このサイトは、2011年6月まで http://wiredvision.jp/ で公開されていたWIRED VISIONのコンテンツをアーカイブとして公開しているサイトです。

第14回 「黄海エコリージョン支援プロジェクト」とは!? (続編)

前回紹介した世界自然保護基金(WWF)の「黄海エコリージョン支援プロジェクト」。具体的な内容にあまり触れられなかったので、今回も引き続きこのプロジェクトについて。

2007年から2014年までの長期間に渡って実施されるこのプロジェクトは、目的別に次の3つの期間に分けられている。

第1ステージ(2007年8月~2010年3月)
中国と韓国から、「黄海エコリージョン優先保全地域マップ」に基づく優先保全地域が含まれる都市単位での保全活動を公募し、実施を支援する。それぞれの地域における経験や情報を交換する機会を設け、情報の共有を図る。
第2ステージ(2010年1月~2013年3月)
中国・韓国に1カ所ずつモデル地区を設けて、地域の特性に合った自然環境の保全を行う。地域社会と協働で、どのような生態系の管理を行うことが適切かを考え、実施する。
第3ステージ(2013年4月~2014年9月)
これまでの活動の評価を行い、出版や発表等を通じて中国・韓国をはじめ世界にその成果を発信する。

まとめてしまえば、第1ステージが啓蒙活動期間、第2ステージが実行期間、第3ステージが普及期間と位置づけられるだろう。それにしてもなぜこれほど長期間のプロジェクトとなったのだろうか? また「保全活動を公募する」とあるように、このプロジェクトの主体は地域住民で、WWFの役割は、あくまで地域住民の環境活動をサポートすることだ。その狙いはどこにあるのだろうか? WWFジャパン広報部の佐久間浩子さんとプロジェクト担当者の東梅貞義さんにお話をうかがった。

「今回のプロジェクトは、黄海で漁業を営んでいる人たちや地元の人たちに、より環境問題について関心を高めてもらうことを目的としています。私たちが現地に行って活動するだけならすぐにできますが、4~5年だけ活動して、その後続ける人が誰もいなくなってしまったら元も子もないですよね。持続的な保全活動を続けるためには、我々ではなく地域の人たちが主体となって環境活動に参加することが必要不可欠なんです」(佐久間さん)

「具体的には、特定の民間団体を通してだけではなく、市役所レベルの地域自治体とも協力しながら、地元住民の方たちと一緒に保全活動を展開していく予定です」(東梅さん)

また、今回のプロジェクトには、2000年からおこなわれてきた「有明海プロジェクト」で培ったノウハウが活かされる予定だ。前回も少し触れたが、有明海も黄海と同じく豊かな自然を育む干潟の減少が深刻化していた。その保全のため、WWFジャパンは、こちらも松下電器産業の協賛をえながら、さまざまな支援活動をし続けてきたのだ。佐久間さんによれば、とりわけ佐賀県鹿島市の環境保全活動がモデルになるという。

「『有明海プロジェクト』を推進して行く中で、2004年に鹿島市で『水の会』という環境市民グループが立ち上がりました。鹿島市長さんもこの会の活動について理解を示して協力していただいたので、地域ぐるみで活動し続けていくことができたんです。住民の自主的な発案から立ち上がった『水の会』の取り組みは今回のプロジェクトの参考にもきっとなると思います」(佐久間さん)

「環境保護団体だけでは環境保全はおこなえません。このプロジェクトを通じて地域の人たちが主体となって長期的に環境活動をおこなえる下地をつくることができればと考えています。その結果、地域の持つ“誇り”に少しでも世界が気付いてほしいですね」(東梅さん)

3カ国共同のプロジェクトであるだけに、調整の苦労も絶えないというが、地道な黒子的支援活動が、7年後にどんな実を結ぶのか非常に楽しみだ。

今日のエコの芽
まずは現場の意識改革から
フィードを登録する

前の記事

次の記事

それは現場で起きている。

プロフィール

小林ミノル

スタッフライター。1975年大晦日生まれ。30歳を過ぎ、エコの大切さに遅まきながら気づきはじめる。取材を通して、ニッポン企業の“縁の下の力持ち的”な環境対策を世に広めたいと考えている。