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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

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ディズニーの実写SF映画『ウィッチマウンテン/地図から消された山』

2009年6月23日

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© 2008 Disney Enterprises, Inc. All rights reserved.

ディズニーと実写SF。ちょっと奇妙な取り合わせのような気もする。とはいえ、ここ1、2ヵ月で『スター・トレック』『ターミネーター4』『トランスフォーマー/リベンジ』が立て続けに日米で封切られ、SFがもはやニッチではなく娯楽大作の主要ジャンルになっていることを実感できるし、ファミリー向けのアニメ映画でも『ウォーリー』(ピクサー製作・ディズニー配給)や『モンスターVSエイリアン』(日本では7月公開)といった作品が大ヒットしてSFのカジュアル化に貢献してきた。こうした時代の流れを考えれば、ディズニーが『トロン』(1982年)以来実に四半世紀ぶりとなる本格的な実写SFを送り出し、米公開週末の興収で1位(2万4400ドル)を達成したこともそれほど意外ではないのかもしれない。

この映画『ウィッチマウンテン/地図から消された山』のキーワードは「ロズウェル事件」「エリア51」、つまりUFOとエイリアンが中心的な題材になっている。「ウィッチマウンテン」とは、政府機関が墜落したUFOを隠蔽している基地があるという設定の架空の山。特殊な力を持つエイリアン(見かけは人間の美少年、美少女)の兄セス(アレクサンダー・ルドウィグ)と妹サラ(アナソフィア・ロブ)、そして2人をタクシーに乗せてしまったドライバーのジャック(ドウェイン・ジョンソン)が、政府機関職員と賞金稼ぎの敵エイリアンに追われながらウィッチマウンテンを目指す、というストーリーだ。

予告編で見られるように、セス少年に正面から激突した車が大破するシーンなどのCGを使った視覚効果がなかなか良い出来で、こうした特殊能力にも「体の分子密度を変えることで、物を通り抜けたり車を破壊するほど硬くなったりできる」という具合に分かりやすく説明がなされるのも好ましい。SFアクションは大好きだが血が流れたり人が死んだりするので家族連れだと敬遠してしまうお父さんでも、その点はディズニー作品なので安心できる。宇宙やUFOに興味を持っている子供(まあたいていは男の子だろうけど)がいる親なら、一緒に観て親子ともに楽しめる作品だと思う。

映画の原作はアレグザンダー・ケイ(『未来少年コナン』の原作でも知られる)が1968年に発表したSF小説『Escape to Witch Mountain』で、ディズニーは1975年に『星の国から来た仲間』(小説と同じ原題)、1978年に『続・星の国から来た仲間』(Return from Witch Mountain)でそれぞれ劇場映画化している(テレビ映画はさらに2作品あり)。今作は『星の国から来た仲間』の設定を現代的にアレンジしたリメイクで、やはりシリーズ化を念頭に置いているらしく、エンディング近くのショットで「Drive carefully Come back soon」と書かれた看板が映る。

原作の発表年と映画化の時期を考えると、スティーヴン・スピルバーグ監督の『未知との遭遇』(1977年公開、主人公が異形の山を目指す)と『E.T.』(1982年、故郷の星に帰りたい異星人を人間が助ける)に影響を与えた可能性がある。また、終盤のマッチョな主人公と凶暴なエイリアンとの肉弾戦は、アーノルド・シュワルツェネッガー主演『プレデター』の引用だろう(エイリアンがマスクを取ったら……というやり取りが再現されている)。

おまけで、パンフレットに書いてあった「今年1月20日、オバマ大統領就任式には、なんと“未確認飛行物体”が飛来し、CNNの番組内で映像が流され」たという話は初耳だったが、YouTubeにその映像がアップされていたので下に貼りつけておく。

[公開情報]
『ウィッチマウンテン/地図から消された山』
原題:Race to Witch Mountain
監督:アンディ・フィックマン
7月4日(土)より全国ロードショー
ウォルト ディズニー スタジオ モーション ピクチャーズ ジャパン


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プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

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