっている。今は料金部分だけでマスコミが踊っているが、実際に端末価格がどうなるか楽しみ(?)である。それなりに高価になるだろうし、それを割賦で分割してみたら、既存の基本使用料よりも高くなってしまった…、なんてことが起こるかもしれない。

ちなみにNTTドコモの2006年度の営業利益は7,735億円! 2002年ごろだったか1兆円を超えていた時期もあった。その後新規加入者頭打ちやら電話料金引き下げやらで収益は減っているということだが、まだまだ電話料金は引き下げられるだろう。利益1兆円超えの日本企業といえば、たとえばトヨタ自動車などが挙げられるが、トヨタの場合、数百万円する製品(自動車)を世界中で製造・販売した上での収益である。片や、日本国内の通信事業のみで、これだけの営業利益を上げているというのは一体どういうことだろう。しかも他の参入が容易ではない「免許事業」においての話なのである。

ということで、まだまだ引き下げられる余地はありそう。ますます各キャリアの競争が活性化し、利用者に利益が還元されていくことを望みたい。

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NTTドコモのARPU(月間電気事業収入・加入者一人あたりの月間売上高)の推移(NTTドコモ年度事業データから) 年々ARPUが下がってはいるが、それでもまだ大きな営業利益が出ているのも事実。

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プロフィール

1967年東京都生まれ。携帯電話研究家、武蔵野学院大学客員教授。多数の携帯電話情報メディアの立ち上げや執筆に関わってきた。ケータイコレクターとしても名高く保有台数は1000台以上。近著に『Mobile2.0』(共著)、『電話代、払いすぎていませんか?』など。HPはこちら

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