孤独とSNS、あるいはネットとリアルの適切な距離─米国ネット利用動向調査
2010年11月22日
(これまでの 荒川曜子の「それはWeb調査から始まった」はこちら)
めっきり冬を感じる気候になってきました。日々リリースされる調査にも、冬の習慣・クリスマス商戦・一年の終わり的な内容が徐々に見られ、季節の移ろいを感じます。なんだか"情報充"な気分です。
今月18日、米国調査会社のHarris Interactiveからネット利用と買い物などの日常行動や人間関係の変化についての調査結果がリリースされました。「最近友達と直接会うことが減ったか」(回答は「そう思う」「ややそう思う」合わせて54%)や、オンラインでの行動(買い物、写真投稿などなど)時間の増減などを聞いています。SNSユーザーへは、「直接会うよりも、SNS上でコミュニケーションした方が良いか」という質問が。この質問に、対象が知人の場合は44%、友人では23%、家族では19%がSNS上でのコミュニケーションの方が良いと回答しています。
近しい人(知人<友人<家族)の方が、オンライン上でなく直接会ってコミュニケーションしたいという傾向があり、とはいえ相手が知人であっても半数以上の人が対面のコミュニケーションの方が良いと回答したということです。ネット上のコミュニケーションの方がスムースだと考える人もいるでしょうし、会って話すほうがいいというのは、オンラインではオフラインでは見せない自分を表現している(ので知人程度であればその世界に入ってきてほしくない?)という人もいるのかなとも想像しました。日本であればよりそういう傾向が強く出そうな気がします。オン(ライン)とオフ(ライン)のつながりあるいは切り替え、バランスがどのように取られているのかを考える上で興味深い数字です。
ちなみに「以前より孤独を感じるか」という質問もあり、「そう思う」「ややそう思う」と答えた割合はネット利用者ベースで31%、SNS利用者と非利用者に分けるとそれぞれ32%、25%という数字です。人間関係に敏感な人がSNSを利用するのか、SNSを利用すると人間関係に敏感になるのか、ニワトリとタマゴみたいな話ですが、面白いですね。交友関係が可視化されることにより、その存在を認識することで孤独感をかえって感じてしまうということはありそうです。知らない方が心安らかでいられることというのは意外と多いのかもしれません。
そういえば、MMD研究所が10日にリリースした配偶者(パートナー)の携帯電話チェックに関する実態調査では、主婦の約7割が「旦那の携帯電話をチェックしたことがある」とのことです。頻繁にチェックしている人4.6%! 時々チェックしている人31.4%! 知らない方が良いことを知らないままにしておくための機能(携帯電話のセキュリティロックとか?)、あるいは知りたい欲求をコントロールする機能(何か、自己啓発以外で...)など、情報との適切な距離をとるためのサービス(あるいはリテラシー育成)は見えにくいですが必要性の大きいものと感じます。
SNSとリアルライフという観点では、9日に米国調査会社eMarketerからも似たような調査がリリースされており、こちらはTwitterとFacebookそれぞれのユーザーに、「友人に会う」「友人に電話する」頻度の増減を聞いています。この調査ではTwitterユーザーで「友人に会う回数が増えた」人が多いようです。自分の性質を知り、容量・用法を守って楽しい利用を、でしょうか。これがなかなか難しいので"リア充"、"ネト充"などという言葉が生まれるのかもしれません。
荒川曜子の「それはWeb調査から始まった」
過去の記事
- ガジェット所有はどこまで? -米国情報端末所有調査結果2011年2月15日
- 「ネットで買う」の成熟度-EC利用動向国際比較2011年1月20日
- ネットは全世代的な利用というフェーズへ─米国ネット利用動向2010年12月21日
- 孤独とSNS、あるいはネットとリアルの適切な距離─米国ネット利用動向調査2010年11月22日
- 「ケータイ、何するものぞ」日・米・欧の携帯電話利用動向2010年10月20日