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第25回 春日井新工場のエコアイディア ~松下エコシステムズ探訪記(2)~

松下エコシステムズは、これまで分散していた大阪・藤沢両工場の機能を移転し、春日井工場に集約している。そこで、すでに稼働している新工場の内部を見学させていただいた。

換気扇、ミストサウナや浴室暖房機、ハンドドライヤーなど約2800機種を製造しているこの新工場の設備は、エコアイディアの宝庫だ。まず建物の2階から案内していただいたのだが、天井にはダクトが伸びていてその先に巨大なドライヤーのようなノズルがある。しばらくすると、ノズルがぐるぐると動き始め、かなりの勢いで風が吹き出した。

「これは、外気を取り入れた空調システムです。工場内に外気を放出することで夏は冷房の役割を果たします。また冬にはシーリングファンが上空の熱を還流させます。加えて、新工場の天井や壁面は、断熱性にすぐれた部材の利用や建築工法によって、電気を使った冷暖房装置がいりません。CO2に換算すると従来比8.5%の削減が可能になります」(同社製造部門の川久保清さん)

天井に設置されたノズル。360度ぐるぐる回る。

新工場の壁面。駐車中の自動車の上の穴が換気口。

一方ノズルの下では、作業員の方が、作業台に向かって製品を組み立てている。これは「セル生産」と呼ばれる、1人がひとつの製品の組み立てをほぼすべて担当する作業システムだ。作業台も担当する製品によって手軽に変形させることができるという。多品種少量生産化しつつある現在では、流れ作業方式よりもこのセル生産方式のほうが、生産性がより高いらしい。自分などは、これまで「工場での作業=ベルトコンベアによる流れ作業」と考えていたのだが、どうやらそれは固定観念でしかなかったようだ。しかも、セル生産方式の導入によって、これまで年間14万8000kWH費やしていたコンベアの動力エネルギーはなんとゼロになるそうだ。

セル生産方式によって作業が行われている。

続いて、自社製の高性能空気清浄機が導入されているクリーンルームや、大幅な効率化を可能にした変電設備室などを見学しながら通路を歩いていると、三輪自転車が荷物を運んで通り過ぎて行った。「あれはなんだ!?」と思う間もなく、次の自転車が通り過ぎる。えっ、工場に自転車? しかもよく見ると電動!?

「新工場稼働とともに電動自転車を導入しました。もちろんPanasonic製です。掃除や荷物を運搬するために、10台前後が稼働しています。掃除用にはモップをつけ、運搬用には荷台がついています。これも省エネに役立っているんですよ」(川久保さん)

荷物を載せた電動自転車が通路を走り抜ける。

地下トンネルの換気と同じく、環境に優しい最新の技術や自社製品を現場に導入し、さまざまな役立て方をする。しかも一工夫も二工夫もほどこして。これこそモノづくりのエコアイディアではないだろうか。

今日のエコの芽
自社製品を工夫して現場に導入
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それは現場で起きている。

プロフィール

小林ミノル

スタッフライター。1975年大晦日生まれ。30歳を過ぎ、エコの大切さに遅まきながら気づきはじめる。取材を通して、ニッポン企業の“縁の下の力持ち的”な環境対策を世に広めたいと考えている。