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渡辺保史の「コミュニケーションデザインの未来」

情報デザインの専門家が、メディアテクノロジーの変容に伴うコミュニケーションデザインの未来を語る

大学広報のリデザインへ向けて

2009年5月 1日

(これまでの 「コミュニケーションデザインの未来」はこちら)

結局、ブログの更新ができぬまま年を越し、年度もまたいでしまった。この間、2008年度の受講生たちとの活動の総仕上げと、09年度の準備とで文字通り忙殺され、あれこれ面白いトピックがあったにもかかわらず、ご紹介の機会を逸してしまったことをお詫びする。

先ごろ、5期目となる受講生の合格発表が行われ、いよいよ来週(9日)に今年度の開講式を迎えることとなった。今回、受講生募集の際には、アジャイルメディア・ネットワーク(AMN)経由で70余りのブログに広告を出稿することも試みた(このブログの上部にも、4月中旬の2週間ほど広告が出ていたのをご覧になった方もいるだろう)。今日はこれについて簡単に触れたい。

前にも述べた通り、CoSTEPでは講義をe-learningで視聴できる「選科」というコースがあり、その受講生は全国(さらには海外)が募集範囲となる。わずかな予算で、僕らが提供しているような学びの場を欲している問題意識の高い潜在的な応募者にリーチするためには、AMNがパートナーとしている、いわゆるアルファブロガーへの広告出稿は意外と効果的なのではないか、との判断だったわけである。

結果として、応募や問い合わせ自体が広告によって急増したわけではないものの、比較的情報への感度の高いAMNのパートナーブログの読者にCoSTEPの認知度が上がったことは確かだったように思う。AMNの担当者によると、他のブログ広告にくらべてクリックスルー率が非常に高かったとのことで、出稿先のブロガーの方々からも興味深く迎えられたようだ。

CoSTEPは基本的に科学技術コミュニケーター養成のための教育が中心的な活動だが、その活動が大学の内部に閉じることなく、社会へ向けての実践に重きを置いているが故に、間接的には北海道大学の広報機能の一部も担っている。その意味で、今回のようなブログ広告の出稿は大学広報の手段としてはイレギュラーではあるものの、新たな試みとして注目されたのではないかと思う。今回をテストケースとして、CoSTEPの活動や科学技術コミュニケーション全般について、ブロガーとのもっとも踏み込んだ関係性を模索することも考えてみたい。

大学広報に関連してもう一つ書くと、今年度僕が担当する「実習」で、北海道大学の広報誌『リテラポプリ』の制作に関わることになった。大学広報誌は依然として印刷媒体が主体であり、必ずしも徹底した読者本位に基づいてデザインされているわけではない。そこで、ユーザー中心デザインの方法論なども援用しつつ、印刷媒体とウェブ、ポッドキャスト、あるいは携帯サイトなどとの連携による、立体的な大学広報のデザインを目指したいと意気込んでいる。

北大広報誌は、Google検索すると「大学広報誌」で約26万件中1位、「広報誌」でも約68万件の中でトップページに入るページランクを誇っている(特にSEOをしっかりやっているわけではないのに…)。このページランクに相応しいだけのメディアとして機能させるためには何をすべきか、今まさにそのプロジェクトが始まろうとしているところだ。このことについては、今後も折に触れて言及していきたい。

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プロフィール

渡辺保史

北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)特任准教授。1965年生まれ。情報通信業界紙の記者をへて、フリーランスのジャーナリスト兼プランナーとして、未来のコミュニティや情報メディアに関する実践型の研究開発プロジェクトに関わってきた。08年4月より現職。著書に『情報デザイン入門 インターネット時代の表現術』(平凡社新書)など。

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