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藤田郁雄の「サバイバル・インベストメント」

新鋭のプログラマーが、現代ポートフォリオ理論をhackすることで、経済的自立の構築を模索する。

第9回 投資リスクを自分の目で確かめよう(1)

2008年3月25日

(これまでの 藤田郁雄の「サバイバル・インベストメント」はこちら。

世界規模で拡大する米国の信用収縮に対する不信感、さらに国内では円高に対する懸念から、日経平均株価はついに連日の新安値を更新するまでに暴落しました。最近(*1)の東証1部売買代金も2兆3000億~5000億と低調(*2)なことから、国内投資家の不安感は日増しに高まり、売買を避けていると思われます。

こうした混乱の中、今後の日本株の見通しは


  1. 12年ぶりに100円を下回った円高進行で輸出企業を中心に不況が始まり、政治の閉塞感や国の債務状況、そして超高齢化社会の到来を考えると日本株はもうダメだ。

  2. 日本は先進国の中でもサブプライム関連の損失が少なく、決算も悪くはない。PER(株価収益率)も割安にあって、国際優良企業を中心に今の日本株はお買い得だ。


などの予想がありそうです。有価証券の価格はアップとダウンの二方向しかありませんから、どちらか一方が正解ということですね。

このような連想ゲームは、解を導き出すまでの過程がシンプルで、選択が二者択一で容易、そして知的であるような気がして面白いものですから、ついつい投資行動に反映してしまいます。実際に個人投資家が集う掲示板を覗いてみると、ロイターやブルームバーグなどの経済・金融ニュースを元に勘を働かせて、アナリストのように見通しを披露しているケースが多く見られます。
そしてひとたび株価の大きな変動がくると、自身の相場観を元に損切りを始めたり、もしくは必要以上の投資を始めたりと、当初の投資計画を変更してしまう傾向があるようです。

もしも投資を始める前に、どのぐらい損をする可能性があるのかを実数で知っていたならどうでしょう?適切に分散されたポートフォリオのリスクを事前に測っていたなら、今回の暴落は(強がるまでもなく)「想定の範囲内」と知っていたはずです。そして予定通りの値動きであるなら、必要以上に相場を恐れることも楽観することもなく、自分にあった投資計画をそのまま着実に進められているはずです。

今回からは、資産運用に関連するリスクを自分の目で確認していきたいと思います。


■リスクをどう考えるか
投資家の最大の興味は「儲かるのかどうか」、これに尽きると思います。投資の目的は資産価値を高めることにあるのですから、まぁこれは当然のことですね。しかし「儲かるのかどうか」を事前に察知することはできません。仮にできたとしても幸運の産物であって、長期間再現することは極めて困難です。これは、世界の長者番付に載っている投資家(*3)の数は極めて少ないことからも証明できることでしょう。

さて、儲かるのかどうかを事前に知ることはできないのですが、どのぐらい儲かりそうかもしくは損をしそうなのか、その「量」を知ることはできます。
初めて行ってみたスーパーマーケットで、どの商品がディスカウント対象商品でお買い得なのかを事前に言い当てることはできないと思いますが、牛乳は定価で大体いくらぐらい、牛肉なら大体いくらぐらいであろうと想像することはできると思います。一般的な牛乳1リットルが定価10円で売られていたり1000円もしたりすることは考えにくく、180円ぐらいから(高くても)300円ぐらいまでの幅になるのではないでしょうか?

有価証券はスーパーマーケットで売られている食料品と異なって、毎分毎秒ごとに値が変わっていく「不確定要素」のかたまりです。値上がり/値下がりを予測する二者択一の知的ゲームはこの際あきらめてしまって、どの程度確実なのかそれとも不確実なのか、その量を測ることで投資リスクを考えていきましょう。


■確実性の量とは何か?
第2回 思い込みによる資産運用から脱却するにて少し触れましたが、統計値や確率変数の散らばり具合を示す値のひとつに「標準偏差」という考え方があります。
例えば定期預金はほとんど値が変わらない(僅かな利子が付く程度)ですので、標準偏差は小さくなります。つまり確実性が高い、ほぼノーリスクで利子というリターンが受け取れるということですね。
一方、国内の株式は値が大きく変わるので確実性が低い、つまり儲かるのか損をするのかの幅が大きいので標準偏差は高くなります。

しかしこれだけでは、日本株が何パーセントの利益を上げられそうなのか?反対に何パーセントの損失を被る可能性があるのかが実数で分かりません。
次回は、標準偏差の求め方や資産運用においての使い方を書いていきたいと思います。

* * * * *
*1:SQの3/14を除く。
*2:半年前の売買代金は3兆円/日を超えている。
*3:ほとんどがビジネスの創業者。そして数少ない投資家の中にバフェット氏もソロス氏がいる。彼らのキャリアの始まりは確かにトレーダーだが、現在は経営者の性質が強いと考える。

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藤田郁雄の「サバイバル・インベストメント」

プロフィール

1976年生まれ。経営者、個人投資家。ハンドルネームは「銀座人」。「市場は長期的には効率的」という持論を実証すべく、資産運用の成果をウェブサイト上に公開している。著書に『みんなの投資』(ダイヤモンド社)。