福島第一原子力発電所安定冷却への提案(1)
2011年4月22日
○汚染水と海を活用すれば問題は解決する
福島第一原発では、放水、圧力容器への注水、電源の回復などによって、一見事態が改善されつつあるように見える。だが実際には炉心が安定したとは言い難い状況が続いており、放射能の放出も続いている。緊急の課題は放射能を閉じ込めることだが、それを阻んでいるのが、建屋内に大量に溜まった汚染水の存在だ。
そこで、汚染水対策と平行して、または汚染水の漏出を放置したままで、炉心を安定的に冷却する方法を考えてみた。外部に大容量の汚染水タンクを準備することができれば、汚染水がどんどん出て来ても大丈夫ということになる。さらに、出て来た汚染水を冷却に使えば、これ以上汚染水が増えることも無い。
「その大容量のタンクが用意出来ないから困っているんだろ」というご指摘を受けそうだが、ちょっと待って欲しい。原発の真ん前に巨大な容量の水溜まりがあるではないか。そう、海である。海と汚染水を活用して、簡単な冷却系を作ろうというのが、この提案の趣旨だ。
なおこの提案は、発表や報道等で入手可能な情報を基に検討したものであり、限られた情報と知識に基づいているため、大きな問題を見落としていたり、間違いが含まれている可能性も高い。多くのご意見ご批判をいただき、より有効な提案にしたいと思っているので、ご協力いただければ幸いである。
○現状では放射能の放出が続く
放射能を閉じ込めるためにもっとも優先されるべきは、炉心の冷却だ。しかし露出している燃料棒を水没させようと、注水量を増やしても水位が上がらず困っているのが現状だ。外から注水した水は、片方では放射能を含んだ蒸気として放出され続け、もう一方では、汚染水として漏れ出し続けているからだ。
注水すればするほど建屋内の汚染水が増えてしまう。これがあふれれば、また大量の放射能が放出されてしまう。放射能を閉じ込めるためには外からの注水をやめ、今内部にある水だけで除熱しなければならない。つまり閉じた冷却ループを構築する以外に、放射能を閉じ込める方法は無い。
○現在考えられている対策は実現性が低い
そこで東電は、既設の冷却用機器類を動くようにしたり、格納容器からの漏れを止めるために、この数万トンの汚染水を何とかして排出しようとしているようだ。しかし汚染水対策だけで既に1カ月が経とうとしており、その間も放射能の放出が続いている。何しろ既に数万トンの汚染水があり、さらに常に注水が続いている現状では、この方法では終わりが見えないことは明らかだ。
東電も冷却のために色々な方法を検討しているようだが、残留熱除去系や主循環系など、既設の冷却系は全て主要機器が汚染水に水没している。汚染水を汲み出しても、また格納容器から漏れ出してくるし、機器類が正常に動くかも分からないので、これらの回復はほとんど不可能に思える。全く新しい冷却系を作る方が現実的だ。
格納容器を水で満たし、圧力容器ごと燃料棒を水没させ、冷却する案もある。しかし格納容器に大量の水があると大きな圧力がかかる。格納容器の漏水が増えたり、大きな穴が開いてしまって大量の汚染水が排出されると手の付けようが無くなってしまう。
空冷の冷却塔を設置する案なども報道されている。しかし空冷の冷却塔は巨大なものだ。排出すべき熱量が定常運転時の1%以下と言ってもかなりの大きさになる。建屋近くにその広さがあるとも思えないし、建設に時間もかかるだろう。また例え冷却出来たとしても、格納容器から漏れ出す汚染水の解決にはならない。何しろ既に数万トンの汚染水が溜まっているのだ。
○汚染水で手間取るより、海を活用してすぐに炉心の冷却を
放射能の放出を減らす現実的な対策は、汚染水があるままで炉心の冷却を実現する方法を考えることしかないことが、理解してもらえただろうか。そしてその方法として、海を活用することを提案したい。福島第一原子力発電所は海に接した立地であり、事故後一時海水で冷却したことからも分かるように、海との水のやり取りが可能だからだ。
汚染水を直接海に放出するような危険な提案ではない。福島第一原子力発電所に面した海岸は、防波堤で囲まれた港になっている(次ページ図参照)。この港を原子炉冷却系に取り込んでしまうというのが、提案の主要部分だ。この方法なら、冷却と汚染水対策を同時に進めることができる。つまり炉心を冷却する一番早い手段と考えている。
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合原亮一の「電脳自然生活」
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- 4.具体的な工程2011年5月31日
- 3.本提案のメリットとデメリット2011年5月31日
- 2.具体的な提案2011年5月31日
- 1.提案の骨子2011年5月31日