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藤井敏彦の「CSRの本質」

企業の社会的責任(CSR)とは何なのか。欧米と日本を比較しつつ、その本質を問う。

G8サミット、NGO「広告」キャンペーンを読む

2008年7月14日

(これまでの 藤井敏彦の「CSRの本質」はこちら)

8年毎にまわってくるサミット主催。北海道洞爺湖サミットも無事に終わりました。関係者の皆様お疲れ様でしたぁ。色々言われて大変だったのではないでしょうか。日本のマスコミさんはどうしても「ニッポン、ダメダメ」調になりがちですからねぇ。

ワタシが関係したあるWTOケースでこんな経験しました。実質的に日本勝利で担当記者さんも「威勢よく書きますね」なんて言ってくれていたのに翌日の記事見出しは「日本敗訴」。聞くところによれば日本(政府)が負けたと書かないと面白くないという編集方針になったそうです。

ところで、報道機関のこの心理は一体、“M”なのか“S”なのか、どちらだと思いますか? 日本人としての一種の自虐趣味なのか、それとも、自国の政府を虐めることに快感を覚える加虐性でしょうか。はたまた両方混ざっているのかな。

もちろん、現代都市生活者たる我々は、すべからくマゾヒスティックであるかサディスティックであるか、どちらかであります。当然、新聞もその要請に応えてくれないと困るわけです。私も日々感謝の念をもって読ませていただいております。それから、もし貴殿(貴女)が被虐趣味をお持ちでいらしたら、日本国政府で働くのは悪くない選択肢であります。


■記事ではなくて広告から見たメディアのサミット報道

ま、それはともかく、今回はサミットの「記事」ではなくて新聞「広告」を観察してみましょう。サミット初日の7月7日の日経新聞とフィナンシャル・タイムズを比べてみて面白いなぁと思いまして。まず、日経新聞さんは「広告特集」を大々的に組まれました。サミット初日の7日は環境、翌8日は開発といった具合にテーマも統一されており、さすがに良く組織されています。

ただ、それぞれの広告自体は特段に新鮮な感じはありません。あくまで広告特集ですから、広告主は普通の会社さんです。内容も普通の「イメージ広告」。受ける感じとしては新年元旦の企業広告に近いかな。「謹賀新年」の文言を「環境保護」に置き換えて、初日の出のグラフィックを森と湖にしたらこうなるって感じ。
 
次にフィナンシャル・タイムズです。こちらは別に広告特集はありません。が、サミットの初日7日の版にはサミット向けの巨大一面広告が並んでいて壮観です。いずれにせよG8サミットがメディアに広告収入をもたらす機会となっているわけで、私が昔サミットを担当していた頃とは隔世の感があります。

日経さんと違うのはまず広告主です。NGOが一面広告を出しています。前回取り上げたグリーンピースさんは単独で一面買ってます。当然、内容は当然意見広告。サミットに集う首脳へもの申しています。


■一番目を引いたのはハローキティのパロディ?

翌8日の広告で一番目を引いたのは「今日世界で起こっている諸問題に対して積極的に活動を行う地球市民団体」を名乗られるAvaazさんでした。こちらも単独で一面広告を打っておられます。私、寡聞にしてこのNGOさん知らなかったのですが、日本を代表するキャラクターであるハローキティのパロディでいくっていうのはなかなかなセンスですね。

hello_kiddies.jpg
[出典:AvaazのWebサイトより(http://www.avaaz.org/jp/)]

でも環境メッセージは明快。「福田、ハーパー、ブッシュは2020年温暖化ガス排出目標を阻んでいる」と訴えています。ただ、福田さんのコスチューム、チャイナドレスになってます、、、。曲がりなりにも日本開催ですから、せめて和装と中国服の区別くらいはして欲しかったところ。

ビジネス側も意見広告で対抗です。ワールド・ビジネス・カウンシル・フォー・サステナブル・デベロップメント他の産業団体が共同で一面広告。さすがにNGOさんよりお行儀が良い感じです。日本企業もANAさん、日産さん、帝人さん、東京電力さんがロゴを連ねておられます。

「当社の電子レンジは消費電力が少なくて環境に優しいから、サミット歓迎」って広告ももちろん大好きですが、どちらかと言えば個人的には意見広告の方が面白いかな。それに、一面広告を買うだけの資金を持っていること、そういった力を誇示することもNGOの正しいキャンペーン戦略だと思うのです。私は日本のNGOも日経で一面広告を買えるくらいに育ってくれればよいなと思っています。

8年後の日本主催サミットの時日本の新聞の広告がどうなっているか、皆さんどう思いますか?

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プロフィール

1964年生まれ。経済産業研究所コンサルティングフェロー。経済産業省通商機構部参事官。著書に「ヨーロッパのCSRと日本のCSR-何が違い、何を学ぶのか」、共著に「グローバルCSR調達」がある。

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