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第9回 縁の下の力持ちの自負

松下エコシステムズ(MESC)という企業が、松下グループ内にある。明治42年に川北電気企業社として創業された、とても長い伝統を持つ会社だ。日本初となる純国産の交流扇風機の製造(当時はかなり画期的だったはず)から始まった同社は、松下電器と関係を深めるなかで、昭和31年に松下グループの一員となり、松下精工と社名を変更。空調機器や環境浄化設備のリーディングカンパニーとして国内外で地歩を築き、平成15年に松下エコシステムズと再度社名を変更してからも、松下環境空調エンジニアリングとともに、環境システム分野を担う松下グループの中核企業として、その技術力をいかんなく発揮し続けてきた。

同社が開発・製造している製品は、一般家庭向けの換気扇や空気清浄機から、大型トンネルの一酸化炭素や粉塵を取り除くジェットファンや電気集塵システム、工場の空調システムまで多岐に渡っている。同社製換気扇は金額ベースでグローバルシェアNO.1、2006年には国内生産累計台数がなんと1億台を突破。さらにトンネルの空気浄化システムは、国内のみならず、ベトナムやスペインの幹線道路のトンネルにも導入されている。ほかにも、水質、土壌浄化システムや、太陽光と風力を利用した照明システム「風かもめ」の開発など、その取り組み具合は、まさに「ザ・エコカンパニー」。言い換えれば、我々の生活のインフラ分野のエコを司っている会社なのである。同社の平田爲茂社長も、12月10日に行われた記者会見で、より一層の「グローバル化」と「環境技術立社の確立」をMESCグループは目指していくと宣言した。

MESCグループの今後の方針について説明する平田爲茂MESC社長(左)。中央は籠谷実松下環境空調エンジニアリング社長、右は平田博史同社常務取締役。

松下グループは、エコアイディア戦略として、今後3年間で30万トンのCO2の排出量を減らすことを宣言している。しかし、とりあえず今回の発表では、MESCとしての具体的な数値目標というものは発表されなかった。ただ、同社のこれまでのエコへの取り組みが一朝一夕ものではないという雰囲気=自負がこの記者会見からはひしひしと感じられた。90年の歴史があるのだから、それは当然かもしれない。また、記者会見では、「いろいろな具体例を挙げたいが、ご協力している他社さんとの関係で、公表できないプロジェクトが多いんです」と、平田社長や籠谷実松下環境空調エンジニアリング社長が歯がゆい表情で説明するケースも多かった。やはり「縁の下の力持ち」にそういった苦労はつきものなのだ…。言葉にならない貢献や、数字にならない努力、忘れがちだが、我々の日々の暮らしはそういったものから多大な恩恵を受けているのだ。

今日のエコの芽
エコも縁の下の力持ちによって支えられている

追記

同グループのマザー工場である愛知県の春日井工場は、効率性を高めるために生産設備を集約すると同時に最新の環境対策が施された工場だという。当連載でも、近々工場見学を企画しているので、乞うご期待!

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プロフィール

小林ミノル

スタッフライター。1975年大晦日生まれ。30歳を過ぎ、エコの大切さに遅まきながら気づきはじめる。取材を通して、ニッポン企業の“縁の下の力持ち的”な環境対策を世に広めたいと考えている。