第23回 METECツアー同行記(5)
METECツアーシリーズの最終回は、堤常固METEC社長へのインタビュー。堤社長には、会社設立の経緯について、これまでの取り組みについて、そしてリサイクル事業の未来について、熱くかつ率直に語っていただいた。
──METEC設立の経緯についてうかがわせてください。
堤家電リサイクル法の製造者責任を果たすために2001年の4月に、松下電器の100%出資会社として設立しました。私はそれまで松下電器の生産技術本部にいて、半導体や液晶製造工場のプラント建設にずっと携わっていました。もっともゴミを嫌う部門だったわけです。ところが1998年に、リサイクル部門への異動の辞令が出た。正直これまでと180度違う部門だったから、「どうして俺なんだろう?」と思いましたね。でも、「“チャンス”“ギアーチェンジ”そして“チャレンジ”=3C」という言葉が好きだったので、挑戦してやろうと。METECを設立するにあたって、まず最初に考えたのは、リサイクルのイメージを変えるということでした。リサイクルというのは、「ものを捨てるのではなく、ものをつくりだすことである」という方向性を打ち出したんです。
──それが「商品から商品へ」という基本理念につながるわけですね。見学していて感じたのですが、METECは、最先端の技術を導入しているとともに、働いている人の顔が見えて、工場全体が非常に明るい印象を受けました。
堤工場全体の雰囲気をよくするためにはどうするのかを、常に考え続けていますから。たとえば、階段の壁に絵が描かれていますよね。普通の会社ならそんなことはしません。4種類のラインを分けているそれぞれ色も勝手に塗ったわけではなく、商品コンセプトと全体のバランスのもとに選んであるんです。
──「トレジャーハンティング」というキャッチフレーズも、そこから生まれたのでしょうか?
堤働いている人たちが能動的に仕事に関わり、現場から積極的に情報をフィードバックすることをMETECでは奨励しています。なぜなら、リサイクル技術を開発、工程を改善し事業を効率化していくためには、現場が困っている問題をひとつひとつ解決していくことが大切だからです。そして現場からあがってきた解体しやすい・解体しにくいといった情報は、松下グループの商品開発設計部門へフィードバックされ、新商品開発にいかされています。
──リサイクルというとゴミやホコリが発生するイメージを見学前は勝手に抱いていたのですが、マスクなしでもまったく問題なく工場を見学できました。非常にクリーンな工場だなと感じたのですが。
堤工場の環境整備も、試行錯誤を繰り返しながら地道に改良を重ねています。リサイクル事業は、行程が進んでいくにつれ、臭いや埃やゴミが必然的に発生するものなんです。工場をきれいに保つためには掃除行程を細かく組み入れないといけません。しかし、掃除専門の担当者を置くと、その人がゴミまみれになりながら仕事をしなくてはならなくなります。我々はそのようなシステムではなく皆の知恵で工程改善を進めています。柔らかいホースを宙づりにして、ダストを取りのぞく装置の開発は、まさに現場の人達の知恵から生まれました。リサイクルのイメージを変えるためには、まず働いている人たちに優しい工場でなくてはならないと考えています。
──日本のリサイクル産業は、これからどう発展していくとお考えですか?
堤私自身この事業に関わりはじめてまだ10年ですので、大きなことは言えませんが、日本の企業は本当に真面目にリサイクルに取り組んでいると思います。技術も非常に発達しています。たとえば、松下グループが特許を取得しているブラウン管を分割する技術は、ヨーロッパにも輸出しています。しかし、だからこそ業界全体がもう少し自信をもって、より積極的に発言していくべきだと思うんです。リサイクルは、ゴミを処理しているのではなく、資源を再生産しているんです。リサイクル産業全体のコンプライアンス・信頼性をより向上させながら、一般の方がもっとリサイクル事業に「安心」「安全」といったポジティブなイメージを持ってもらえるように地道に努力していかないといけませんね。
~取材を終えて~
堤社長へのインタビューを通じてひしひしと伝わって来たのは、「リサイクル」を決して受け身なものとして捉えるのではなく、「モノづくり」として捉え直そうという熱意だった。もちろんこの思想は日常生活にも応用できる。日々のちょっとした分別や再利用をルーティーンワークではなく、クリエイティブなものとして捉え直したら、毎日のリサイクル活動がもっと楽しくポジティブなものになるはずだ(ソックモンキーのように)。自分自身、大いに感化を受けたMETEC取材となった。
- リサイクルはモノづくりである
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それは現場で起きている。
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