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高森郁哉の「ArtとTechの明日が見たい」

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ビートルズの曲が「記憶の想起」に役立つ--心理学者による調査、サイトで投稿を受付中

2008年9月 8日

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英リーズ大学の心理学研究者たちが、記憶と音楽の関係を調べるため、ビートルズの曲やアルバムから喚起される個人的な思い出についての投稿をオンラインで募集しています。開設されたサイト『Magical Memory Tour』には、これまでに69ヵ国から17~87歳の3000人以上が投稿。予備的な調査結果から、ビートルズの曲が「自伝的記憶」の呼び出しに役立つことが認められたそうです。

『Telegraph』の記事によると、全体的に最も多くの思い出が集まったのが『She Loves You』で、米国人に限ると『I Want to Hold Your Hand』への投稿が多かったとか。また、世代別で最も投稿が多かったのは55~65歳で、ビートルズが活動した1960年代に10代を過ごした世代にあたります。

サイトでは、曲を聴いて最初に心に浮かんだ思い出を書くよう依頼しています。もっともあまり厳密な調査ではなくて、曲やアルバム以外にも、バンドのメンバーにまつわる思い出なども受け付けているし、投稿者の年齢や性別、書かれた内容が事実かどうかを確かめる手だてもないわけで。たとえば、感動的なエピソードを創作して投稿する目立ちたがり屋がいるかもしれない。

とはいえ、『BBC』の記事にあるように、2010年には世界の人口の5分の1が60歳を超えると予想される状況で、高齢者や記憶障害者が記憶を取り戻すのに音楽が何らかの役割を果たせるなら、研究する価値は当然あるでしょうし、不完全ながらも今回の調査が今後の研究の参考にもなるかもしれません。

Magical Memory Tourのサイトでは現在も投稿を受け付けているので、ビートルズの曲と結びついた思い出がある方は、英語で書いて送ってみてはいかがでしょうか。ささやかながらも科学への貢献ということで。


追記:本家ワイアードの『Listening Post』で知ったのですが、ちょうど40年前の1968年9月8日は、ビートルズが最後にテレビの生放送で演奏した日なんだとか。記事の題が「悲しい記念日:ザ・ビートルズがテレビに別れを告げる」で、本文も「オーディエンスがバラードのフィナーレでバンドを取り囲む。あたかもビートルズが去るのを惜しむかのように」(約1年後にバンドが解散することを観客が知っているかのよう、という意味)など、かなり感傷的。リンク先で『ヘイ・ジュード』のYouTube動画が閲覧できます。

で、『ヘイ・ジュード』を聴いたからというわけでもないけれど、なぜか唐突に、そういえば村上春樹の小説『ノルウェイの森』の冒頭は、主人公の「僕」が機内のBGMでオーケストラが演奏する『ノルウェイの森』(オリジナルはビートルズの曲です、念のため)を聴いて学生のころの出来事を思い出す、という場面で始まるんだったなあと思い出しました。これも一応、記憶の想起にビートルズが役立ったことになるのかな?

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プロフィール

フリーランスのライター、翻訳者としての活動を経て、2010年3月、ウェブ・メディア・地域事業を手がける(株)コメディアの代表取締役に。多摩地域情報サイト「たまプレ!」編集長。ウェブ媒体などへの寄稿も映画評を中心に継続している。

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