『シャッター アイランド』レビュー:スコセッシ+ディカプリオのミステリー映画
2010年3月26日
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1954年、ボストン沖の孤島、厳戒監視体制の「閉ざされた島」に建つ犯罪者用精神病院で、一人の女性患者が謎の失踪を遂げた。捜査に訪れた連邦捜査官テディ・ダニエルズ(ディカプリオ)は、病室に残された秘密の暗号を見つける。次々に起こる不可解な出来事に翻弄されながら、テディは真実にたどり着くことができるのか――。
『ミスティック・リバー』の原作者、デニス・ルヘインによるミステリー小説をもとに、マーティン・スコセッシ監督がレオナルド・ディカプリオを主演に迎えて映画化。ミステリーファンなら小説版は当然読んでいるだろうし、『アビエイター』『ディパーテッド』の超強力コンビが放つ新作への興味から原作をチェックした人も少なくないはず(筆者もそう)。そうした結末を知る観客でも、『シャッター アイランド』は大いに楽しめる力作だ(といっても娯楽作ではないが)。
閉塞感と重苦しさを演出する島の景観、時代を再現した室内のセット、登場人物の精神状態を象徴する緊迫した映像によって、もともと原作に備わっていた「劇」的な要素が強化されている。不可解な状況や不自然な証言を前に、観客もまた、誰が真実の体験を語り、誰が偽りの「台詞」を語っているのだろうかと、俳優たちの二重の演技を見極めることになる。そして結末を知ったとき、映画という虚構の映像に没入してその世界を体験することの意味を、改めて考えてしまう人も多いのではないか。
ネタバレを避けるためキーワードの列挙にとどめておくが、ロボトミー、幻覚誘発薬の人体実験、陰謀論といった要素も、ワイアードの読者なら一層楽しめるポイントになるだろう。音楽がやや大仰な気もしたが、重厚な映像と効果的な演出で節度は保たれている。じっくりミステリー映画と向き合いたい人におすすめの作品だ。
最後に、映画レビューとは関係ない個人的な話で恐縮ですが、地元の多摩で『たまプレ!』という地域情報サイト(自称“ハイパーローカル多摩メディア”)を立ち上げました。デイリーポータルZなどで活躍中のヨシダプロさんの連載などもあるので、お時間がありましたらぜひ一度お立ち寄りください。
[作品情報]
『シャッター アイランド』原題 Shutter Island
日本公開2010年4月9日
監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・ディカプリオ、マーク・ラファロ、ベン・キングズレーほか
原作:デニス・ルヘイン
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン
公式サイト
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