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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

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映画『ゲット スマート』:空想のスパイ技術に現実が追いついた

2008年10月 6日

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©2008 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED

1960年代後半に米国で放送されたスパイ・コメディードラマ『Get Smart』(日本でも『それ行けスマート』のタイトルで放映)が約40年を経て映画化、日本では10月11日に封切られます。オリジナルのTVドラマでは、映画の『007』シリーズと同様、架空のさまざまなハイテク装置を駆使して主人公が任務を遂行するのが売りのひとつ(ただし、装置がうまく機能しなかったり、使い方を誤るなどして笑いを誘うのが007と違うところ)で、今回の映画でもオリジナルのガジェットの多くが現代風にアレンジされて登場します。

映画を観て気づかされるのは、当時は空想の産物でしかなかったスパイ用ツールが、40年間の技術の進歩により、すでに存在する、あるいは近いうちに実現しそうなテクノロジーになっているということ。今回は、映画『ゲット スマート』に登場するハイテクツールと現実の技術との比較を、ワイアードの過去記事や海外サイトの情報にも触れつつまとめてみました。


靴電話

オリジナルのTVドラマで“笑えるハイテク”を端的に示していたのがこの「靴電話」。もちろん携帯電話などなかった40年前、靴に仕込まれたワイヤレスの電話機は未来技術として当時の視聴者の目に映ったことでしょう。ある意味ビジョナリーだったメル・ブルックスらのオリジナル版制作チームでさえも、それから半世紀もたたないうちにコンピューターも搭載した携帯電話が登場して「スマート・フォン」と呼ばれるようになるとは、夢にも思わなかったはず。

映画版でも、オリジナルのアイデアに敬意を込めて、靴電話を手にした主人公のマックスウェル・スマート(スティーブ・カレル)が颯爽と登場するシーンを用意しています。身近な道具と携帯電話を組み合わせる現実のアイデアとしては、NTTドコモの「指から声の伝わる腕時計型携帯電話」や、米Motorola社が特許申請したというヘッドマウントディスプレー一体型携帯電話などがありました。

音声バリア

米国のスパイ機関“コントロール”の本拠でさえ、敵対勢力に盗聴されている可能性がある――それに対抗するため、会議での会話をデジタル処理して外部に漏れないようにする装置が登場します。これはオリジナルのドラマでは、オフィスの天井から巨大な透明カバーが降りてくるというアナログな装置でした(YouTube動画)。オリジナル版も映画版も、お互い何を言っているのか分からなくなり会議が成り立たないというベタな笑いは一緒。

現実の通信傍受対抗技術としては、ロシアで逮捕されたハイテク装備の「アメリカのスパイ」が、「会話が盗聴されたときにこれをあばき、それを阻止するよう設計された」装置を持っていたという話や、独メーカーが「盗聴不可能」な携帯電話を発売したという話題などがありました。

昆虫型の偵察ロボット

映画の最初のほうで登場するハエ型の偵察ロボット。これもやはり現実の研究開発が追いついてきている分野で、ワイアードでも「空飛ぶ昆虫型ロボット『ロボフライ』」や「空中停止、垂直離着陸も可能『トンボ型飛行機』:カメラも搭載」といった記事がありました。これらとは方向が少し違うものの、「昆虫を偵察サイボーグ化:成虫まで生かすことに成功」という記事も。

超小型ガイガーカウンター

スマートが着用している腕時計型ガイガーカウンター。これ、探したら実際に販売実績のある『GammaWatch』というサイトがありました。過去の『GammaMaster』というモデルは生産終了し、新モデル『GammaWatch Basic』を250ドル程度で発売する計画とのこと。

スピンオフ編:透明マント

スパイグッズ開発者のブルース(マシ・オカ)とロイド(ネイト・トレンス)を主人公に据えたスピンオフDVD『ブルース&ロイドのボクらもゲットスマート』が10月22日に発売されます。米国版では公式サイトも用意されていて、ここで予告編を見ると、ブルースが頭からかぶった途端全身が見えなくなる「透明マント」が出てきます。ワイアードの読者ならここ最近、可視光線を透過させるメタマテリアルが何度か記事で取り上げられていることをご存じでしょう。また、一方向からしか見えない「透明シールド」という記事もありました。ただ、さすがにこれらは理論的に可能ということが確認された段階で、実現はまだ当分先になりそう。


このほかにもまだ映画に登場する技術がいくつかありますが、ラストのオチになっているものもあるし、紹介したガジェットなども含めて映画館で実際に見て楽しんでいただけたらと思います。『裸の銃(ガン)を持つ男PART33 1/3 最後の侮辱』(レスリー・ニールセン主演)で長編映画監督デビューを果たしたピーター・シーガルと、『40歳の童貞男』で日本でも一躍有名になったスティーブ・カレル(製作総指揮にも名を連ねる)のコンビということもあり、下ネタ、下品ネタも結構多く、派手なアクションも満載、ハイテクガジェットも大活躍(?)で、どちらかといえば男子向けの映画ですが、『プラダを着た悪魔』に引き続きファッショナブル(シャネルを愛用)なアン・ハサウェイも見どころなので、おしゃれ好きな女の子とのデートにも使えそうです。


『ゲット スマート』 10月11日公開
監督/製作総指揮:ピーター・シーガル
出演:スティーブ・カレル、アン・ハサウェイ、ジェイムズ・カーン、マシ・オカ他
音楽:トレバー・ラビン
キャラクター原案:メル・ブルックス、バック・ヘンリー
2008年アメリカ映画/2008年日本公開作品/原題 GET SMART
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式サイト:http://www.getsmart-movie.jp

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プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

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