ドルビーとDTS、サラウンドに「高さ」を追加する新技術を発表
2009年1月11日
ラスベガスで開催された『CES 2009』にて、サラウンド音響分野でライバル関係にある米Dolby Laboratories社と米DTS社が、同等の効果をもたらす別々の新技術を仲良く(?)同じタイミングで発表しました。このホームシアター向けの新技術は、従来の5.1~7.1チャンネル(ch)のサラウンド音源に、AVアンプでのデコード処理を加えて「高い所で鳴っている音」用のチャンネルを生成し、室内の高い位置に設置した追加スピーカーに送って立体的な音場を生み出すというもの。
Dolby社が1月8日に発表した『Dolby Pro Logic IIz』では、フロントハイト(前方上)の2chを追加し、7.1~9.1chに拡張可能。CESではオンキヨーのAVアンプの試作品に同技術を組み込んでデモを行なったようです。
一方のDTS社の技術は、フロントハイト2chとリアハイト(後方上)2chを加えることで7.1chを11.1chに拡張でき、今のところ『Neo:X』と呼ばれている模様(参考1、2)。
高さを表現できるようになることで、映画ではまず、航空機やUFOの飛行音、高所から飛んでくる砲弾や矢の音、雷や嵐の音など、ジャンルでいえばアクションやSF、冒険ファンタジー系の作品で効果音がよりリアルになることが期待できそう。音楽では、パイプオルガンの音やコンサートホールの残響音などの臨場感を高めてくれそうです。
ただまあ、ユーザーの立場からすると、追加のスピーカーは当然壁掛けか天吊りで設置しなければならないので、少々ハードルが高いのも事実。ウチもそうですが、賃貸の場合は壁や天井に穴を開けるわけにもいかないし。今後のAVアンプの新製品に搭載されるにせよ、ハイトch用スピーカーを設置するのは当面マニアのみで、ほかはしばらく様子見になるのかも。ただし、ヤマハは2007年から独自技術で高さ方向の音場データを活用する「シネマDSP<3Dモード>」を搭載したアンプを市販しているので、すでに同社製アンプを使って9.1chシステムを構築している人なら、ほとんど手を加えずにDolby社やDTS社の技術も利用できそうです(アンプは買い替えなくちゃいけないけど)。
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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」
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