コンビニ深夜営業規制に一票、今こそ「エコ談合」を!
2008年6月30日
(これまでの 藤井敏彦の「CSRの本質」はこちら)
大陸ヨーロッパで暮らして一番驚いたことは、利益動機に対して社会的自制とでも言うようなものが強く働くことです。この点に関して言えば「日本」と「欧米」という二分法よりも、「日米」と「欧州」という分け方のほうが適切だと思います。それだけ欧州、特に大陸欧州はある意味「異質」だと感じました。逆に日本とアメリカは似ているとも。
ヨーロッパに旅行されてお困りになった方も多いのでは。日曜日にはほとんどのお店が閉まってしまいます。私が暮らしたベルギーでもそうでした。大型スーパーも日曜日には閉まります。例外はチョコレートの店とお花の店。これは、日曜日に友人宅に遊びにいくのに必需品だからと友人が解説してくれました。
別に日曜閉店の規制があるわけではありません。日曜日は家族と過ごす、という社会的な規範みたいなものが強く作用している。たまに日曜日に開くと、どのお店も大賑わいします。抜け駆けして毎日曜日に営業すれば儲かることはまちがいない。でも、誰もそれをしない。不思議でした。みすみす商機を逸している。
■猛暑でエアコンは売れても・・・
半分笑い話なのですが、あるエアコンメーカーの欧州法人の社長さんの嘆きをご紹介しましょう。最近、ヨーロッパはしばしば記録的猛暑に襲われます。彼の地にはエアコンというものがほとんど普及していない。メーカーさんにとってはビジネスチャンスのカタマリのような市場。それにしては売り上げが伸びない、ということで日本の本社から叱責されたというのです。
社長さん曰く「需要は無限にあるんですが。配管工がみんなバカンスに行ちゃって、取り付けができないのですよ」。配管工事をする人たちも、仕事は山ほどあっていくらでも儲けられるのに、それをしないでバカンスに行ってしまう。日本じゃ考えられないですよね。
もちろん、日本の本社もそんなこと理解できないので、駐在員が板挟みになるわけです。「じゃオマエ取り付けてこい」とか言われて(笑)。もっとも、この話は笑い話では済まなくて、病院もエアコンが付かなくてお年寄りの入院患者が暑さのために多数お亡くなりになる、という事態に至っているのですが。
■元旦さえも営業するのが普通のことに・・・
他方、日本は、アメリカも同じですが、利益が上がる機会は徹底的に追求します。この傾向は強まるばかり。例えば、お正月。ワタシが小さいころ、新年最初の一週間はお店が閉まりました。母親は年末の買い出しに大わらわ。でも、今ではスーパーが元旦から営業しています。最初の頃は話題になりましたが、今じゃ当たり前。働く人は元旦を家族と過ごすことさえできないわけです。
もちろんこの手の話は正月に限らない。あるスーパーの店長さんの曰く「売り上げが伸びなくて社長に営業時間を伸ばすように言われまして。人は増えないので大変です。でも、競合店も同じように営業時間を伸ばしてしまって・・・」。
「お客様満足」の飽くなき追求、という徹底的な商業主義が元旦の団らんや夜の静寂を消滅させつつある。過労死や自殺者という犠牲者まで生み、もはや「競争」というより「戦争」の域。それでも日本の社会は休戦ができない。多分、この真面目で徹底した国民性を前提にしたら、ホントは規制するとか、スーパーなら営業時間は○時までにしようって談合するとかした方がみんなの幸せなのかもしれないけど。でも、それはもうできない。
だから、コンビニの深夜営業規制、賛成です。温暖化対策としてはあんまり意味ないかもしれないけど。別に店を閉めても冷蔵庫とかの電力を食う機器は止められないし。そもそも夜間電力は余っていて使われなければ放出されるだけだから。
ただ、今、過度な商業主義が社会を覆い尽くすことにブレーキをかけられる、ひょっとしたら唯一の「大義名分」が「エコ」かも。長時間労働や過労死が問題になろうと、だからといって深夜営業を云々とは誰も言わない。けど、温暖化対策としてならそういう議論が出てくる。
なんか歪んでいるような気もするけど。でも、この際よしとしましょう。我々のライフスタイルを考え直す良い機会ではないかと思うのです。生活のペースを少し緩めてみようではありませんか。「エコ談合」で。
藤井敏彦の「CSRの本質」
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