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荒川曜子の「それはWeb調査から始まった」

Web上に溢れる調査の中から着目すべきデータを読み解き、次のネットビジネスの予兆を発見してみる

ヨーロッパで伸びるPayPal、国内電子マネーは百花繚乱

2009年11月10日

(これまでの 荒川曜子の「それはWeb調査から始まった」はこちら

先日山手線で「Suica、イエナカへ」の車内吊りを見かけました。今年7月からサービスを開始しているネットでのSuica利用は、パソコンのFelicaポートにSuicaを乗せて、オンラインでSuicaへの入金(クレジットカード経由)やECの決済ができるというサービスです。ネットショッピングの際にクレカの情報をお店側に渡さなくて済むのが安心!とのことですが、浸透度はいかがなものなのでしょうか。ICカードのリアルでの使用は小額決済が中心だと思いますが、ネットでもまずは1万円以下の決済を中心に広まっていく…のでしょうか? 発行枚数は3000万枚を越えているSuica、行方が気になります。

一方、11月6日に米国の調査会社Forresterのブログでは「ヨーロッパにおけるEC決済手段の経年変化」が載っていました。

過去3ヶ月にオンラインで買い物をした際の決済方法を聞いたもので、PayPalが2007年の26%から2009年には36%まで伸びています。ヨーロッパの事情には全く詳しくないのですが、デビットカードが普及している印象があったので、ネット決済とはいえデビットカードに逼迫しているPayPalにびっくりです。日本だと海外ECサイトのユーザーぐらいしか利用していないような感じがありますが、普及しているのですね。PayPalも先程のSuicaと同じく取引相手にクレジットカード情報を渡さずに決済できる仕組みで、こちらは口座間での送金も手軽に行えるということです。

オンラインでの気軽な送金というと、国内では昨年開業したじぶん銀行が思い浮かびます。ケータイ番号だけで送金が可能なじぶん銀行、今調べてみたところ今年の9月末で75万口座です。(当初目標は開業3年で240万口座、5年で340万口座との発表)何をきっかけに使い始めるのかが難しいところですね。

ちなみに、私はSuicaやEdyなどのICカードで支払いをするときや改札を通るとき、音が鳴るのが好きです。Suicaのオンライン決済では支払い画面がポップアップするという動作のようです。オンラインで買い物をする際にクリックひとつでクレジットカード払いをするのには随分慣れてしまいましたが、支払いの一瞬の動作の中でお金を払った手ごたえを感じられると良いものです。

オンラインでお金のやり取り(仕送りとか? お年玉とか? 飲み会の集金とか?)が活発に行われるようになったら、送り主に紐付いた決済音(「おふくろさん」とか? 「孫」とか? 最近巷にあふれるアリガトウ系の歌とか)が鳴る、などというお遊びも楽しそうです。あまり流行らなかった着デコ・着もじサービス(電話の発信者が、着信相手の携帯端末に好きな画像や音、メッセージを再生できるサービス)みたいですが…。

いろいろなものが電子化されていきますが、そうなってみると改めてそのモノ自体が何であったのかを考える機会になりますね。電子化されたお金でも本でも健康でもお天気お姉さんでも羊でも、機能と遊びのミックスに、ちょっと設計者のメッセージが感じられるようなインタフェースの登場に期待したいものです。電子マネー・ウェブマネーをふくめ、決済サービスは増加の一方で、増えすぎたポイントカードともども(個人的に)使いこなせる気がしない領域に達しつつあるので、何か楽しい解決策はないかなと思っています。

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プロフィール

荒川曜子

1981年生まれ。NEC入社後、法人営業担当を経て、ICT市場調査業務を修行することに。株式会社国際社会経済研究所(旧NEC総研)での約3年間の修行を終え、再びNECで仕事をすることになりました。

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