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第10回 スターリングエンジンの開発現場に潜入! 其の壱

バイオエタノール、太陽光発電、ハイブリッド…。環境負荷の高いガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどに変わる代替エネルギー装置の開発がここ数年脚光を浴び続けてきた。なんとF1界でも、今後10年間はエンジン本体の開発がストップされ、ブレーキ時に発生するエネルギーを回収するハイブリッド型エンジンが導入されることになったという。そんな中、18世紀にスコットランドの牧師によって発明されたエンジンが、2世紀の時を経て再び注目を集めている。

その名も“スターリングエンジン”。

スターリングエンジンは、牧師で発明家でもあったロバート・スターリング氏が1816年に発明したエンジンで、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンなどの内燃型エンジンと違い、温度差のある熱源を外側2カ所に当てることによって、内部の気体を膨張・収縮させて駆動力を得る外燃型エンジンシステムだ。

スターリングエンジンは、効率よく熱を伝えられること、廃熱を含め多種多様な熱源を利用できること、燃料の爆発によってピストンを動かす必要の無いため静かに作動することなどから、環境対策エンジンとしても期待されている。ただし、これまで実用化されなかったことにはそれなりの理由もあって、例えば内燃型エンジンに比べてコンパクト化が進まなかったこと、耐久性が高くないこと、コストがかさむことなどがボトルネックとなっていた。1970代のオイルショック時代、日本でも実用化が検討されたが、上記のような理由が原因で普及しなかったという過去もある。

しかし、現代の技術によって再度短所を解消し、環境問題に適したエンジンという長所を活かし実用化させようという動きも生まれている。eスター社も、そんなスターリングエンジンの実用化に向けて日夜研究を続けている企業のひとつだ。同社は松下電器のリニアコンプレッサーの開発技術者だった赤澤輝行社長が、2005年に設立したベンチャー企業である。社名の「eスター」は、エコの星となるような技術にスターリングエンジンを成長させたいという願いが込められているという。まさにスターリングエンジン開発一筋の会社なのである。

とりわけ同社は、独立行政法人の海上技術安全研究所(NMRI)や東海運と共同で2005年より鉄道・運輸機構(JRTT)から委託を受け、船舶用スターリングエンジンの研究を行ってきた。そして、ちょうどその公開実験が今年9月におこなわれたばかりということで、研究現場であるNMRIにうかがってみた。

東京都三鷹市にあるNMRIの入り口。船舶技術に関する日本の中核的研究所だ。

東京・三鷹にあるNMRIは、海上交通の安全性や効率を向上させたり、海洋資源や海洋空間の有効活用、海洋環境保全のための技術研究を行っている独立行政法人の研究機関である。中央線の三鷹駅からタクシーに乗って10分。同研究所に着くと武蔵野の広大な敷地内に、研究棟が建ち並んでいた。目指すスターリングエンジンの開発所は、敷地の奥の機械第2実験棟にある。

さらに敷地内を歩くこと5分。「機械第2実験棟」と書かれた建物に到着すると、入り口のシャッターが半分開いていた。すると奥から、eスターの赤澤社長とスターリングエンジン研究の第一人者であるNMRIの平田宏一主任研究員が現れ、我々を応接室に案内してくれた。案内される途中、棟内を見回すと、旋盤やプレス機などの工作機械やモニター、製作途中の部品やミニチュアの試作品が、所狭しとおかれている。そして散乱する鉄屑やネジ。そのたたずまいは、まさに男心をくすぐってやまない「ガレージ」。ここで最先端のエンジンが開発されているのだ。(続く)

スターリングエンジンの開発現場である機械第2実験棟。男心をくすぐるたたずまいだ。

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それは現場で起きている。

プロフィール

小林ミノル

スタッフライター。1975年大晦日生まれ。30歳を過ぎ、エコの大切さに遅まきながら気づきはじめる。取材を通して、ニッポン企業の“縁の下の力持ち的”な環境対策を世に広めたいと考えている。