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藤田郁雄の「サバイバル・インベストメント」

新鋭のプログラマーが、現代ポートフォリオ理論をhackすることで、経済的自立の構築を模索する。

第7回 投資タイミングの分散テクニックを考える

2008年1月22日

(これまでの 藤田郁雄の「サバイバル・インベストメント」はこちら。

2008年に入って最初のエントリーになりますが、世界各国の株式市場は早くも暴落に見舞われました。アメリカ金融機関の決算を経て、ダウ平均株価は年初から1,100ドル以上も急落し、また代表的な株価指数S&P500は、市場が大きく低迷した2002年以来となる週間下落率(マイナス約6%)を記録しています。私の公開している資産も、昨年末には58.4万円(プラス10.8%)あった利益が直近では21.3万円(プラス3.9%)にまで落ち込んでいますから、ほとんどの個人投資家は新春早々にもかかわらず落胆させられているのかもしれません。

このように、有価証券市場にはリスクが存在します。もしもリスクを取り除くことが「暴落する前に売る」ことであるならば、これは不可能なことだと私は断言することができます。しかし、リスクをコントロールすることで「損失を和らげる」ことであるならば、これは可能なことです。具体的な方法のひとつに、投資タイミングを分散することが挙げられます。

■ 投資機会の分散テクニック(ドルコスト平均法)

資産運用の教科書で必ず出てくる言葉に「ドルコスト平均法」があります。これは、値動きのある有価証券を一定期間ごとに一定金額づつ投資すると、価格が高い時は少しの量しか買えず、価格が安い時には多くの量が買えることになるので、一定量づつ投資するよりも平均取得額が低くなる(*1)ということです。では、実際に右肩上がり(上昇時)と右肩下がり(下落時)の相場展開でシミュレーションしてみましょう。

1. 右肩上がりの場合

毎回10,000口づつ積立てていくと合計50,000口となり、投資金額の合計は¥55,000になるので、10,000口あたりの平均取得額は¥11,000となります。
一方、毎回¥10,000づつ積立てていくと投資金額の合計は¥50,000となり、口数合計は46,226口となるので、10,000口あたりの平均取得額は¥10,816となります。
つまり、一定量の購入よりも一定金額での積立(ドルコスト平均法)の方が平均取得額は低くなるので、リスクを減らすことができます。

2. 右肩下がりの場合

毎回10,000口づつ積立てていくと合計50,000口となり、投資金額の合計は¥62,000になるので、10,000口あたりの平均取得額は¥12,400となります。
一方、毎回¥10,000づつ積立てていくと投資金額の合計は¥50,000となり、口数合計は43,530口となるので、10,000口あたりの平均取得額は¥11,486となります。
このケースでも、一定量の購入より一定金額での積立(ドルコスト平均法)の方が平均取得額は低くなってリスクを減らすことができます。

■ 現金を残して投資する

次は、少し考え方を変えて「投資タイミングを分散する」=「現金を残して投資する」と捉えてみようと思います。
専門家たちの間では、現金を残して投資を行ういうことは効率を下げているだけのことと考えられています。つまり、リスクを抑える代わりにリターンも失っている。たしかに机上の理屈ではその通りで、ドルコスト平均法に有利も不利もありません。それでは、どのように相場が動いているのか、過去のデータからシミュレーションしてみましょう。
・1945年〜2000年の株式:現金の各比率における運用成果(アメリカ)

すべて株式に投資すると最終的に得られた利益は最大になりますが、投資期間661ヶ月間のうち42ヶ月間はマイナス5%以上の損失を(あの1987年10月にはマイナス21.54%の損失を)受け入れる必要があります。一方、現金と株式を半分づつにした場合、利益は9.5%/月に減りますが投資期間661ヶ月間のうちマイナス5%以上の損失を受けたのは3ヶ月間で済んでいます。

過去のデータから、現金を残して投資することはリスクを抑える代わりにリターンも失っているということが分かると思います。しかし、使いきれない程の利益を目指しているならばまだしも、( 第1回第3回で挙げたように)これからの日本で穏やかに暮らしていくのにあたっては、約6%/年程度の利益で事足りるはずなのです。目標としている利益率が市場平均そのものであれば、ドルコスト平均法を用いてリスクを抑えるのは効果的な方法だと思います。

* * * * *
(*1)端的に説明するならば、算術平均>幾何平均

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プロフィール

1976年生まれ。経営者、個人投資家。ハンドルネームは「銀座人」。「市場は長期的には効率的」という持論を実証すべく、資産運用の成果をウェブサイト上に公開している。著書に『みんなの投資』(ダイヤモンド社)。