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荒川曜子の「それはWeb調査から始まった」

Web上に溢れる調査の中から着目すべきデータを読み解き、次のネットビジネスの予兆を発見してみる

新興国ネットの拡大は新たなネット文化をもたらす?

2010年4月21日

(これまでの 荒川曜子の「それはWeb調査から始まった」はこちら

新年度ですね。春なのに寒いし、相変わらず景気の悪い話が多いし、いろいろ先行き不透明だしということで国内市場から海外市場に目を向ける動きがあり、特にBRICsなど新興国が注目を集めています。日本企業からは、BRICsの中では特に中国とインドが同じアジア圏であること、マーケットサイズのポテンシャルなどから重要視されているようです。

ネットの世界でもこの2つの国の存在感は日に日に大きくなっています。MorganStanleyが今月12日に発表した「Internet Trends」レポート(PDF)によれば、2009年、インターネット利用者数は世界全体で18億人、前年比13%の増です。そのうち中国とインドはそれぞれ前年比29%、23%と全体平均を上回る利用者数増加率で、着実にインターネット(利用)大国へと成長しつつあります。BRICsの残りの2カ国(ブラジル、ロシア)も順調に拡大しているといえますね。(元レポートにはこの他にも「SNS>Eメール」、「モバイル>デスクトップ」など様々な予測があり大変参考になります)

中国とネットといえばGoogleの撤退が大きなニュースになりましたが、中国ユーザーの反応は、Googleへの賛同や撤退を惜しむ声もあれば、実際の利用面では特に影響なしとの見方もあり、様々であったようです。ある調査結果(※中国語)では、中国の検索エンジンのシェアでは百度が7割超と圧倒的、Googleは2割未満のシェアで2位だったそうです。SNSなどでもGoogle以外のサービスが根強いですね。

一方、昨年Comscoreから発表されたネット利用時間に占めるGoogleサイトのシェアが高い国トップ10ランキングでは、1位がブラジル(Googleのシェア29.8%)、2位がインド(同28.9%)です。特に利用されているのは検索・SNS(Orkut)・動画(YouTube)の3つで、これらはネット利用の根幹をなす重要なサービスです。これから利用が伸びる国で高いシェアを持っているのは強いですね。ここまでデータを見ると気になるのが世界の検索エンジンランキング、というわけで同じくComscoreが昨年12月の結果を発表しています。

百度(中国)、NHN(韓国)、Yandex(ロシア)などがランキング入りし、だいぶ「グローバル」感がでてきたように思われます。このようなランキングをみていると、英語とアルファベット以外の文化も、ネット上でもっと大きくなると感じます。

過去、様々なメディアの登場・普及によって人々の情報への接し方が変わり、ものの見方・考え方が変化してきたことを思うと、現在提供されているインターネット上の検索や動画、コミュニケーションツールの在り方によっても、今後の「一般的なものの見方」に影響を及ぼすことでしょう。

そう考えると今回、中国はある意味でGoogleを拒否したわけですが、違った価値観に基づいた複数のサービスが利用可能であり、利用されている状態というのがやはり好ましく感じます。拡大する新興各国のネットシーンからも、その国ならではの濃いサービスがでてくると楽しそうです。特にインドとか、本気出したらすごそうですよね…。

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プロフィール

荒川曜子

1981年生まれ。NEC入社後、法人営業担当を経て、ICT市場調査業務を修行することに。株式会社国際社会経済研究所(旧NEC総研)での約3年間の修行を終え、再びNECで仕事をすることになりました。

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