『アイアンマン』:ギークな要素を総チェック(1)
2008年9月22日
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いよいよ9月27日に日本公開となる映画『アイアンマン』。すでにワイアードの翻訳記事でも2回取り上げたのでご存じの方も多いと思うが、主人公が装着するパワードスーツをはじめ、先進的なコンピューターのインターフェースの描写など、ハイテク好きの興味をそそる要素が満載。今回のレビューではそうした「ギークな要素」を中心に紹介し、類似する現実の技術にも言及していこうと思う(公式サイトの予告編でわかる程度のネタバレを含むのでご注意願います)。
あらすじ
米国政府と契約を結ぶ巨大軍事企業スターク・インダストリーズの社長で、発明家としての顔も持つトニー・スターク。彼はある日、自社新型兵器のデモ実験に参加するためアフガニスタンへ赴き、みごと実験を成功させる。だがその直後、テロリスト集団の襲撃に遭い、胸に深い傷を負ったまま囚われの身となってしまう。さらに、一味のために最強兵器の開発を強制されるトニー。しかし、彼は一味の目を盗んで飛行可能なパワードスーツを開発、それを身につけ、敵の隙をみて脱出し生還を果たす。そして、この一件で自社兵器がテロ組織に利用されているのを目の当たりにし、ショックを受けたトニーは会社として武器製造を中止する一方、テロ撲滅を誓い、秘かにパワードスーツの改良に着手。こうして試行錯誤の末、驚異の攻防力と飛行性能を兼ね備えたパワードスーツ=“アイアンマン”を完成させる。
上のあらすじに書かれた部分までで、時間にして映画のおよそ3分の2。それから先はいよいよ敵と戦うのだが、3部作を想定していることもあり、今作ではテロリストに囚われた際に作った「マークI」から、自宅のラボで作った改良版の「マークII」、完成形の「マークIII」まで、試行錯誤を経ながらアイアンマンを作り上げていく様子が、時間をかけて丁寧に描かれている。
パワードスーツ
映画のパンフには「アイアンマン(マークIII)のスペック」が掲載されているので、まずそれを引用。
「身長」──185センチ(スーツ装着時198センチ)「体重」──102キロ(スーツ装着時192キロ)
「右アーム」──対戦車ミサイル搭載
「両手」──リパルサー光線(破壊力を持つ特殊なレーザー誘導粒子線)放出装置
「足」──超小型ジェット機能搭載、飛行速度マッハ8
「スーツのパワー」──3トンのものを持ち上げる怪力
「胸・チェスト部分」──用途に応じて様々な光線を発生させる小型のアーク・リアクター(数ギガジュールで稼動する熱プラズマ反応炉)また、トニーの心臓を守るペースメーカー装置もここにある
「スーツ」──外郭は軍事衛星にも使用されている、金とチタンの合金を使用
先週の記事「物理学者が語る『アイアンマン』:SFアイテムの実現可能性は?」では、このスーツの装備のうち、「ジェットブーツ」「リパルサー光線」「サイバネティック・ヘルメット」について、James Kakalios氏が検討している。ジェットブーツの項では、既存の個人用ジェットパックに言及しつつ、長時間飛行するにはジェット燃料を貯蔵するスペースが巨大になるため、実現が困難だと指摘しているのだが、ここは敢えて別の可能性を挙げておきたい。スペックの「両手」の項に「リパルサー光線(破壊力を持つ特殊なレーザー誘導粒子線)放出装置」というのがあるが、これは飛行時の体勢を調節するための補助推進装置の役割もあり、自宅での開発中に光線を試し打ちしたトニーが反動で後ろに吹っ飛ぶというシーンもある。これらの情報から、リパルサー装置は用途に応じてアウトプットを破壊力と推進力に切り替えられると推論できるので、それなら足の推進装置もリパルサーを推進力に特化したものではないか、と考えた。
「リパルサー」がそもそも架空の技術であり、映画の中でも説明がほとんどないのだけど、プラズマについて少し調べてみたら、Wikipediaに「核融合のプラズマから電力を得るには、猛烈な勢いを持つ荷電粒子を減速させるための逆電界を印加するだけでよい。粒子の運動エネルギーを直接電気エネルギーに変えることが出来るため、80%を超える極めて高い変換効率が実現可能である。」という記述があった。アイアンマンの「熱プラズマ反応炉」は核融合とは説明されていないものの、何らかの技術的ブレイクスルーによって、プラズマの粒子の運動エネルギーを推進力に転換できるようにした仕組みがリパルサーなのかも。
まあ勝手な想像を膨らませていってもきりがないのでこの辺で止めておくが、参考までにワイアードの過去記事では、プラズマと推進力に関して「プラズマ・スラスターで飛ぶ、極小飛行機」、プラズマと兵器については「電磁パルス兵器を超える、プラズマ兵器の脅威?」というのがあった。それと、物理学者Kakalios氏による記事のヘルメットの項では、脳波で装置を制御するサイバネティックスに注目しているが、ヘルメットのバイザーに各種データを表示する技術に関しては「『拡張現実(AR)』技術:各分野で進む研究と実用化」という記事で紹介している。
ガラスのディスプレイ装置
トニーの自宅ベッドルームの壁一面に張られたガラスや、地下にあるラボの入口ドア脇のガラスに、天気予報や株価チャート、アクセスコード入力用のテンキーなどが表示される。シンプルながら近未来感のあるギミックだが、少なくとも見た目だけはかなり近いことを実現している日本発の技術を発見。それはこちら、ケー・シー・シー・商会の『シースルー・ディスプレイ HoloPro』。貼り合わせた2枚のガラスの間にフィルムを挿入し、プロジェクターから投射した画像を表示させるという仕組みだ。
ガラス自体にディスプレイ機能を持たせるというのはまだ当分先になりそうだが、国防高等研究計画庁(DARPA)が、キャノピーやフロントガラス、窓と合体した軽量ディスプレーなどへの利用を想定した「透明ディスプレー」の開発を計画しているという記事もあった。
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