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特別編:セヴァン・カリス=スズキさんと「アースキャラバン2008」

さて、今回も、当ブログ担当ライター小林ミノルさんのピンチヒッターとして、不肖・編集Eが、書かせていただこう。

セヴァン・カリス=スズキ、という女性のことをご存知だろうか。1992年、ブラジル、リオデジャネイロで開催された環境サミットに、12歳で子供の環境団体の代表として参加し、伝説と言われるスピーチを行ったことで知られる世界的な環境運動家だ。
そのスピーチの一部を抜粋しよう。

「・・(略)私の世代には、夢があります。いつか野生の動物たちの群れや、たくさんの鳥や蝶が舞うジャングルを見ることです。でも、私の子どもたちの世代は、もうそんな夢をもつこともできなくなるのではないか?あなたがたは、私ぐらいのとしの時に、そんなことを心配したことがありますか。
(略)
 ここでは、あなたがたは政府とか企業とか団体とかの代表でしょう。あるいは、報道関係者か政治家かもしれない。でもほんとうは、あなたがたもだれかの母親であり、父親であり、姉妹であり、兄弟であり、おばであり、おじなんです。そしてあなたがたのだれもが、だれかの子どもなんです。  私はまだ子どもですが、ここにいる私たちみんなが同じ大きな家族の一員であることを知っています。そうです50億以上の人間からなる大家族。いいえ、実は3千万種類の生物からなる大家族です。・・(略)」

(翻訳:ナマケモノ倶楽部 全文)

このスピーチは、YouTube(日本語字幕付き)でも見られる。
凄い迫力だ。

また、このスピーチは、絵本にもなっている。

「あなたが世界を変える日―12歳の少女が環境サミットで語った伝説のスピーチ」セヴァン・カリス=スズキ著 ナマケモノ倶楽部 訳

セヴァンさんのことを知って環境活動に目覚め、サヴァンさんに憧れて自らフェアトレードを始めたという若い女性と話をしたことがあるが、日本でも多くの人たちに影響を与えている。

そのセヴァンさんのことは、これまで本や映像で見たことはあったのだが、それもちょっと前のものばかり。今回、松下グループが支援するエコ体験イベント「アースキャラバン2008」の説明会に、セヴァンさんがプロジェクトリーダーとして登場するということで、一度、どういう人なのか直に見てみたいと思いもあって、会見場を訪れた。

「アースキャラバン2008」は、地域の自然と共存するライフスタイルを実践している方を講師として招き、子供たちと自然に触れながら環境学習を行うという体験イベントだ。このキャラバンは、家庭の廃食油から精製されたバイオディーゼル燃料を使用した「アースキャラバン号」で日本列島を縦断する。すでに、4月5日、沖縄西表島でその第一回が行われていて、説明会ではその様子も知ることができた。このあと、日本列島を北上して、全国20箇所で開催され、6月29日の北海道函館での開催を目指す、という。

沖縄西表島で行われた「アースキャラバン2008」の模様

このあたりの様子は、こちらのサイトに詳しくレポートされていくようだ。

松下電器では、2006年から小学生を対象にさまざまな体験イベント「パナソニックキッズスクール」を後援・開催しているという。環境をテーマにしたものでは、この「アースキャラバン2008」の他にも、環境活動の第一人者たちが、環境をテーマに小学校を訪問して出張授業をする「エコ学習」や、身近なエコ活動の実践を絵日記の形で募集する「エコ絵日記コンテスト」も、行われている。

「パナソニックキッズスクール」については、こちらのサイトが詳しいが、環境をテーマにしたもの以外にも、科学実験室や郷土料理教室もあり、ほとんど無料で行われていてビックリ。科学実験室などは、ひじょうに興味をそそられる・・。

さて、今回、セヴァンさんが、「アースキャラバン2008」の説明の中で強調していたのは、環境問題という世界レベルの課題を解決するためには、ローカルな地域に根ざした知識を知ることや、ローカルレベルで努力し、地域社会に共生することが大切だということだ。

「アースキャラバン2008」の趣旨を説明するセヴァン・カリス=スズキさん

ここ数年、「Think globally, act locally(地球規模で考えながら、地域で活動する)」という言葉をしばしば耳にするようになったが、セヴァンさんも、そうした考えに根ざしているようだ。特に子供の頃に、地域の自然とふれあい、その場所ならではの知識を得ることは、後になってグローバルな世界の事柄をしっかりと考え、イマジネーションする上でも、思考の土台となるので、ひじょうに重要なのだろう。

12歳で環境サミットでスピーチし、子供の視点から社会の変革を訴えたセヴァンさんも、すでに28歳。子供の環境教育を実践することこそが地球の未来につながるという意識から、こうしたイベントに積極的に参加しているに違いない。

環境運動家というと・・語られることはまさに正論なのだが、ときに説教くさく(・・すみません)、しばしば辛気くさく(もう、すみません)、さらに、胡散くさい(勝手な偏見です)、と感じることもある、やや斜に構えた視線を向けがちな不肖・編集Eなのだが、セヴァンさんは、すっきりと柔らかい物腰の中に、強い意志を感じる魅力的な女性だった。また、いつか話を聞いてみたいな。

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プロフィール

小林ミノル

スタッフライター。1975年大晦日生まれ。30歳を過ぎ、エコの大切さに遅まきながら気づきはじめる。取材を通して、ニッポン企業の“縁の下の力持ち的”な環境対策を世に広めたいと考えている。