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藤井敏彦の「CSRの本質」

企業の社会的責任(CSR)とは何なのか。欧米と日本を比較しつつ、その本質を問う。

餃子事件、「ワガシャはどうする?」と上司に聞かれたアナタはさてどうする!?

2008年3月18日

(これまでの 藤井敏彦の「CSRの本質」はこちら)

世間を騒がせている中国の餃子の一件、日中の当局の見解が正面衝突。なかなか真相が明らかになりません。調査結果について予断は禁物でありますが、他方、社内的に本件を「もって他山の石とする」お役目を負っている読者もいらっしゃるのではないでしょうか。担当役員さんから「あの件だけど、ワガシャはどうするのかね?」と聞かれたら、さぁ、どう答えましょう?

もちろん、会社により状況は様々。既に調達方針に基づきサプライヤー管理をやっておられるところもあります。まだ手がついていない会社もたくさんあります。サプライヤー管理といっても対象が品質関係に限定されているケースもあれば、環境・安全を含む場合もあります。さらに一部の会社では労働基準的なものも包含されているかもしれません。そもそもサプライヤーとの力関係も千差万別。「言うこときいてくれる」相手であるとは限りません。

ということで餃子の一件からどのような教訓を汲みとり、どのような対処をするのか、これは会社によってちがうわけであります。ただ、大半の会社にも共通して言えることはサプライヤーとの関係は非常に微妙で何か新しいことをするには時間がかかるということです。

他方、人間偉くなるとまた別の時間感覚をもつものです。したがって、役員さんから詰問される緊急事態、「考え中」というのはウマクナイ。とりあえず機転の利いたフレーズで「なかなかよく考えているじゃないか」と敵を唸らせて時間を稼ぐ必要があります。

ということで、餃子で唸らせる、起承転結フレーズ例文です。

その1「起」:視野を広くとる

「今回の事象への第一次接近として「中国問題」という範疇で考えることは適当ではないと思います。環境・安全および従業員への配慮の欠如が原因であったとすれば、国内のサプライヤー、さらには自社の国内の工場や事業所でも今回と同様の事件は起こりえるわけです。今回はたまたま中国のサプライヤーにスポットライトが当たっているわけですが、調達先を中国から国内や中国以外の国にうつせばことが済むわけではありません。」

その2「承」:予想される反論を織り込みつつ自説を補強
 
「確かに中国野菜の残留農薬問題が大きな社会的関心事項になっています。中国では過剰な農薬使用が一般化しているとの報道が多くあります。しかし、もしそうだとすれば食品工場を日本国内に戻しても、原材料を中国から調達する限りしかるべき調達管理をしなければリスクは軽減されません。逆に、調達管理をしっかりすれば中国の工場でも問題はないはずです。問題の本質は工場の場所ではありません。そもそも足元の日本国内で食の安全を脅かす事件が相次いでいるのはご案内のとおりです。」

その3「転」:斬新(と思ってもらえそうな)な見方を提示

「この事件が仮に自社内で発生したとすればどのような対応をとるか、という問いかけから出発してみることも一案です。原因が明確になっていない以上、あらゆる可能性を想定して調査を行う必要があります。まず、当然のこととして品質管理上の問題点の洗い出しが行われると思います。さらに、仕入材料についても検査が行われるでしょう。同時に「故意」になされた仕業である可能性があることもあり、人為的要素も考えざるをえません。職場でのトラブル、時間労働など従業員に過度な負担がかかっていなかったか、会社に恨みをもつ従業員がいなかったか、など人事管理全般が調査の対象になるはずです。」

その4「結」:言いたいこと
 よって慎重に、よく時間をかけて対策を考えていきたいと思います。

皆様、お役目ご苦労様です。

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プロフィール

1964年生まれ。経済産業研究所コンサルティングフェロー。経済産業省通商機構部参事官。著書に「ヨーロッパのCSRと日本のCSR-何が違い、何を学ぶのか」、共著に「グローバルCSR調達」がある。

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