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第19回 METECツアー同行記(1)

兵庫県加東市にMETECという会社がある。正式名称は松下エコテクノロジーセンター。リサイクル事業に特化した松下グループの静脈企業だ。2001年4月、家電リサイクル法の施行とともに設立された同社では、リサイクルが定められている家電4製品、すなわちテレビ、洗濯機、エアコン、冷蔵庫のリサイクル事業をおこなっている。

家電リサイクル業界では、リサイクルされる製品を、製造会社別にA とBの2グループに分けている。松下電器や東芝を中心とした製品群がAグループで、シャープやソニーの製品群がBグループだ。METECが取り扱っているリサイクル製品は、近畿2府4県から集められたAグループの製品である。同社の年間の処理台数は、2001年が56万台、2002年が64万台、2003年からは67万~70万で推移しているという。これは日本で1年間にリサイクルされている廃棄家電製品のおよそ5~7%に相当する(中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会家電リサイクル制度評価検討小委員会の発表によると、リサイクル家電の総数は、2001年が855万台、2002年が1015万台、2003年以降は1046万台から1161万台の間で推移している)。

また、同社は堤常固社長の方針によって、創業時から“魅せる工場”を標榜してきた。「リサイクル」が持つイメージをより明るいものにしようと、工場のラインを色分けしたり、見学通路を設立時から設け、多くの見学者を受け入れてきたのだ。また、地域社会との交流も積極的におこない溶け込む努力も続けて来たという。そしてこの試みは実を結ぶ。地域の人々から「地元の会社にだんだんなってきた」と認められるとともに、地元の小中学校から海外のメディアまで、毎年1万人以上の見学者が同社を訪れるようになったのだ。

しかし、METECがどんな工場なのかは実際に訪れてみないとわからない。2月15日、松下電器が「eco ideas ツアー」と銘打ってMETECの見学ツアーを開催するというので、自分も同行し、この目でMETECのすごさを確かめてみることにした。

2台のバスに分かれて一路METECへ!

当日のツアー参加者は24名。2台のバスに分かれて大阪駅からMETECまで向かう。移動中のバス車内では、ガイドのお姉さんが出題するエコにまつわるクイズに回答したり、METECの紹介ビデオを見て予習をしたりしながら過ごした。そして、およそ1時間半後、ついに我々はMETECに到着する。

兵庫県加東市にある松下エコテクノロジーセンター。

さっそく、玄関から建物に入って2階に上ろうとすると、階段の壁に絵が描かれていることに気付く。社員の方に質問したところ、使い終わった家電製品が、家庭からMETECに辿り着くまでを、神戸の街からMETECまでの道のり、風景になぞらえているのだそうだ。METECのある兵庫県への感謝の表れでもあるのだろう。さらに荷物を置こうとしたテーブルの脚部分には、なんと洗濯機のドラムが使われていた。出だしからMETEC全体のリサイクルへの熱意が伝わってくるディテイルの細かさだ。そして2階の壁には、社会見学にMETECを訪れた小学生たちのお礼状が一面に張られている。短い文章ながらどの手紙もMETECを見学した子供たちが、本当に驚いたことが伝わってくるような文章だった。そういえば、自分が小学生だった頃も、工場見学は驚きの連続だった気がする。耳学問でしかなかったものを実際に見て体験したときの新鮮な驚きは、大人になっても変わらないはずだ。早く工場の内部を見学したくて久しぶりにワクワクしてきた。

洗濯機の内層ドラムを再利用したテーブル。

社会見学に訪れた子供たちのお礼状が壁一面に飾られていた。

今日のエコの芽
大人も子供も百聞は一見に如かず
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それは現場で起きている。

プロフィール

小林ミノル

スタッフライター。1975年大晦日生まれ。30歳を過ぎ、エコの大切さに遅まきながら気づきはじめる。取材を通して、ニッポン企業の“縁の下の力持ち的”な環境対策を世に広めたいと考えている。