原発事故で考えておきたいこと(1)
2011年4月14日
気になっていることは沢山あるのですが、残念ながら書いたり分析する時間が絶対的に足りないので、まずは要点だけをまとめてみました。余裕があれば、個別のテーマに付いて詳しく書きたいと思っています。
○福島第一原発の現状
僕が前の福島原発事故で今気になっていることで書いた心配は、残念ながらほとんどがその通りになってしまいました。ただ、放射能の放出がそれほど測定されていないという点では、以前より状況が改善している面もあります。また冷却水の注入体制も維持されているので、温度上昇の可能性も少なくなりました。一方、炉心の水位は依然低く、燃料集合体の破損が進行する可能性も続いています。燃料棒が壊れて行くと、再臨界のリスクも上がって行きます。
前回現状維持は内部の悪化だと書いた通り、炉心内の状況はじりじりと悪化している可能性が高いと思います。既に放射能を閉じ込めるほとんどのバリアは破壊され、1号機は圧力容器と格納容器が部分的に、2号機は建屋が部分的に、3号機は格納容器だけが部分的に持ちこたえているに過ぎない状態に見えます。
総合的に見て、残念ながら状況は改善されていません。現状維持を続けることも保証出来る状態ではありません。それが出来たとしても、大量の冷却水注入が必要で、大量の汚染水を生み出すことになります。大気に放出される放射能を抑制出来ても、その分海に放出される放射能が増えることになります。何とか悪化を食い止めている、または悪化速度を遅らせている、というのが現状だと思います。
○今後の改善の見通しはあるのか
正直なところ個人的には、何とかやってもらうしか無いという、祈りに近い気持ちです。技術的には、冷却を確保しつつ放射能汚染を食い止める方法はいくつか考えられます。問題は時間とリソース、判断です。どの方法を取っても、何らかの痛みを引き受ける必要があります。それはお金、放射能の放出量、作業員の被曝などです。
これまでのところ、どれも避けようとして、結果的に被害の拡大、長期化を招いている面が大きいように感じています。もちろん最終的にはその組み合わせを最小化することが目的です。問題は、短期的なマイナスを避けようとしては長期的なマイナスを拡大しているように見えることです。
もっと早く海水を注入していれば。もっと早く水素を排出していれば。もっと早くベントを行っていれば。もっと早く低汚染水を排出していれば・・・。それぞれの段階では、色々と事情があったのでしょう。しかし今後については、後でしまったということが無いようにしなければなりません。
限られた情報からの判断ですが、現在個人的には、海をせき止めて、そこにあらゆる汚染水を排出し、全ての設備を可能な限り洗浄してサイトの線量を引き下げ、迅速な対策を取るべきだと考えています。
現状で考えられる技術的対策も、各設備を点検しなければ、本当に実現出来るかはわかりません。炉心冷却対策以外のことに時間を使っている余裕はないのです。残念ですが多少のことには目をつぶって、最悪の事態を引き起こすリスクを引き下げることに専念するべきです。その判断が出来るかの瀬戸際にあるのではないでしょうか。
細かい説明は省きますが、復水器が満水と分かった状態で、汚染水を排除する最速の方法を選ぶべきだったと思います。今の玉突きでも間に合うかもしれませんが、時間的余裕がある方が対策の幅が広がります。
僕が20年前に、当時のチェルノブイリ事故をきっかけに、万一日本でも大事故が起こった場合を想定した避難/対応マニュアルを、MedicomさんがiPhone/iPad向けの電子書籍にして下さいました。もう10日ほど前のことですが、紹介する時間がありませんでした。再短時間で被曝を最小化する判断をするためのものです。原発事故対策で内容を見直すどころか校正の暇も無く、全てお任せで発行していただきました。今の時代には合わない点やお恥ずかしい点もありますが、基本的な部分は問題無いと思います。115円ですが、収益は全て寄付されますので、僕の取り分はありません。
無料のものをご希望の方は、大きいので見にくいですが、グラフィックファイルで上げた原発事故サバイバルハンドブックか、それをある方がPDFにして下さったこちらをご利用ください。
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