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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

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『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』:アクションの進化、人間ドラマの強化

2009年6月16日

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X-Men Character Likenesses TM & (c) 2009 Marvel Characters, Inc. All rights reserved. TM and (c) 2009 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

6月16日、六本木ヒルズ内のTOHOシネマズにて行われたマスコミ完成披露試写会にて鑑賞。公開までまだ3ヵ月近くあるのでネタバレは避けて、ストーリーへの言及は予告編でわかる程度に抑えます。

製作が決まってからの一般的な認識は「映画『X-MEN』シリーズのスピンオフ作品」というものだったが、邦題に「X-MEN ZERO」とあるように、三部作のプリクエル(前篇)という位置付けが正しい。幼少時代に驚異的な能力を発現し、のちに超金属アダマンチウムを全身の骨に移植する改造手術を受けるヒーロー、ローガン/ウルヴァリン(ヒュー・ジャックマン)の生い立ちを中心に物語が展開する。

メインのヒーローが大勢いるせいで各キャラクターを足早に紹介してそれぞれの見せ場を用意する必要があった三部作に対し、今作は主人公を絞り込んだおかげで、たっぷり時間をかけてローガンの人格形成の過程とウルヴァリン誕生のいきさつを描くことが可能になった。父殺しや兄弟の確執といった物語の類型や、『狼男』『フランケンシュタイン』『モロー博士の島』などのモンスター物の古典が、プロットに巧みに織り込まれている。また、冒頭の展開で明らかに『ウォッチメン』を意識しているのも興味深い(ある場面で特徴的なシンボルが刻まれる)。

CGを駆使して実在する巨大な建造物やモニュメント(自由の女神、ダム、ゴールデンゲートブリッジ)を派手に破壊するのもシリーズの目玉だが、今回も終盤である有名な施設が盛大にぶっこわされる(予告編にもチラッと出てくる)。ちなみに、ここにウルヴァリンの改造を行った秘密基地があるという設定なのだが、第2作『X-MEN2』での設定と異なるのはご愛嬌。

ヒュー・ジャックマンも前作より肉体をバルクアップしてきたことで、アクションシーンに重みと迫力が増した。全裸で野外を突っ走るシーンはファンやマニアの人へのサービスだろうか、数少ないユーモラスな場面でもある(『ターミネーター』のシュワルツェネッガーと同じポーズも披露していた)。

なお、すでに『Wolverine 2』の製作が始まっているようで、監督やジャックマンは次作の舞台が日本になることを示唆している。というのも、原作コミックに日本を舞台にしたエピソードがあるためで、たとえばこちらのページでローガンが神社を参拝する数コマをキャプチャした画像が見られる。

余談になるが、今日は早めに会場入りして比較的良い席に座っていたら、しばらくして僕の隣に座ったのが、なんと西村博之氏だった。まったく面識がなかったが、過去にWIRED VISIONのセミナーでひろゆき氏が講師を務めてくださったことがあったので、挨拶して名刺交換し、少しだけ話をした。穏やかな語り口のとても気さくな青年、という印象でしたよ。


[公開情報]
『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』 原題:X-Men Origins: Wolverine
9月11日(金)TOHOシネマズ 日劇他全国ロードショー
監督:ギャヴィン・フッド
出演:ヒュー・ジャックマン、リーヴ・シュレイバー
配給:20世紀フォックス映画
公式サイト:http://www.XMEN-ZERO.JP

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プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

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