再結成ユニコーンのシークレットライブと、中小公演チケットの販売支援サイト『e+エンタメ市場』(前)
2009年3月 3日
バンドを始めるきっかけとしてよくあるパターン:テレビやラジオで未知のサウンドと衝撃的に出会う。レコードを買い、夢中で聴きまくる。憧れのバンドに少しでも近づきたいと願い、楽器やボーカルの練習を始める。仲間とバンドを組む。学校の文化祭などに出て人前で演奏する楽しさを知る。レパートリーを増やして、ライブハウスやイベントに出る――。80年代以降は楽曲を入手するために買うのがレコードからCDへ、さらに『着うた』や『iTunes Store』などのデジタルデータへと変化しているものの、プロであれアマチュアであれ、バンド経験者は大体似たような流れで音楽への傾倒を深めていったのではないだろうか。
さて、ライブハウスに出演するようになったアマチュアのバンドが大抵苦労するのが、ノルマとして課されたチケットの“手売り”で、メンバーが友人やバイト仲間に買ってもらったり、ライブ会場でアンケートを配って対バンのファンから連絡先を教えてもらい、DMで次回ライブを告知したりしていた。インターネットが普及してからは、バンドのサイトやSNSや動画サイトを利用して、地元以外のネットユーザーにもアピールできるようになったが、前売り券と代金の受け渡しをどうするかという問題は残っていた。
イープラスの取り組み
公演チケット販売サイト『e+』(イープラス)を運営する株式会社エンタテインメントプラスが、こうしたアマチュアのミュージシャンや小劇場で活動する劇団などを支援する新たな取り組みを展開している。
まず昨年11月に開始した『e+WEBオープンシステム』では、バンドや劇団が自分たちの公演を登録し、公演チケットを販売できる。アーティスト側はサイトやブログ、『MySpace』などから同システムに直接リンクしてチケットを販売でき、販売状況などのデータも確認できる。さらに登録された情報は提携サイトにも掲載されるため、さまざまな入口からのチケット販売が可能になるという(図)。買い手側にも、クレジットカードでの決済やコンビニでの発券といったメリットがある。
さらに今年1月末には、WEBオープンシステムで登録された公演の情報を一元的に提供するサイト『e+エンタメ市場』を開設。ジャンルや地域による検索をはじめ、きめ細かな「テーマ」による分類(「イケメン出演」「カップルにおすすめ」など)、アクセスや動画視聴のランキングなどで、アーティストと観客の“出会い”を応援するマーケットプレイスが立ち上がった。
このe+エンタメ市場のオープンを記念して、同サイトのアーティスト登録者とe+会員あわせて2000人を対象に、ユニコーンの「シークレットプレミアムライブ」に招待するという企画が発表された。
16年ぶりに活動再開したユニコーン
広島で結成されたユニコーンは、1987年にCBSソニーからアルバム『BOOM』をリリースしメジャーデビュー。『大迷惑』『デーゲーム』(1989年)、『ヒゲとボイン』(1991年)などのシングルをヒットさせ高い人気を保ったが、6枚目のアルバム『SPRINGMAN』の制作中にドラムス担当の川西幸一(当時は「西川」名義)が脱退を表明。「一緒にいたいけれど とにかく時間が足りない」「いつの間にか僕らも 若いつもりが年をとった」「懐かしい歌も笑い顔も すべてを捨てて僕は生きてる」「君は僕を忘れるから その頃にはすぐに君に会いにゆける」という、忙殺される人気バンドのメンバー間の複雑な思いを男女の関係にたとえたような歌詞のラストシングル『すばらしい日々』(作詞・作曲:奥田民生)を1993年4月に発表したユニコーンは、同年9月に解散した。
そして今年1月、ユニコーンは活動再開を発表。2月にはシングル『WAO!』とアルバム『シャンブル』をキューンレコード(ソニー・ミュージックエンタテインメント傘下)よりリリースし、3月5日からは全国ツアー『蘇える勤労』を予定している。今回のシークレットライブは、メンバーとスタッフにとってはツアーの予行演習の意味もあった。
2009年2月27日、よこすか芸術劇場
e+による招待客の募集では、混乱を避けるため当日まで会場を明かさず、「関東某所」とだけ説明されていた。応募総数は3万件を超え、新規でe+エンタメ市場にアーティスト登録した人による応募は1000組に達したという。抽選による2000人の招待客たちは、事前のメールで、当日みなとみらい線新高島駅に集合するよう知らされた。そこからは40台ほどのバスに分乗して、横須賀市の京浜急行汐入駅前にある「よこすか芸術劇場」へ。冷たいこぬか雨の降る中(都内は雪が降っていた)、劇場の前の長い行列に辛抱強く並んだあと、会場入りして5時半の開演を待った。
高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」
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